2008年03月20日
続・岡田斗司夫の「遺言」第四章
前回の続きです。
<眠田直大先生話>
○ 眠田直は漫画家、というか謎の職業の人なのだが、日本で最も初期にパソコン通信をやっていたりした人でもある。ガイナックスのゲーム製作にも参加した。
○ 眠田直は非常に優秀な男である。まず、山賀君に比べると取り回しが良い。朝一で「○○について考えてくれ」と企画を任せると、山賀君は3年経っても悩みまくっているのに対し、眠田直大先生は午後にはスタッフ編成を終え、企画書を渡してくる。
○ 他人が考えすぎるのに対し、アイディアを1分間に1個出してくる小回りのよさ。山賀くんを最小回転半径100 mのトラックに喩えると、ガソリン1 lで半年走るスーパーカブみたいなもの。しかも、自分の好きなことをベースにきちんと売れる要素を盛り込み、ネタに一捻りも加えてくる。
○ あるSF大会で、一晩で新しいアニメの企画を考えようという分科会があった。皆、様々なアイディアを出し、どれも微妙に面白いのだが、微妙に使えない。だが、そこで眠田直の出したアイディアが凄かった。なんと「地球に厳しい戦隊モノ」。「皆が地球に優しくするから、地球は甘やかされて駄目になってしまうんだ!少しは地球に厳しくして、地球を鍛えないと駄目!」というのがコンセプト。ガソリンをガブガブ飲み、排気ガスをモクモク吐くロボットが大地を蹂躙しながら敵を倒すと、足跡から新芽が芽吹く、というアニメ。敵はヒッピーだ。並み居る編集者やらSF作家やらが全員面白い!と絶賛したが、実際に作る勇気は誰にも無く、企画は流れたそうだ。
○ そんな眠田大先生はゲーム製作の現場でも異才を発揮する。
http://homepage3.nifty.com/mindy/prof/game.html
○ 「電脳学園」はクイズに正解すると女の子が脱いでいく、脱衣ゲームであったが、続編では脱衣の必然性について悩んでいた。一応第一作でもエクスキューズはしていたが、「ここはクイズに正解すると女の子が脱いでくれる学園だったんだ〜!」では限界があった。
○ こういうことを山賀くんや赤井くんに頼むと、彼らは、半年間は考える。だが眠田直は焼肉屋に食事に行ったら、翌日の朝にはもう企画書を出してきた。
○ タイトルは「エイプハンターJ」。企画書を読むと、こんな一文から始まる。「ショック!学園の中にサルがいます!」舞台は近未来。そこでは慢性的な労働力不足を解消する為に、遺伝子操作したサルを働かせて労働力不足を補っている。そのサルは人間と見分けがつかず、人間社会に逃げ出し、潜伏する者達も現われてきた。ただ一点だけ、サルなのでケツが赤いことだけが人間と違う。「そういうことか!」
○ つまり、人間かサルかを判断する為に、目の前にいる女の子もしくは女サルを脱がしてケツを確認するわけだ。「でも、これって『ブレードランナー』だよな?」
○ ゲーム世界でサルは差別されているのだが、ラストには、サルも人間も無い、感動のクライマックスが待っているという。これは必要ないと主張したが、結局ナレーションでちょっとだけ触れられた。
○ もし中古屋などで「エイプハンターJ」を見かけたら、是非購入して欲しい。ガイナックスのゲーム製作業はこの頃になると発売前に確実に儲かることが分かっていたのだが、またガイナックスの悪い癖が出て、クオリティアップの為に豪華なおまけをつけた。「高校生の現代社会科 猿害の実際」という、日本史の教科書の体裁をとったゲームの副読本だ。なんと100ページくらいあって、サルが作った縄文式土器や、豊臣秀吉が本当のサルだったりする。ある朝会社に行くと、この副読本用の縄文式土器をスタッフが粘土こねて作っていて驚いた。
http://www.amusement-center.com/project/egg/cgi/ecatalog-detail.cgi?product_id=580
○ 眠田直大先生が作ったゲームの中で、特筆すべきものとしてもう一つ、「バトルスキンパニック」がある。
○ ガイナックスのゲームは無駄が多い」というのが眠田直大先生の持論であった。自分ならこれまでの半分の作画枚数で、倍の時間プレイヤーを楽しませられるものを作れるという。
○ 元になったのは眠田直がBASICで作ったカードゲーム。眠田直大先生が作りこんだだけあって、ゲームバランスが抜群に良かった。このカードゲームを元に、エロゲーを作った。ここでも眠田直大先生は脱衣の理由にこだわった。ここまでくると、誰もそんなの要求してないのにだよ!
