厚生労働省の「死因究明等の在り方に関する検討会」に委員として参加する堺秀人氏(神奈川県病院事業管理者・病院事業庁長)は3月22日、日本病院会の代議員会・総会で「死因究明制度」をめぐる現状について講演し、同省が近く公表する制度の第3次試案の中で、「医療事故調査委員会(仮称)」に事故死を届け出るかどうかを医療機関の管理者(院長)が判断する方向が盛り込まれるとの見通しを示した。また、試案の公表時期については「3月中に公表されることは確定で、厚労省はその方向で動いている」と話した。
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堺氏はこの日、医療機関から調査委への届け出範囲について▼誤った医療を行ったことが明らかで、それが原因で患者が死亡したケース▼誤った医療を行ったことは明らかではないが、行った医療が原因で患者が死亡したケース(予期せぬ死亡)―の2点を提示した。ともに医療機関がこれらに該当すると判断することが前提で、該当しないと判断した場合には届け出の必要はないとする考え方を示し、3次試案の内容も「おそらくこうなると思う」と述べた。
届け出の判断については「(異状死の届け出義務を規定する)医師法21条では主治医または担当医が届け出ると定められているが、(新制度では)そうではなく医療機関の長(院長)が判断することになると思われる」と予測した。
明らかに届け出るべきと認識していたのに故意に怠ったり、虚偽の届け出をした場合には何らかのペナルティーが科せられる可能性も示唆した。
このほか、調査委のキャパシティーに限界があるため、調査対象が当面、解剖の可能なケースに限定される可能性も指摘。その上で「将来的には解剖ができない事例の調査も行うと言われている」と述べた。
堺氏はまた、遺族が調査を望む場合には、医療機関を通じて調査委に依頼することになるとの見方も示した。
事故に対する見解の食い違いなどから遺族が警察に直接通報した場合の対応については「届け出られたら警察は対応せざるを得ないという意見が(検討会で)あったが、委員会(調査委)による専門的な判断を尊重するため、刑事手続きは故意や重大な過失に限定される方向が直近(検討会があった3月12日以後)になってかなり明確になった」と明らかにし、3次試案では、通報を受けた警察が調査委による調査を尊重する方向が盛り込まれる可能性が高いとの見方を示した。
厚労省は、3次試案に対する意見募集を月内に開始し、その後、賛成・反対意見を集計する。関係者の同意をおおむね得た段階で、今国会に関連法案を提出したい考え。
昨年10月に公表した死因究明制度の第2次試案をめぐっては▽医療機関が調査委会に届け出る事故の範囲が不明確▽調査委から警察に死亡事故が通知された場合、医療者個人の責任追及に結びつく懸念がある――などの点に対する批判が特に強い。
堺氏はこの日、3次試案ではこれらの方向が「相当緩和される」と見通した。その上で「医師免許を持つ大多数が賛成する形にならないとこの制度は動かない」と述べ、新しい試案の中身を確認して積極的に意見表明するよう呼び掛けた。
更新:2008/03/23 11:25 キャリアブレイン
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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。