|
|
|
社会|スポーツ| |
文字サイズ:
大|中|標準
|
社説
台湾総統選 まず中国と対話再開を(3月23日)台湾の民意が、二期八年続いた民進党の陳水扁総統時代から「変化」を求めたのだろう。 台湾総統選で、最大野党国民党の馬英九・前党主席が、与党民進党の謝長廷・党主席代行に大差をつけて勝利した。五月に新総統に就任する。 馬氏は「統一せず、独立せず、戦いはせず」の基本政策を掲げ、対中対話に臨む姿勢を示している。 中国は李登輝政権時代に一時対話を進めたこともあるが、独立志向の強い陳政権時代は拒否してきた。 馬氏の登場を機に中台双方が対話再開に歩み寄り、経済を軸とした新たな関係を築くことを望みたい。 前回の総統選は、民進党の台湾化路線か、国民党の対中融和路線かが問われたが、今回は世界的な物価高と景気減速の中でいかに経済を立て直すかに有権者の関心が集まった。 台湾はここ数年4%以上の経済成長を続けているが、インフレで生活が苦しくなったというのが住民の実感だ。失業率は一九九九年の2・9%から二〇〇七年には3・9%に悪化した。 このため民進党の「経済失政」に不満を持つ無党派層の票が馬氏に流れ、勢力が拮抗(きっこう)する中部の都市部でも国民党が有利に選挙戦を展開したようだ。 ただ、終盤になってチベットの騒乱に対する中国当局の強硬的な態度が、馬氏への逆風となる可能性があった。 ライバルの謝氏が「台湾もすべてを中国に開放すればチベットの二の舞いになる」と、馬氏への批判を展開したが、結果的に大きな影響はなかった。 気になるのは国民党が一月の立法院(国会)選挙で大勝したのとあいまって、一党支配を強めはしないかということだ。馬氏はこれにおごることなく、民進党の声にも耳を傾ける度量をみせてほしい。 馬氏は年率6%の経済成長や中国資本の台湾投資の開放、中国との共同市場の形成、航空直行便の拡大を公約に掲げている。 台湾企業は続々と大陸に進出し、もはや台湾の経済発展は中国抜きでは考えられない。 温家宝首相も全国人民代表大会(全人代)閉幕後の会見で「大陸との経済交流は深まっている。台湾と直接に通信、通商、通航を行う『三通』を実現したい」と語った。 総統選に合わせて行われた「台湾名義での国連加盟」を問う住民投票は、国民党がボイコットを決めたため、今回も成立しなかった。 中国は住民投票が独立の動きにつながると強く非難してきたが、台湾を刺激する行動は今後とも控えるべきだ。 中台関係の動静は東アジアの安全保障を左右する。馬氏が中国との距離をどのように縮めるか、その手腕に注目したい。 |
|