○ 脱衣の理由として導き出された設定はなんと、主人公は「全裸神拳」の使い手というもの。「全裸神拳」の使い手は体の表面から波動が出て相手を攻撃する。露出が多ければ多いほど攻撃力が上がる。だが、主人公は女子高生なので恥ずかしい。「羞恥心メーター」というものがあり、露出を上げすぎるとこれがMAXまで上がり、ゲームオーバーになってしまう。しかし、山から引くカードによってはメーターを下げることができる。如何に羞恥心メーターの上昇を抑えつつ、相手を倒すかという駆け引きを伴うゲームとなった。
(岡田斗司夫はずっと眠田直「大先生」とおフザケな敬称で呼んでいて、よっぽど眠田直のことが好きなのだと思った。ガイナックス退社以降もオタクアミーゴス等で組んで活動している理由も伺えます)
オタクアミーゴス!
岡田 斗司夫 唐沢 俊一 眠田 直
ミンディマガジン (POE BACKS)
みんだ なお
<脱衣ゲームでの岡田アイディア話>
○ 「バトルスキンパニック」終盤の展開で、巨乳の塔というのを考えた。「フロア」、「B」、「C」……ときて、アルファベットが尽きると「い」、「ろ」、「は」……と続く。勿論、死亡遊戯のパロディで、各階にはアルファベットに対応した大きさのバストを持った敵がいるわけだ。最後は部屋いっぱいの巨乳の上に、ちょこんと女の子の顔が乗っている。
○ どこまでフレームアップできるか、というのをやりたかったのだが、皆に駄目出しされた。普段は僕のアイディアになかなか駄目出ししない赤井君も悩みながら駄目出しした。「岡田さんのアイディアに駄目を出すことは、全国に数十万人いる”岡田予備軍”を否定することなので駄目出ししないのですが、岡田さん、さすがにこれは駄目です。ユーザーの求めているものと違います!」
○ 眠田大先生が、ラスボスとして核ミサイルはどうか?と提案してきた。クイズに正解するとICBMの外装がどんどん剥がれていって無力化される、というもの。それはおもしろい。じゃ、いっそのこと、プルトニウムの妖精がミサイルの中に入っていることにしよう!全裸にした後、更に正解すると、プルトニウム239がアルファ崩壊してウラン235になって、爆発しなくなる(ウラン235も核分裂起こしやすいけど、言いたいことは分かります)。妖精に「ありがとう!私も爆発したくなかったの!」と感謝される、感動のエンディングが待っている……というのを考えたが、さすがにやりすぎだと駄目出しされた。
<プリンセスメーカー>
○ というわけで、ガイナックスゲームの第一世代は脱衣を売り物にしたクイズゲームだった。第二世代は「ナディア」や「サイレントメビウス」といったアドベンチャーゲーム。基本的に一本道なので、第一世代よりもゲーム性は低い。第三世代として、コンピューターでなければできないものをやりたかった。
○ 「サイレントメビウス」は「リバーヒルソフトのようなゲームが作りたい」という発想から作られた。どこかの真似ではなく、オリジナルなものを作りたかった。そのうち、「女の一生をゲームにできないか」と考えた。我々男は女というものが分からない。そこで、女の一生を追体験することがゲームとしての面白さにつながるのではなかろうか、と。
○ 一方その頃赤井くんは「信長の野望」にハマっていた。とにかく大好きで毎日のようにプレイしている。自分の操作で様々なパラメーターが上がっていくのを見てニヤニヤしている。でも、戦闘シーンがウザったいと感じていた。なんとか育成パートのみをゲームにできないか?と考えていた(会場は爆笑だったけど、成程と頷ける話です)。
○ 上記二つのコンセプトが合体し、「プリンセスメーカー」が誕生した、世界初の育成ゲームの誕生である!
