閉塞した冠動脈を拡張させる役目を終えた後、完全に生体に吸収されてしまう新しいタイプのポリマー製ステントに関して、数カ国で行われた臨床試験で良好な結果が得られたことが医学誌「The Lancet」3月15日号で報告された。
報告によると、31例中29例でこの生体吸収型ステントの留置に成功。1年の追跡期間中、ステントを留置した冠動脈に再狭窄が認められた症例はなかった。留置を受けた30人中1人が心臓発作を発症したが、それ以外の有害事象は認められなかった。ステントを開発した米Abbott Laboratories社の広報担当Karin Bauer氏によると、このステントについて現在複数の国で大規模臨床試験が進行しており、米国での試験も計画準備段階にあるという。
この新しい生体吸収型ステントは、乳酸の骨格をもち、瘢痕(はんこん)組織の形成を防ぐ薬剤エベロリムス(免疫抑制薬)に閉塞よりコーティング(被覆)されている。従来のステントは金属メッシュの管で、閉塞した血管を押し広げて血流を再開通させるために使用されるが、一度留置すると取り除くことができない。
今回の試験を実施した施設の一つであるオランダ、エラスムスErasmusメディカルセンター(ロッテルダム)のPatrick W. Serruys博士は、吸収型ステントには多数の長所があると述べている。例えば、再狭窄は最初の6カ月以内に発生することから、ステントを永久的に留置する必要はないが、Abbott社のステントの材料となっているポリマーは、分解されて二酸化炭素と水になるため、血管内に異物が残ることがなく、血管の柔軟性が得られる。
また、金属ステントは壊れると、その破片によって好ましくない反応が生じることもある。さらに生分解性ステントでは、将来の血管の伸長が金属で妨げられるようなこともない、とSerruys氏は説明している。今回の試験はこのほか、デンマーク、ポーランドおよびニュージーランドの施設で実施された。
今後、5〜7年の長期的な追跡が必要とされるが、それでもSerruy氏は「最初の試みでこれほどの好結果が得られたことに驚いている」と述べている。このステントの新型バージョンによる臨床試験が計画段階にあり、最初の試験と同施設で患者30人を対象に実施される予定。新型ステントは設計変更によりさらに強度が増すと思われ、これまで以上に良好な結果が見込めるという。この試験は今年(2008年)後半に開始され、成功すれば大規模な国際的試験につながるものと思われる。
原文
[2008年3月13日/HealthDay News]
Copyright (c)2008 ScoutNews, LLC. All rights reserved.