チベットで起きた暴動を武力弾圧している中国政府に抗議する集会が東京で開かれ、2,000人の参加者が「中国は虐殺を止めろ」「チベットに宗教の自由を」などと叫びながらデモ行進した。大勢の在日チベット人のほか、天安門事件参加者など中国民主化を求めて日本に「亡命」した漢族出身中国人の姿も見られ、注目された。
目 次
(P.1) 漢族の天安門事件亡命者も参加
(P.2)
2千人が「中国はチベットから出て行け!」
◆漢族の天安門事件亡命者も参加
中国政府によるチベット弾圧への抗議活動が世界各地で繰り広げられているが、東京では22日、在日チベット人や支援者など約2,000人がデモ行進し、「宗教の自由を」「ストップ、ジェノサイド(虐殺を止めろ)」などと訴えた。デモは主催者の「チベット・サポート・ネットワーク・ジャパン(TSNJ)」がインターネットなどで呼びかけた。
在日チベット人コミュニティ代表のカルデンさん。カリスマ性がある(東京・六本木で筆者撮影)
デモに先立ち、港区六本木の公園で集会が開かれた。参加者たちは今回の暴動で亡くなった人たちのために1分間の黙祷を捧げた。在日チベット人コミュニティー代表のカルデンさん(写真)は、チベット人が世界中で抗議行動を起こしている理由として、次のように話した。
1、北京オリンピックに反対してデモを起こしているのではない。チベットに真の自治を求めているだけだ。
2、中国政府は北京オリンピックの開催が決まった時、「民主化を進める」と言ったにもかかわらず、チベットを弾圧している。チベットにいるチベット民族は絶望の中、命をかけてデモをしている。
3、中国政府との対話による平和的解決を求めてきたダライ・ラマ法王が暴動を扇動するはずがない。
4、日本のメディアは勇気を持ってチベットの姿を報道してほしい。
会場には在日チベット人の姿が多く見られた。ほとんどがネパールに亡命した後、日本に移住した人たちだ。赤ん坊を連れた女性は電話でチベットの友人と話した、という。
「治安部隊が暴動参加者の家にドカドカとやって来て『降伏しろ。さもなくば家族全員を殺すぞ』と脅す。多くの若者が警察に投降した」。女性は眉をひそめながら語った。
昨秋ビルマで起きた暴動の際もインターネットで現地の映像が世界中に伝えられた。今回のチベット暴動でも同じだった。治安警察に射殺されたチベット族男性の写真を背中に貼り付けている男性がいた。写真はインターネットで取り出した、という。
難民認定などの件もあるので、筆者は彼ら、彼女らに迂闊に名前を聞かないようにしている。だが男性は「私はプンツォク・ツェリンです」と名乗った。ツェリンさんの祖父は、ダライ・ラマ14世が亡命するきっかけとなった1959年のチベット暴動の際、中国人民解放軍に殺された。
「ストップ、ジェノサイド」血を吐くように訴える女性。
集会場の一角に「抗議中共武力鎮圧……」と簡体字で書かれたプラカードを持つグループがいた。チベット弾圧抗議集会に、なぜ中国の文字が躍っているのか、最初はわからなかった。聞けば彼らは「中国民主陣線」という中国の民主化を求める組織で、漢族出身だという。
リーダーの辺寧さんは、1989年の天安門事件の際、デモに参加した。当局にマークされそうになったため日本に亡命した。辺さんは「多くの学生が殺された天安門事件と、今のチベット暴動は同じような状況になっている」と危機感を募らせる。89年はチベット暴動が3月に起き、6月の天安門事件へとつながった。
支配民族の有志が被支配民族と志を同じくする例は、イスラエル‐パレスチナで稀にある。だが被支配民族のデモ・集会にまで参加するケースは筆者も見たことがない。民主化に対する中国政府のなりふり構わぬ弾圧への反発だろう。
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