公設事務所を紹介します
倶知安ひまわり基金法律事務所(北海道)
所在地:虻田郡倶知安町南1条東2丁目4番地7 ベルウッドビル3階(TEL:0136-21-6228/FAX:0136-21-6229)
開設
2005年1月7日
初代所長
宮原一東(56期) 2005年1月7日〜
2代目所長
岡室 恭輔(58期) 2008年3月1日〜 現在
人口
札幌地方裁判所岩内支部管内人口…63,730(2005年10月末現在)
倶知安町人口…16,174人(2005年10月末現在)
交通
自動車…小樽まで1時間半ほど(約60キロメートル)
札幌まで2時間ほど(約90キロメートル)
新千歳空港までは2時間から2時間半ほど(約110キロメートル)
- 宮原弁護士から事務所の紹介
- 公設事務所開設に至る経緯
私はやりがいのある仕事をしたいと考え、また、困った人の手助けをできる弁護士の仕事に憧れを感じて司法試験を受験しました。2001年10月に司法試験に合格したのですが、そのころ、紋別公設の初代所長の松本三加弁護士を取り上げたテレビ番組(「街角の弁護士たち」という番組だったと思います。)を見ました。テレビを見て、松本弁護士が非常に活き活きと仕事をされていること、弁護士過疎地では現在も法的サービスを受けることができない人が多くいる現状を知り、公設事務所の弁護士が自分の描いていた弁護士像に近いなと感じました。また、私はこれまで都会ばかりで生活していましたので、自然の多い地方で生活することへの憧れもありました。
司法修習中はどのような弁護士になるか色々と悩みもあったのですが、公設事務所向けの様々なシンポジウムに出席し、公設事務所弁護士になりたいという思いを徐々に強くしていきました。その後、地方の公設事務所への派遣を前提にした東京のウェール法律事務所に就職を希望し、2003年10月より勤務を開始することにしました(第二東京弁護士会登録)。ウェール法律事務所の青木信昭弁護士からは、1年ないしは1年半を目途に地方の公設事務所へ赴任することを前提として、事件処理のことや事務所経営のことなど色々とご指導いただき、多くの経験を積ませていただきました。ウェール法律事務所には様々な専門分野を持たれた先輩弁護士が何人もおりますので、色々とご指導いただきました。また、ウェール法律事務所には、同期の碓井啓己弁護士(現新庄公設の所長)も在籍しておりましたので、互いに切磋琢磨することができ、弁護士登録1年目を充実して過ごすことができました。
房川樹芳弁護士のご好意で、2004年10月から12月まで、札幌市内の房川樹芳法律事務所で執務させていただき、開設の準備をさせていただきました。その間に、札幌の弁護士の方と交流をもつこともできましたし、採用した事務員の研修までしていただき、大変助かりました。事務員は、事務所開設後も房川事務所の事務員に色々と相談しておりますので研修をさせて頂きとてもよかったと思います。また、札幌の地域司法対策委員会の方々は、真冬の朝早くから事務所開設準備の打ち合わせを繰り返すなどして、事務所の開設に尽力して下さいました。
このように多くの方々の支援があって、2005年1月17日に倶知安町に公設事務所を開設することができました(開所式は1月11日)。
- 倶知安の紹介
(1)場所
倶知安は小樽から南に60キロメートルほど南にあり、スキーで有名なニセコアンヌプリを始めとするニセコ連峰と羊蹄山(蝦夷富士)に囲まれた山麓の小さな町(人口15,000人余り)になります。北海道庁の後志支庁が設置され、後志地区の中心的都市になります。ちなみに後志地区だけで山梨県と同じくらいの大きさのようですから相当な大きさです。倶知安にはJR函館線の駅がありますが、2〜3時間おきに一本しかありませんので、乗用車での移動が中心になります。小樽までは乗用車で1時間半ほど(60キロメートル)、札幌までは2時間ほど(約90キロメートル)、新千歳空港までは2時間から2時間半ほど(約110キロメートル)といったところでしょうか。結構遠く感じるかもしれませんが、信号がほとんどありませんので、ドライブはさほど苦痛にはなりません。
(2)雪国
倶知安の年間総積雪量は毎年10メートルを超えます。しかもサラサラのパウダースノーです。倶知安町民は、倶知安の雪を世界レベルのものと自負しておりますが、実際に、多数の外国人(オーストラリア、韓国、中国など)がパウダースノーを求めて倶知安(ニセコ地区)に遊びに来ており、人口わずか15,000人の倶知安が国際都市の様相を呈してきております。せっかく雪国で生活することになったので、開設直後から倶知安町役場のスキー部に入れさせてもらいました。執務終了後(アフターファイブ)や週末に、スキー部のメンバーや友人たちと滑るのですが(指導を受けるのですが)、とても爽快で気持ちのよいものです。
(3)温泉
倶知安(ニセコ地区)はたくさんの温泉があることでも有名です。自宅から乗用車で2〜3分の倶知安温泉には毎日のように行っておりますし、20〜30分圏内にはニセコ昆布温泉、ニセコ五色温泉、ニセコ東山温泉、ニセコ新見温泉など源泉かけ流しの名湯が数え切れないほどたくさんあります。
仕事が終わった後、家族で温泉に浸かりに行くことが日課となっています(温泉後仕事に戻ることが多いですが……)。
(4)その他
ラフティングはスリル感と楽しさがあります。友人や先輩たちと何度か楽しみましたが、童心に帰ることができます。GWころは雪解けの水で増水するため、さらに楽しいようです。近々是非チャレンジしたいと考えています。
