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コラム「法林岳之のデジタルトレンド羅針盤」

東芝撤退後も悩ましい次世代DVD選び

2008年03月21日

 東芝は今年2月、同社が中心となり推進してきた次世代DVD規格「HD DVD」の事業を終息させることを発表しました。ここ数年、家電メーカーをはじめ、映画会社やパソコンメーカーなどを巻き込み、業界を二分してきた「ブルーレイ対HD DVD」という次世代DVD規格の争いがようやく終結することになりました。

写真500GBのハードディスクを搭載し、最大約160時間のハイビジョン番組を録画可能なソニーのブルーレイディスクレコーダー「BDZ-X90」

 次世代DVD規格の争いが決着したことで、いよいよ市場も次世代DVDの拡大へと動き出しつつあります。たとえば、調査会社BCNが発表した市場動向によると、東芝がHD DVD終息を表明した2月は、DVDレコーダーの販売に占める次世代DVD機の割合が今年1月に比べ、8ポイント増えたそうです。規格争いの行く末を見ていた消費者が発表を見て、ブルーレイディスク対応のレコーダーを購入したのではないかと見られています。国内ではソニー、松下電器産業、シャープがブルーレイディスク対応レコーダーを販売していますが、今月18日には三菱電機も5月に新機種を発売し、参入することが発表されました。

 また、DVDレンタルチェーンの最大手であるTSUTAYAは、既存のDVDに加え、ブルーレイディスクのタイトルのレンタルを全国の主要10店舗で開始することを発表しました。今夏までには全店舗でレンタルできる見込みです。これに続き、レンタルチェーンのゲオも4月12日から全国800店舗で正式にブルーレイディスクのタイトルのレンタルサービスを開始することになりました。同社は昨年12月から今年2月まで、映像ソフトメーカーやAV機器メーカー22社によるブルーレイ研究会の協力の下、ブルーレイディスクのタイトルの試験レンタルを実施しており、その際の多くのユーザーから反響があったことを踏まえ、全店導入を早期に実施することになりました。

 規格争いの決着により、ブルーレイディスク普及が一気に進みそうな印象もありますが、ユーザーの視点から考えると、まだまだ次世代DVDの選択には悩むところがあります。たとえば、ブルーレイディスクのタイトルもその一つです。

 現在、映画などのタイトルを購入する際、おそらく多くの人はDVDを購入しているでしょう。家庭でブルーレイディスク対応レコーダーやプレイステーション3などを購入し、ブルーレイディスクを再生する環境が用意できれば、今後は映画などのタイトルの購入もブルーレイディスクに切り替えたいところです。しかし、ブルーレイディスクのタイトルは、ブルーレイディスク対応機器でしか再生できません。

 これに対し、DVDのタイトルは家庭用のDVDレコーダーをはじめ、パソコンやゲーム機、ポータブルプレーヤー、カーナビなど、さまざまな環境で再生できます。もし、DVDが再生できる機器がいくつもあり、映画などのタイトルをいろいろな環境で再生したいのであれば、DVDのタイトルを購入するしかないわけです。しかし、それはせっかく購入したブルーレイディスク対応レコーダーの性能を十分に活かせなくなってしまいます。ちなみに、映画のタイトルなどで比較した場合、DVDで約4000円程度、ブルーレイでは約5000円程度になります。

 つまり、ハードウェアとしては、従来のDVDのタイトルも高品質なブルーレイディスクのタイトルも再生できるブルーレイディスク対応レコーダーなどを選ぶことになりますが、映画タイトルなどのソフトウェアは自分が再生したい環境をよく考えて、選んでいく必要があるわけです。パソコンなども徐々にブルーレイディスク対応に置き換わっていくと予想されていますが、普及にはまだ数年が掛かるとも言われています。規格争いに勝ったブルーレイディスクにとって、当面の最大のライバルは、もっとも身近なDVDと言えるのかもしれません。

プロフィール

法林岳之(ほうりん・たかゆき)
ITジャーナリスト。パソコンや携帯電話など、幅広いデジタル製品の試用レポートや解説記事を執筆。携帯電話関連では業界No.1サイト「ケータイ Watch」にも連載中。「できるWindows Vista」「できる入門 今日からはじめるパソコン Windows Vista 対応」(インプレス刊)など著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。

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