○ 主人公は引退した勇者。戦災孤児の少女を育てていくわけだが、さすがに本当の女の一生を、生きてから死ぬまでをやるのは無理だった。赤井くんからは、ハードのスペックが上がって六世代目のゲームを作れるくらいまでいかないと無理だと言われた。だから、女の一生「みたいな」ものを横目で見ている「みたいな」感じになった。「みたいな」ばっかりだね。
○ パラメーターが単に上下するだけでは面白くないので、小さいウィンドウで絵を表示させて、可視化させた。この部分は絵のバリエーションが多く必要で、しかも上手い絵でなければならないので苦労した。
プリンセスメーカー5(攻略本同梱版) 特典 Amazon.co.jpオリジナル「娘からのひとことCD」(ふつー編)付き
<感動を与えるエンディング話>
○ ラストでプレイヤーを感動させたかった。「感動」、つまり心が動くためには、他人事ではなく、自分事のレベルに持っていかなくてはならない。他人事だと「感動」ではなく「納得」にしかならない。
○ たとえば「トップをねらえ!」のラストの「オカエリナサイ」は地球を救ってくれてありがとうということだが、アニメを見続けてくれてありがとうという意味もあった。ノリコやカズミだけでなく、ビデオを買ってくれた視聴者へのメッセージでもあったわけだ。
○ もう一つの例として、ゲームの「サイレントメビウス」。このゲームのラストでは、「Gu-Guガンモ」の最終回をやろうとした。
Gu-Guガンモ 【コミックセット】
細野 不二彦
○ ガンモの大好物はコーヒー。コーヒーはガンモにとってアルコールのような作用があり、酔っ払ってドタバタギャグをやる、というのが一つの定番パターンだった。で、最終回、実は鳳凰の雛鳥だったガンモは皆の前から去るのだが、その際に登場人物全員の自分に対する記憶を奪う。皆、ガンモに関する記憶を無くしてしまう。それでも皆の日常は続いていくのだが、ある時主人公がコーヒーを飲むと、何故か泣いてしまう。主人公はなんで自分が泣くのか分からないのだが、読者だけは分かるわけだ。
○ 「サイレントメビウス」のラストで、これと同じようなことをやった。タイタニック号がサイレントメビウス世界の空に突如出現するというストーリーなのだが、AMPのメンバーと一緒に事件を解決した主人公は、実は現実世界の人間であった。最後、全ての記憶を失って現実世界に帰還するのだが、そこでタイタニック引き上げのニュースを目にする。現実世界の引き上げられたタイタニックを歩いているうちに、部分的にAMPメンバーとの思い出が蘇っていくのだが、「ガンモ」の「コーヒー」を「オルゴールの音」に置き換え、同じような演出をした。ここで泣かされるオルゴールの音は、それまでプレイしてきたゲームの様々な場面で流された音色にした。主人公が泣く意味を理解できるのはユーザーだけ。
サイレントメビウス CASE:TITANIC
○ 「サイレントメビウス」の反響は大きかった。「初めてゲームで泣きました」なんてハガキも届いた。「感動」の為には、必ずしも登場人物と感情を共有させなくても良い。プレイヤーの先を読ませることによって、補完させることによって、感動させるのだ。「なんで感動したのか分からなかった」というハガキが届いた時は嬉しかった。
○ 「プリンセスメーカー」のラストでは、それまでのプレイヤーの操作自体を感動に結び付けられないかと考えた。人間は自分の努力を過大評価する生き物である。それまでの努力、マウスのクリックをすべて感動に結び付けられないかと。
○ 最後、育てた娘から手紙が来るわけだが、「○○してくれてありがとう」「××をありがとう」と書いてある。この○○や××はそれまでのプレイヤーの操作と対応しており、イベントとして仕込んである。つまり、プレイヤーの全ての操作に対応したマルチエンディングということなのだが、自分たちでも「良くやった感」があった。
○ でも、まさかその後に「ときめきメモリアル」が出るとは!ここまでやられては、俺達は売れなくて当たり前だと思った。その後、赤井くんも交えて「ときメモ」製作者と対談する機会があったのだが、「プリメ、大いに参考にさせて貰いましたよ」などと言われた。「ええ、そうでしょうよ!!」
今回、なかなかまとまりません。次回に続きます。
