海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳(せいとく)丸」の衝突事故で、あたごの当直士官だった水雷長が回避措置を命じたのは、事故の数秒前とみられることが防衛省の調査で分かった。防衛省は事故直後、衝突の約1分前に回避を始めたと発表していた。ほとんど減速できずに衝突していた可能性が高まった。
関係者によると、あたごは機関操縦室にモニターが設置され、艦首上部などに設置された複数のカメラの映像を切り替えながらチェックする。
防衛省が21日公表した中間報告によると、機関操縦室でモニターを監視していた当直員は、2月19日午前4時6分ごろ、清徳丸の灯火が画面に現れ、艦首方向に移動したのを確認したが、約5秒後に艦首に遮られて見えなくなったと証言。
さらに1〜2秒後、艦首左舷に一瞬光が見えたと思った直後、水雷長が両舷のプロペラの推進力を停止する両舷停止、自動操舵(そうだ)やめを命じ、その後、後進いっぱいの指令を出した、と証言している。別の当直員によると、二つの指令の間隔は5〜10秒だったという。
また、艦橋内にいたもう1人の当直員は、水雷長が回避行動を指令して右舷の艦橋外に向かうのを見て、後を追う途中で衝突音らしい音を聞いた、としている。
事故では、あたごの艦首は、漁船の左舷の後部寄りにほぼ垂直に衝突したことが分かっている。清徳丸の全長は約16メートルで、清徳丸の速度が僚船とほぼ同じ14ノット(秒速約7・2メートル)とすると、衝突せずにあたごの正面を横切るのに必要な時間は2秒程度だ。
機関操縦室の当直員が見えたと証言する左舷の光は、衝突直前の清徳丸のものとみられ、指令は光が見えた直後だったとされることから、この2秒以内に出されたとみられる。両舷停止と後進一杯の指令の間には5〜10秒あったとの証言から、後進いっぱいの指令は衝突後だった可能性もある。
第3管区海上保安本部(横浜)は、業務上過失往来危険容疑などで水雷長を書類送検する方針。【本多健、鈴木泰広】
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