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福岡県西方沖地震

玄界島民の避難生活…規律保ち、入浴にほっ、ペットも保護(05.03.24)


避難した玄界島民をまとめる久島謹吾さん(右)(23日午後4時51分、福岡市中央区の市九電記念体育館で)

 福岡県西方沖地震が発生して4日目。避難所で暮らす人たちの心や体の健康が心配される中、玄界島の人たちは「玄界の団結」で苦境を乗り越えようとしている。

 「さっさと布団をたたまんか!」。23日午前10時過ぎ、福岡市九電記念体育館(中央区)に、久島謹吾さん(54)のがなり声が響いた。市漁協玄界島支所の青壮年部副部長。島に残った長老たちから、「避難所をよろしく」と任されたリーダーだ。

 声を合図に、島民は乱雑にフロアに並んだ約350組の毛布を一斉にたたんだ。さらに、縦横に通路を設け、12の区画に仕上げた。あっという間に、団結が求められる“区画整理”を成し遂げた。

 前日の22日夜。体育館のステージ上に、世帯主が集まり、各家族がどの区画に入るかなどを1時間半にわたって話し合った。輪の中心には久島さんがいた。「避難時のまま布団が乱雑だと、気持ちまでめいってしまう。玄界島の復興のためにも、団結心が求められる区画整理をしたい」。そんな思いで、入念に説明した。

 「きんちゃん」と親しまれる久島さん。日焼けしたいかつい顔に責任感の強さがにじむ。市から洗濯機と冷蔵庫設置の話があった時も、「冷蔵庫は、誰のものなのか分からなくなり、仲たがいの元になる」と設置を断った。「避難所の規律には自分たちで責任を持たなければ」との思いからだ。

 区画が完成して間もなく、島に残っている長老の1人、玄界校区自治会長の寺田至さん(69)がやって来た。「みんな元気にしているだろうか」。不安を胸に、関節部が痛む右足を引きずりながら。しかし、フロアと久島さんの表情を見て安心した。

 「だれもが疲労困ぱいしているだけに、団結を保つのは難しい」と寺田さん。「年配者も多い中、よくまとめてくれている」と久島さんをねぎらった。

 久島さんは少し照れながら、「多くの皆さんのお世話になっている私たちにできる1番の恩返しは、仲良く元気に暮らすこと」と口元を引き締めた。その先に、島の復興を見据えている。

◆銭湯入浴券の差し入れ、自衛隊・玄海の湯に笑顔


「毎日お風呂が楽しみ」。避難所に設置されたお風呂で元気を取り戻す子どもたち(23日午後6時7分、福岡市中央区の市九電記念体育館で)

 避難生活を送る被災者の間に「お風呂に入りたい」という要望が強まっていることから、福岡県公衆浴場生活衛生同業組合は、被災者に銭湯を無料で提供することを決めた。同組合は「お風呂が一番困っているでしょう。ささやかながら、避難生活のストレスを洗い流す役に立てれば」と話している。

 中島勝美理事長ら役員が福岡市生活衛生課を通じて、避難所に暮らす人たちに渡してと、市内の銭湯に入れる無料入浴券(大人380円分)計約1000枚と、利用対象銭湯約20か所の営業日入り地図を贈った。

 入浴券は25日まで、毎日午後4時から同11時まで使用できる。市生活衛生課は「今回の地震では、市内中心部のマンションが被災し、部屋の風呂が使えなくなった住民も多い」としている。

 また、玄界島の住民が避難する福岡市九電記念体育館では、21日から陸上自衛隊第4師団(福岡県春日市)が始めた仮設浴場「玄海の湯」が好評を集めている。

 21日、22日の2日間で計約260人が利用した。


福岡市の職員に保護され、島から運び出されるウサギなどの小動物(23日午後4時53分、福岡市西区の玄界島で)

◆ペットと対面へ

 玄界島で23日、福岡市動物管理センターの職員らが、島の学校や個人宅に残されたペットを保護し、船で避難させた。

 飼い主らの要請を受け、玄界島保育園と玄界小のウサギ5匹とウコッケイ3匹、個人飼育のスズメ、九官鳥、ウーパールーパー各1匹の計11匹を保護した。ウサギとウコッケイは市動物園で預かり、他のペットは、避難先の市九電記念体育館に運ぶ。


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