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しつけ・家庭教育に関する記事

2008年3月12日

私の子育て講座=地域活動で子どもを知る 読み聞かせやミュージカル
 加地良光さん

 ●加地 良光さん(43)福岡県小郡市 TVQ九州放送アナウンス部長

 ひざを抱えて、前のめりになって聞き入る子どもたち。子どもの視線を一身に集めながら絵本をめくる。淡々と、よく通る声が教室に響く。

 福岡県小郡市ののぞみが丘小学校。この日は出勤前の午前8時半、絵本の読み聞かせボランティアで同小を訪れた。

080312kouza.jpg 現在、中学1年生になる長女(13)を持つ。ボランティアは、長女が同小の4年生のときに始めた。仕事に追われ、家庭を顧みない時期もあって「子どもと接するなかで、自分の生き方を見せなければ」と活動に参加した。言葉でニュースを伝えることが仕事だが「子育ては言葉だけで伝えられないことがある」。

 あいさつや掃除など、日常のささいな場面でもそう痛感するという。

 読み聞かせ以外にも地域の活動に参加している。昨年は、同市で一般市民によるミュージカルの企画運営に駆け回り、長女と一緒に舞台にも立った。ミュージカルのテーマは「いじめ問題」。公演前に、いじめを苦に長男が自殺した同県筑前町の森美加さんを招き、講演会も開いた。

 「学校でつらいことがあっても、家族に話せなかったことがある」

 一緒に講演を聞いた長女がその夜、打ち明けた。聞けば、妻も自分も仕事に忙しかったころ。娘の異変に気づけなかった。そうしたこともあり、親子でミュージカルに参加することで「深く話す機会ができた」ことが何よりの収穫だった。

 仕事では、教育関連の取材も多い。フリースクールや児童福祉施設にも足を運ぶ。親の過干渉、夫婦の不和、地域のつながりの希薄化…。「大人社会のひずみやもろさが、そのまま子どもに悪影響を与えている」。取材で感じた思いが、地域活動に取り組む原動力となっているのも事実だ。

 「とはいえ、いまの自分は圧倒的に仕事偏重ですね」。仕事と家庭のバランスを問われると苦笑いした。アナウンサーの同僚にも、読み聞かせボランティアへの参加を促すなど家庭や地域での経験が職場での取り組みに着実につながっている。

 「家庭や地域に向き合うことで、仕事に生かせることが見えてくるはず」。父親たちにこんなエールを送った。 (小郡支局・田中直子)

【写真】地元の小学校で絵本の読み聞かせボランティアをする加地良光さん

=2008/03/12付 西日本新聞夕刊=