半旗・反旗
作家
著者名 | 曽野 綾子 |
記事タイトル | 半旗・反旗 |
コラム名 | 私日記 第51回 |
出版物名 | VOICE |
出版社名 | PHP研究所 |
発行日 | 2004/3 |
※この記事は、著者とPHP研究所の許諾を得て転載したものです。
PHP研究所に無断で複製、翻案、送信、頒布するなどPHP研究所の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。
著者名 | 曽野 綾子 |
記事タイトル | 半旗・反旗 |
コラム名 | 私日記 第51回 |
出版物名 | VOICE |
出版社名 | PHP研究所 |
発行日 | 2004/3 |
※この記事は、著者とPHP研究所の許諾を得て転載したものです。
PHP研究所に無断で複製、翻案、送信、頒布するなどPHP研究所の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。
12月9日
午前中、日本財団の前の日本たばこ産業株式会社(JT)のすばらしい前庭を拝借して、日本財団が続けている障害者支援の、特殊車輌の贈呈式。今年で日本財団は、車椅子が乗り込める車だの、送迎用のミニバスだの、訪問入浴車だので計1万台を贈ることになった。費用は、使用団体が4割から2割負担で、財団が足りない分の8割から6割を払う。すべて競艇ファンの贈り物である。JTの本田勝彦社長に前庭を貸して頂いたお礼を申しあげに行く。
午後、読売新聞社でお正月用のテレビの録画撮り。5時過ぎ、アークヒルズ・クラブで亡くなったソニーの盛田昭夫氏夫人の良子さんと会い、2人でお鮨を頂いてから、六本木男声合唱団の公演に行く。三枝成彰氏の指導の下で、経済人、医師、政治家、芸術家などあらゆる職種の歌好きのメンバーで作られているグループだという。三枝成彰作「レクイエム」が歌われたので、その歌詞を書いている私も呼んで頂いたのである。白柳枢機卿、駐日ヴァチカン大使にもご挨拶。
専門家の三枝さんの耳にはいろいろと文句もあるだろうけれど、素人の私は大したものだ、と思う。帰りに盛田さんを送りがてら、音響の博物館みたいに整えられたご自宅の改築後の姿を見せて頂いた。白髪の主、盛田氏の閣達な声が聞こえて来そうな夜であった。
12月10日
国立劇場で『二蓋笠柳生実記』を見る。テンポが早く娯楽性があっておもしろい。尾上菊五郎さんが演じる二枚目で色男の主人公、柳生但馬守の三男、又十郎は、ひ弱なだめ男から次第に剣術が強くなる変化を見せる。ほんとうにこういう人間の変化はよくあるものだ。
夕方、ヤマト福祉財団に小倉昌男氏に評議員をお務め頂いたことのお礼を申し上げに行ってから渋谷の「シェ松尾」へ。ひさしぶりに『週刊ポスト』編集部のサムライたちとお会いしてイラクのことなど。
12月11日〜15日
自衛隊のイラク派遣に関する共同通信社のインタビュー、海外邦人宣教者活動援助後援会の運営委員会、毎年集まる「お勉強のよくできる往年の不良少年の会」にお呼ばれした他は家で原稿書き。
海外邦人宣教者活動援助後援会が決定した案件は、ネパールの教育施設に30万円、ボリビアの障害者施設に275万円、シエラレオネのシスター・根岸の働いておられる学校に生徒用の椅子100個、泥棒を防ぐ塀の建設、内戦の時に兵士たちに性的危害を加えられた少女たちに学業を再開させるための小さな寄宿設備、車椅子のファツマタ・アグネス・バングラという高校生のスカラシップなどに、338万円。カメルーンのピグミー族とカコ族の子供たち計38人などの学費や教師の給料に173万円。南アのホスピスに患者送迎用の四駆を買う代金として483万円。コンゴ民主共和国のブカブに小学校を建てるための資金450万円などで、計1749万円を決定。
「往年の不良少年の会」は、別に正式名称ではないのだが、話しぶりを聞いているとどうもそういう感じである。現代の新鮮な話題と過去の笑い話がおもしろい取り合わせ。
12月16日
日本財団への出勤日。5時からTBSラジオの録音。中村尚登さんとのアフリカの旅の話。ラジオは落ち着いてしんみり話せるから大好きである。
12月17日
午後、お台場の「船の科学館」においてあった二式大艇を、防衛庁に返還する儀式があった。
二式大艇は4発、高翼単葉の飛行艇である。1943年から作られたもので、巡航速度時速333キロ、航続距離は実に8334キロという当時としては考えられない性能を持っていた。アメリカはこの飛行機の性能のよさを知っていて、戦後アメリカに持ち帰って研究していたが、1978年スクラップにされる直前に「船の科学館」が引き取り、大規模な移送、復元、保存を続けて、30年近くお預かりしていたものである。
今回、自衛隊の鹿屋航空基地資料館を安住の地にしていただけるという。午後1時半から石破防衛庁長官も来られて譲渡式典。海上自衛隊軍楽隊も出演してくださった。二式大艇に乗られた方やその奥さまも数人出席して頂けてほんとうによかったと思う。
その後記者懇談会。大陸棚の調査は緊急に必要なものと思われるので、日本財団は全面的に必要なサポートをする用意があることも言う。海賊に対する情報センターを始めた時もこんな感じだった。