肥留間正明の芸能斜め斬り 情けなや「悪アガキ」ショーケンの断末魔

　60を目前にした男が、「あの女」と寝た！ヤクだと暴露するのはいいが、物の分別がない。はっきり言って目的は金だろう。芸能界からのお呼びがなくなり、何を血迷ったか3月14日に「ショーケン」なるタイトルで自叙伝を出版。自叙伝といえば聞こえがいいが、中味は明らかに暴露本。芸能ジャーナリズムは、基本的には暴露には違いないが、やっていいことといけないことがある。自分が「愛した」女性たちの名前は仕方ないとしても、その経緯まですべて「暴露」したのはいただけない。
　以前、私のところに石原真理子の暴露本を最初に持ち込まれたことがあるが、男と女は違う。金に追い込まれた女は、最後の生きる手段として昔の男を書くのは許される。昔の男との暴露は、自己暴露であり、生き様だからだ。男の方も「困ったら俺のことを書いて金にしていいよ」と言うぐらいの太っ腹であるべきだ。

　ショーケンは、その昔、GSの「ザ・テンプターズ」でヴォーカルをつとめ、一時期はタイガースの沢田研二と人気を二分するほどの人気ぶりだった。しかし、ここからショーケンの生意気人生は始まる。役者としても個性的な演技で注目を集め、将来が嘱望されていたが、問題児人生は直らない。
　ショーケンのつまずきは、大麻事件だった。黒澤明監督の「影武者」のロケ先では、ホテルの一室からいつも大麻の臭いが漂っていたと、共演者は語っていた。案の定、逮捕。それでも問題児は直らず、女性スキャンダルの一方、いしだあゆみと、倍賞美津子という2人の大女優との事実婚を重ねたが、愛想をつかされて別離。
　そのショーケンを守っていたのがSという名物マネジャーだった。彼は仕事のなくなったショーケンのために映画を作るが、赤字決算でプロダクションは倒産寸前だった。「何でも話してくれ。俺たちは兄弟以上の関係ではないか」。ショーケンに励まされた彼は「実は、会社が危ない」と説明した。すると1週間後には「俺、事務所やめるよ」と、一人だけ泥船から逃げ出した。「彼には義理も人情もない」と話していたSの言葉を今でも思い出す。
　05年には恐喝未遂事件で逮捕された。これは一方的にギャラを求めるショーケンの脅しで、事件以来、既に3年間も芸能界を干されている。テレビはこの男のスキャンダルを恐れ、次第に手を引いた。酒のせいか呂律が回らなくなり、もはや演技者として致命的に体が疲弊していたのかもしれない。
　ショーケンの生き方は、なぜか三浦和義とかぶる。

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