○ 眠田直は漫画家、というか謎の職業の人なのだが、日本で最も初期にパソコン通信をやっていたりした人でもある。ガイナックスのゲーム製作にも参加した。
○ 眠田直は非常に優秀な男である。まず、山賀君に比べると取り回しが良い。朝一で「○○について考えてくれ」と企画を任せると、山賀君は3年経っても悩みまくっているのに対し、眠田直大先生は午後にはスタッフ編成を終え、企画書を渡してくる。
○ 他人が考えすぎるのに対し、アイディアを1分間に1個出してくる小回りのよさ。山賀くんを最小回転半径100 mのトラックに喩えると、ガソリン1 lで半年走るスーパーカブみたいなもの。しかも、自分の好きなことをベースにきちんと売れる要素を盛り込み、ネタに一捻りも加えてくる。
○ あるSF大会で、一晩で新しいアニメの企画を考えようという分科会があった。皆、様々なアイディアを出し、どれも微妙に面白いのだが、微妙に使えない。だが、そこで眠田直の出したアイディアが凄かった。なんと「地球に厳しい戦隊モノ」。「皆が地球に優しくするから、地球は甘やかされて駄目になってしまうんだ!少しは地球に厳しくして、地球を鍛えないと駄目!」というのがコンセプト。ガソリンをガブガブ飲み、排気ガスをモクモク吐くロボットが大地を蹂躙しながら敵を倒すと、足跡から新芽が芽吹く、というアニメ。敵はヒッピーだ。並み居る編集者やらSF作家やらが全員面白い!と絶賛したが、実際に作る勇気は誰にも無く、企画は流れたそうだ。
○ そんな眠田大先生はゲーム製作の現場でも異才を発揮する。
http://homepage3.nifty.com/mindy/prof/game.html
○ 「電脳学園」はクイズに正解すると女の子が脱いでいく、脱衣ゲームであったが、続編では脱衣の必然性について悩んでいた。一応第一作でもエクスキューズはしていたが、「ここはクイズに正解すると女の子が脱いでくれる学園だったんだ〜!」では限界があった。
○ こういうことを山賀くんや赤井くんに頼むと、彼らは、半年間は考える。だが眠田直は焼肉屋に食事に行ったら、翌日の朝にはもう企画書を出してきた。
○ タイトルは「エイプハンターJ」。企画書を読むと、こんな一文から始まる。「ショック!学園の中にサルがいます!」舞台は近未来。そこでは慢性的な労働力不足を解消する為に、遺伝子操作したサルを働かせて労働力不足を補っている。そのサルは人間と見分けがつかず、人間社会に逃げ出し、潜伏する者達も現われてきた。ただ一点だけ、サルなのでケツが赤いことだけが人間と違う。「そういうことか!」
○ つまり、人間かサルかを判断する為に、目の前にいる女の子もしくは女サルを脱がしてケツを確認するわけだ。「でも、これって『ブレードランナー』だよな?」
○ ゲーム世界でサルは差別されているのだが、ラストには、サルも人間も無い、感動のクライマックスが待っているという。これは必要ないと主張したが、結局ナレーションでちょっとだけ触れられた。
○ もし中古屋などで「エイプハンターJ」を見かけたら、是非購入して欲しい。ガイナックスのゲーム製作業はこの頃になると発売前に確実に儲かることが分かっていたのだが、またガイナックスの悪い癖が出て、クオリティアップの為に豪華なおまけをつけた。「高校生の現代社会科 猿害の実際」という、日本史の教科書の体裁をとったゲームの副読本だ。なんと100ページくらいあって、サルが作った縄文式土器や、豊臣秀吉が本当のサルだったりする。ある朝会社に行くと、この副読本用の縄文式土器をスタッフが粘土こねて作っていて驚いた。
http://www.amusement-center.com/project/egg/cgi/ecatalog-detail.cgi?product_id=580
○ 眠田直大先生が作ったゲームの中で、特筆すべきものとしてもう一つ、「バトルスキンパニック」がある。
○ ガイナックスのゲームは無駄が多い」というのが眠田直大先生の持論であった。自分ならこれまでの半分の作画枚数で、倍の時間プレイヤーを楽しませられるものを作れるという。
○ 元になったのは眠田直がBASICで作ったカードゲーム。眠田直大先生が作りこんだだけあって、ゲームバランスが抜群に良かった。このカードゲームを元に、エロゲーを作った。ここでも眠田直大先生は脱衣の理由にこだわった。ここまでくると、誰もそんなの要求してないのにだよ!
