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近代化遺産を歩く

人工島 初島

2008年03月18日

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 ■海にプカッ 炭鉱の“空気穴”

 大牟田市の諏訪川河口から漁船に乗り込む。ベタ凪(なぎ)の有明海を北西へ10分余、初島の船着き場に着いた。97年の三池炭鉱閉山後、建物はすべて撤去され、コンクリートの基礎だけが残る。周囲はセイタカアワダチソウの枯れ草が生い茂る。

 初島は直径約120メートルの円形=写真、森下東樹撮影。海底へ延びた坑道の通気用に三井鉱山が51年に建設。国内炭鉱初の人工島で、「昭和の国造り」ともてはやされた。深さ約190メートルの竪坑を掘り、直径約5メートルの大型ファン2機で坑内の空気を排気筒から外に排出していた。

 さらに約5キロ沖合にあるもうひとつの人工島、三池島は、渡り鳥ベニアジサシの繁殖地として有名になった。三井鉱山は2年前、二つの島などの無償譲渡を市に申し入れたが、市は「維持管理に億単位の金がかかる」と首を縦に振らない。

 初島は、干潟に金網を敷き、石垣を積み上げてつくった。その石垣伝いに島内を歩いて一周できる。ノリの養殖畑や沿岸の旧有明坑竪坑櫓(やぐら)など、美しい光景が広がる。石炭積み出し港だった三池港開港から100年。石炭産業の盛衰を見つめてきた二つの島の行方は定まっていない。
(大牟田市初島)

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 「近代化遺産を歩く」は今回で終わります。ご愛読ありがとうございました。

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