運転手、本音は全額撤廃 値下げ前夜 道路を問う2008年03月24日03時03分 岩手、宇都宮、神戸、熊本……。21日午後11時過ぎ、神奈川県の東名高速上り線・海老名サービスエリアは各地のナンバーをつけたトラックであふれかえっていた。 午前0時を過ぎると4割安くなるのを狙い、東京料金所の手前で時間を調整するトラックの群れだ。料金所により近い港北パーキングエリアでは本線路肩にまでトラックがはみ出す。大阪から千葉に向かう男性(36)は「燃料高で手取りも減らされた。軽油が安くなればこんなことしなくていいかもしれない……」。 ガソリン税の暫定税率期限切れが迫り、4月以降の値下がりが現実味を増す。軽油は1リットル当たり17円10銭安くなる。 だが、トラック業界全体ではこれまで、暫定税率「全廃」を望んできたわけではなかった。 全日本トラック協会(全ト協)は、3度にわたって引き上げられた軽油引取税の暫定税率のうち、93年分の7円80銭についてのみ撤廃を求めている。松崎宏則企画部長は「1、2度目の引き上げには運賃改定で対応できている」と説明。全ト協は「道路整備もまだ必要」として、同時に「道路特定財源の一般財源化反対」も掲げる。 「なぜ全額撤廃を要求しないのか」 1月末、傘下の福岡県トラック協会が福岡市で行った要求行動では「7円80銭撤廃」に身内から異論が相次いだ。支部役員を務める福岡県遠賀町の運送会社社長、兼元浩治さんは「地場専門の中小業者は経費節約のため高速の利用も控えているのが実情。『暫定』というからには、もういい加減にしてくれ。道路がまだまだ必要なんて、どこの国の話だ」と憤る。 トラック業界は90年の4万社から06年には6万2000社に増え、過当競争が常態化。不況、燃料高騰が追い打ちをかける。 「交付金というアメをもらっている以上、業界団体が全面撤廃を主張できるわけがない」。秋田市の運送会社会長、石田哲治さんは批判する。 「運輸事業振興助成交付金」。1976年、道路財源確保のために軽油引取税に初めて暫定税率が上乗せされるのに合わせ、運送業界への見返りとして導入された。都道府県から06年度は約192億円が交付され、9割が各都道府県のトラック協会に。25%が全ト協に上納される仕組みだ。 秋田県トラック協会長を務めたこともある石田さんは言う。「業界団体がユーザーを代弁しているわけではない。実際に道路を使う立場の者を置き去りにした主張が、まかり通っている」 23日昼、東京・環状7号沿いのガソリンスタンドの多くはレギュラー価格140円台後半を掲げていた。大田区内で給油した男性(43)は「4月まで入れないつもりだったけど、お彼岸で墓参りに行くんで」。 目黒区内のスタンドでは10日ごろから、満タンではなく金額やリッターで給油量を指定する買い控えも目立ってきたという。店長(38)は「一気に下げたら大混乱。国会でうまくまとめてもらわないと」と不安げだ。 ◇ 道路特定財源・暫定税率をめぐる与野党の攻防が激しくなってきた。身近に道路を使う人、地域の人の視線が議論には欠かせない。「値下げ」前夜に考える。 PR情報この記事の関連情報社会
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