東北道路アンケート/住民の声を誰に伝えるのか
東北に住む人たちはガソリン税の暫定税率や道路特定財源のことをどう考えているのか。
河北新報社が東北6県の有権者を対象に19、20の両日実施して昨日の朝刊に掲載した道路財源問題に関するアンケート結果は幾つかの点で興味深い。
まずは、暫定税率の廃止と道路特定財源の一般財源化に約7割もが賛成していることだ。
特にガソリン一リットル当たりの価格に含まれる税を本来より25円高くしている暫定税率の廃止要求は価格の高止まりが続く中で強いことがうかがえる。
民主党は、与党が一昨日野党に示した税制改正法案の修正案が暫定税率廃止に触れていないことに反発、修正協議入りに否定的だ。それもガソリン値下げを求めるこうした世論の膨張を後ろ盾にしたものとみられる。
ガソリン価格の値下げは誰もが望むだろう。当然のことである。だが、値下げは別の問題をはらむ。東北の人たちはその点をどう受け止めるのだろうか。
暫定税率を廃止すれば、国と地方の道路財源に約2兆6000億円の穴があき、道路整備やその関連事業が立ちゆかなくなる。政府・与党はガソリン値下げに伴う問題をこう説明している。
しかしアンケート結果では、自分の住む地域の道路整備状況に6割以上が満足している。今後10年間で最大59兆円を投じる道路整備中期計画の事業額についても6割以上が「多い」と感じていることが分かった。
私たちは、東北地方の産業・生活基盤としての道路整備はまだまだ満足できる水準に達していないと考えてきた。それだけに、これは意外な数字だった。
ただ、この数字の意味を咀嚼(そしゃく)する上で、7割が道路特定財源の一般財源化を求めている事実に着目する必要がある。
自動的に「道路」に使われる特定財源はいわば国の財布。これを自治体も主体的に使える一般財源にすれば財布の中身は透明化し、本当に必要な道路を無駄なく整えられ格差是正にもつながる―。数字はこんな世論の反映なのかもしれないからだ。
こうしてアンケート結果を見てくると、東北の人たちと政府・与党の主張に隔たりがあるという印象を持つ。しかし、それより問題だと思うのは、東北の人たちと「地方代表」を旗印とする全国知事会との距離感だ。
知事会の立場を整理すると、「暫定税率の維持」「道路特定財源の一般財源枠拡大」「税制改正法案の年度内成立」だ。
暫定税率の4月廃止に伴う地方行財政の混乱を避けたいという気持ちや全額一般財源化に対する慎重論がその背景にある。
私たちは昨日の社説で、行政執行責任者の知事と生活者たる県民の声は必ずしも同じでなく、知事会の意見イコール地方の声とはみていないと書いた。
現に全国知事会の立場とアンケート結果には相当の開きが認められる。東北各県の知事と県民との関係もしかりだろう。
知事や市町村長は道路問題で住民との対話を始めるべきだ。そして、地方の息遣いを与野党の修正協議に伝えてほしい。