○ 脱衣の理由として導き出された設定はなんと、主人公は「全裸神拳」の使い手というもの。「全裸神拳」の使い手は体の表面から波動が出て相手を攻撃する。露出が多ければ多いほど攻撃力が上がる。だが、主人公は女子高生なので恥ずかしい。「羞恥心メーター」というものがあり、露出を上げすぎるとこれがMAXまで上がり、ゲームオーバーになってしまう。しかし、山から引くカードによってはメーターを下げることができる。如何に羞恥心メーターの上昇を抑えつつ、相手を倒すかという駆け引きを伴うゲームとなった。
(岡田斗司夫はずっと眠田直「大先生」とおフザケな敬称で呼んでいて、よっぽど眠田直のことが好きなのだと思った。ガイナックス退社以降もオタクアミーゴス等で組んで活動している理由も伺えます)
オタクアミーゴス!
岡田 斗司夫 唐沢 俊一 眠田 直
ミンディマガジン (POE BACKS)
みんだ なお
<脱衣ゲームでの岡田アイディア話>
○ 「バトルスキンパニック」終盤の展開で、巨乳の塔というのを考えた。「フロア」、「B」、「C」……ときて、アルファベットが尽きると「い」、「ろ」、「は」……と続く。勿論、死亡遊戯のパロディで、各階にはアルファベットに対応した大きさのバストを持った敵がいるわけだ。最後は部屋いっぱいの巨乳の上に、ちょこんと女の子の顔が乗っている。
○ どこまでフレームアップできるか、というのをやりたかったのだが、皆に駄目出しされた。普段は僕のアイディアになかなか駄目出ししない赤井君も悩みながら駄目出しした。「岡田さんのアイディアに駄目を出すことは、全国に数十万人いる”岡田予備軍”を否定することなので駄目出ししないのですが、岡田さん、さすがにこれは駄目です。ユーザーの求めているものと違います!」
○ 眠田大先生が、ラスボスとして核ミサイルはどうか?と提案してきた。クイズに正解するとICBMの外装がどんどん剥がれていって無力化される、というもの。それはおもしろい。じゃ、いっそのこと、プルトニウムの妖精がミサイルの中に入っていることにしよう!全裸にした後、更に正解すると、プルトニウム239がアルファ崩壊してウラン235になって、爆発しなくなる(ウラン235も核分裂起こしやすいけど、言いたいことは分かります)。妖精に「ありがとう!私も爆発したくなかったの!」と感謝される、感動のエンディングが待っている……というのを考えたが、さすがにやりすぎだと駄目出しされた。
<プリンセスメーカー>
○ というわけで、ガイナックスゲームの第一世代は脱衣を売り物にしたクイズゲームだった。第二世代は「ナディア」や「サイレントメビウス」といったアドベンチャーゲーム。基本的に一本道なので、第一世代よりもゲーム性は低い。第三世代として、コンピューターでなければできないものをやりたかった。
○ 「サイレントメビウス」は「リバーヒルソフトのようなゲームが作りたい」という発想から作られた。どこかの真似ではなく、オリジナルなものを作りたかった。そのうち、「女の一生をゲームにできないか」と考えた。我々男は女というものが分からない。そこで、女の一生を追体験することがゲームとしての面白さにつながるのではなかろうか、と。
○ 一方その頃赤井くんは「信長の野望」にハマっていた。とにかく大好きで毎日のようにプレイしている。自分の操作で様々なパラメーターが上がっていくのを見てニヤニヤしている。でも、戦闘シーンがウザったいと感じていた。なんとか育成パートのみをゲームにできないか?と考えていた(会場は爆笑だったけど、成程と頷ける話です)。
○ 上記二つのコンセプトが合体し、「プリンセスメーカー」が誕生した、世界初の育成ゲームの誕生である!