また、食事がおいしいです。特に魚介類と野菜果物がおいしいです。積丹のウニは臭みがなく甘くておいしいですし、野菜もおいしいです。隣村の真狩村にマッカリーナというフレンチレストランがあるのですが、そこの料理は特にお勧めです。メロンと言えば夕張メロンが有名ですが、当地の「らいでんメロン」もとてもおいしいです。しかも東京よりはるかに安いです。昨年は、これまでの人生で食べたのと同じくらいたくさんのメロンを食べました。なんて贅沢な生活をしているんだろうと思ったこともありました。
- 倶知安での業務
- 最後に
この記事を読んで、公設事務所に興味を持たれる方が増えればとても嬉しいです。また、倶知安やニセコに興味がありましたら、是非遊びにいらして下さい。
最後に、私が忙しく仕事ができているのも、充実した生活ができているのも、公設事務所という制度があるからです。公設事務所の制度設計をされた方々、ひまわり基金を支えてくださる皆様方(全会員の皆様)(地方自治体・裁判所・検察庁)に深く感謝しております。誠実に業務を遂行することで、ご恩返しをしたいと思います。
(1)事件の種類など
公設事務所の多くは債務整理事件や家事事件が受任事件の半分以上を占めているようですが、当事務所もその例に漏れません。
私は、過払案件については1円でも多くのお金を消費者金融から取り戻すことをモットーにしております。私が来る前は倶知安のような田舎町から東京などの消費者金融にお金がどんどん流れていたと思うのですが、過払金回収によって、その流れを変え、倶知安のような田舎町にお金を取り戻すことになっているのかなと考えています。過払金回収によって倶知安の地域経済の活性化に少しでもつながればと考えております。
そのほか、交通事故や労働事件など様々な事件を受けています。私は、労働事件、消費者事件にも関心をもっていますので、今後はそれらの事件をより積極的に受けていきたいと考えています。
当事務所は、正職員3名、パート1名の4名です。事務所開設当初から雇用している事務員はリーダーシップがあり、また、思いやりのある方ですし、その他の方も誠実な方ですので事務所の雰囲気は明るいものとなっていますし、分からないことを助け合う雰囲気になっています。事務員が意欲的に勤務してくれているので、とても助かっています。
ただし、事務員の意欲と頑張りだけに頼っていては限界もありますし、事務員も疲れてしまいます。利息制限法の引直計算を外部業者に委託するなど事務の効率化を推し進めているところです。
なお、当事務所では事務員の残業は基本的にありません。
(3)裁判所
倶知安には裁判所はありません。最寄りの裁判所は、倶知安から26キロほど離れた岩内町にある札幌地方裁判所岩内支部になります。地裁には裁判官は常駐しておらず、小樽から填補でお二人が月に一度ずつ来られます(破産家事事件の裁判官と民事刑事事件の裁判官のお二人です。)。また、簡易裁判所の裁判官お一人が常駐されています。
裁判所は、私の赴任を前向きに受け止めてくださっています。先日、岩内の裁判所は、当事務所の事務員と裁判所職員との協議会をしてくださいました。小規模庁だからこそできる顔の見えるお付き合いをさせていただいています。
私の赴任前は岩内に管轄がある事件でも、検察官は小樽に起訴していました。しかし、最近は岩内に起訴してくれることも多くなりました。倶知安に事務所を開設したことで、本来あるべき姿に戻ったと嬉しく思います。
少し、管轄の問題点を指摘します。後志地区のうち寿都町と黒松内町と島牧村は函館地裁管轄になります。一般事件は応訴管轄を担って地裁岩内支部に提訴して受けつけてもらっていますが、破産や再生事件は函館地裁に申立せざるを得ません。函館地裁は、破産事件について全件審尋するようです(しかも弁護士の出張を要求する)ので、困っています。
(4)事件処理で生じた悩みなどの解消法
倶知安には法律書のある図書館はありません。そこで、大量の書籍、判例ソフトは自分で備えなければなりません。ちなみに、事件処理で生じた悩みなどは友人の弁護士に相談しています。電話するだけで色々と不安が解消しますし、ストレス解消にもなります。また、公設事務所のメーリングリストをはじめ様々なメーリングリストが事件処理の解決にとても役立っています。
公設事務所を開設しただけでは、事務所の存在が地元の人にすぐに知れ渡るわけではありません。何らかの広報活動をしないと相談者は公設事務所までたどり着けません。当事務所も開設当初は相談者が少ないままでした。
私は、たまたま倶知安町役場の広報担当の方と知り合うことができましたので、それを機に、倶知安町をはじめ後志支庁の幾つかの町村に毎月コラムを連載することをお願いできました。コラムを見て事務所を訪れる方は多く、コラム連載の効果はとても大きいと感じています(電話帳よりもはるかに効果は大きいと感じています)。
札幌弁護士会では五つほどの委員会に配属されておりますが、札幌まで2時間ほどかかりますので、委員会にはあまり出席できていません。ただし、地域司法対策委員会はなるべく出席するようにしています。委員会の後の飲み会を楽しみにしている面もあります。委員会の先輩弁護士の方には、「すすきの」の寿司屋などに連れて行っていただくなど色々とお世話になっております。色々とお話を聞くことができ、とても勉強になりますし、楽しい時間を過ごすことができております。