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2008年3月22日

 もう撤去されたかもしれないが、上海空港で過敏な金属探知機に出くわしたことがある。服の小さなファスナーにも反応して警戒音を連発され、下着姿での出国検査が頭をよぎるほどだった

上海の知人によると、旅行の手引に書かれるほど有名な機械らしく、ころあいを見て適当に「握らせる」のが簡単な攻略法と言われた。厳格な検査という建前と、手心次第という本音が、天と地ほどかけ離れた国であるらしい

いま、チベット自治区の境には、過敏な探知機のような武装兵がいて、報道陣を締め出している。いや、国全体が探知機と化し、何かが国の内外に漏れるのを恐れている。経済発展という金ぴかの衣の下にのぞくのは、後を絶たぬ政治腐敗か、貧富の差の増大という病弊か、一党独裁権力の暴走か

北京五輪を政治化させるな、と中国高官は言うが、政治利用の例は幾らもある。立派な建前の間から国威発揚という本音が聞こえてくる。「中華」の国の威信をかけた五輪成功まで、探知機の音が鳴りやむことはないのだろう

監視の目を排除した自治区では、何が進んでいるのか。心痛むことばかりが思い浮かぶ。


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