○ 主人公は引退した勇者。戦災孤児の少女を育てていくわけだが、さすがに本当の女の一生を、生きてから死ぬまでをやるのは無理だった。赤井くんからは、ハードのスペックが上がって六世代目のゲームを作れるくらいまでいかないと無理だと言われた。だから、女の一生「みたいな」ものを横目で見ている「みたいな」感じになった。「みたいな」ばっかりだね。
○ パラメーターが単に上下するだけでは面白くないので、小さいウィンドウで絵を表示させて、可視化させた。この部分は絵のバリエーションが多く必要で、しかも上手い絵でなければならないので苦労した。
プリンセスメーカー5(攻略本同梱版) 特典 Amazon.co.jpオリジナル「娘からのひとことCD」(ふつー編)付き
<感動を与えるエンディング話>
○ ラストでプレイヤーを感動させたかった。「感動」、つまり心が動くためには、他人事ではなく、自分事のレベルに持っていかなくてはならない。他人事だと「感動」ではなく「納得」にしかならない。
○ たとえば「トップをねらえ!」のラストの「オカエリナサイ」は地球を救ってくれてありがとうということだが、アニメを見続けてくれてありがとうという意味もあった。ノリコやカズミだけでなく、ビデオを買ってくれた視聴者へのメッセージでもあったわけだ。
○ もう一つの例として、ゲームの「サイレントメビウス」。このゲームのラストでは、「Gu-Guガンモ」の最終回をやろうとした。
Gu-Guガンモ 【コミックセット】
細野 不二彦
○ ガンモの大好物はコーヒー。コーヒーはガンモにとってアルコールのような作用があり、酔っ払ってドタバタギャグをやる、というのが一つの定番パターンだった。で、最終回、実は鳳凰の雛鳥だったガンモは皆の前から去るのだが、その際に登場人物全員の自分に対する記憶を奪う。皆、ガンモに関する記憶を無くしてしまう。それでも皆の日常は続いていくのだが、ある時主人公がコーヒーを飲むと、何故か泣いてしまう。主人公はなんで自分が泣くのか分からないのだが、読者だけは分かるわけだ。
○ 「サイレントメビウス」のラストで、これと同じようなことをやった。タイタニック号がサイレントメビウス世界の空に突如出現するというストーリーなのだが、AMPのメンバーと一緒に事件を解決した主人公は、実は現実世界の人間であった。最後、全ての記憶を失って現実世界に帰還するのだが、そこでタイタニック引き上げのニュースを目にする。現実世界の引き上げられたタイタニックを歩いているうちに、部分的にAMPメンバーとの思い出が蘇っていくのだが、「ガンモ」の「コーヒー」を「オルゴールの音」に置き換え、同じような演出をした。ここで泣かされるオルゴールの音は、それまでプレイしてきたゲームの様々な場面で流された音色にした。主人公が泣く意味を理解できるのはユーザーだけ。
サイレントメビウス CASE:TITANIC
○ 「サイレントメビウス」の反響は大きかった。「初めてゲームで泣きました」なんてハガキも届いた。「感動」の為には、必ずしも登場人物と感情を共有させなくても良い。プレイヤーの先を読ませることによって、補完させることによって、感動させるのだ。「なんで感動したのか分からなかった」というハガキが届いた時は嬉しかった。
○ 「プリンセスメーカー」のラストでは、それまでのプレイヤーの操作自体を感動に結び付けられないかと考えた。人間は自分の努力を過大評価する生き物である。それまでの努力、マウスのクリックをすべて感動に結び付けられないかと。
○ 最後、育てた娘から手紙が来るわけだが、「○○してくれてありがとう」「××をありがとう」と書いてある。この○○や××はそれまでのプレイヤーの操作と対応しており、イベントとして仕込んである。つまり、プレイヤーの全ての操作に対応したマルチエンディングということなのだが、自分たちでも「良くやった感」があった。
○ でも、まさかその後に「ときめきメモリアル」が出るとは!ここまでやられては、俺達は売れなくて当たり前だと思った。その後、赤井くんも交えて「ときメモ」製作者と対談する機会があったのだが、「プリメ、大いに参考にさせて貰いましたよ」などと言われた。「ええ、そうでしょうよ!!」
今回、なかなかまとまりません。次回に続きます。
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(08/02/17 レコーディング・ダイエットのススメ)
3月11日(火)は「遺言4」です
岡田斗司夫の『遺言』第四章
【出演】岡田斗司夫
2008年3月11日(火??.
岡田斗司夫の『遺言』第四章 3月11日開催【「エヴァ板とガイナスレ用だよ」Blog】at 2008年03月20日 21:39