船の科学館の二式大型飛行艇が鹿屋基地史料館へ
経営企画グループ
グループ長
*内容は全て記事作成時のものです
*内容は全て記事作成時のものです
「二式大型飛行艇」譲渡式は、12月17日、船の科学館で約350名の関係者を集め行なわれた。海上自衛隊横須賀音楽隊による国歌吹奏に続き、日本財団会長、曽野綾子が挨拶し、「アメリカさえも驚かせたというすばらしい性能を備えたこの飛行艇は、周囲を海に囲まれた日本の特殊性を充分に考慮し、しかも日本人の精密な頭脳と完璧を追及する執念によって誕生したものであろうと思います。二式大艇は、私たち人間と同じように自然に老いましたが、それは微笑ましい自然でありましょう。今日から、あの美しい南国の太陽が燦々と降り注ぐ鹿屋の地で、そこを訪れるすべての人たち、特に若者たちに、人間がいかに戦いと平和の歴史に、苦悩と喜びをもって参加してきたかを、ずっと語り続けてほしいと思います」と述べた。
目録贈呈の後、石破防衛庁長官は、「二式大艇は、零式艦上戦闘機や一式陸上攻撃機と並んでひとつのあこがれの飛行機であり、また日本の技術の高さを認識させるものであり、同時に戦争のつらさ、悲しさを訓えるシンボリックな飛行機であります。世界に冠たるこの飛行艇の技術は、今、海上自衛隊の救難飛行艇であるUS1に引継がれ、多くの人々の生命を救っています。鹿屋史料館には、特攻隊の関連史料ほか2000点が展示されており、貴重なこの飛行艇を適正な状態で保管し、隊員教育に資するとともに、広く国民の皆様にも海上防衛に対する理解を深めていただきたいと思います」と述べられた。
この譲渡式に出席されていた坂部勇旨(たけし)さんにお話をうかがった。坂部さんは、戦争のはじめから終戦まで、この二式大艇に搭乗しており、飛行時間は優に2000時間を超えているのだという。
まず、この飛行艇のとびぬけていたところは、やはり「火星22型(1850馬力の発動機)を4機搭載していて、これほど長距離を飛ぶ(最大航続距離約7200km)ものは、世界になかった」ことだという。また、操縦の難しさにも触れ「燃料を積むと32トンもの重量になり、離水する際に海面の抵抗力と大馬力による推進力のバランスをとるのが大変だった。(それを間違えると)頭(操縦席)から海面に突っ込むことになる」のだそうだ。これまでも、幾度となく船の科学館を訪れ、二式大艇を見つめ、触り、心で手を合わせてこられたそうだが、「海上自衛隊ゆかりの地である鹿屋に送られることは、嬉しいことだ」としみじみ語られた姿が印象的であった。
文、写真:広報部 中村健治