佐賀県の北部、玄界灘に突き出た東松浦半島のほぼ先端に位置する呼子町。西隣には、その昔、太閤（たいこう）秀吉が朝鮮出兵の拠点とした名護屋城址（じょうし）のある鎮西町があり、ともに２００５年１月、唐津市と合併した。写真はＳ字型が特徴の呼子港。
呼子の朝市は、石川県・輪島、岐阜県・高山と並ぶ「日本三大朝市」のひとつ。元日と「大綱引き」がある６月第１土、日曜日を除く毎日、午前７時半から正午まで開かれる。呼子港東側の通称「朝市通り」には、延長約２００メートルにわたって５０〜７０軒の店が並ぶ。
呼子は、湾に沿って形成された漁業と観光の町。朝市は、大正時代の初期に始まったといわれ、当初は大漁の日などに限られていたが、物流が盛んになるに従って規模が大きくなった。１９６５年６月２７日付け読売新聞佐賀版に「当時の観光客が５０万人を数える」とあり、その盛況さは港の両側にぎっしり並ぶ家屋からも伺える。
松本清張が、１９７０年代の呼子を舞台に「渡された場面」(１９７６年発表)を書いている。
作品発表の五年前、清張は講演で唐津市を訪れ、呼子や、豊臣秀吉の朝鮮半島への出兵拠点・名護屋城跡（鎮西町）などを改めて見て回り、「いずれ、この地域を舞台に小説を書きたい」と言っており、この小説で呼子は坊城（ぼうじょう）という架空の名で登場する。
【呼子のイカ】
呼子町にイカの活き造り専門店が最初にオープンしたのは１９７３年。以来、呼子町に専門店や扱う旅館が増え、現在は約３０軒の旅館、専門店、食事処で出す。日帰り、宿泊を合わせた町への入り込み客数は、９４年に１００万人を突破し、２０００年は１１２万８０００人。活き造りで出される多くは、歯ごたえの良さと甘みに定評があるケンサキイカ（ヤリイカ）が主流。