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【外信コラム】ソウルからヨボセヨ ソウル大使館物語
ソウル駐在の有力国大使館の中で日本大使館ほどみすぼらしいところはない。政府庁舎に近い中心部ではあるが、人目につきにくい路地裏(?)にあり、5階建ての小さくうす汚いビルでまったく見栄えがしない。それに反日デモに備え地元警備当局による警戒が厳重だから簡単に近づけない。いかにも雰囲気が悪い。塀をはさんで隣が小さなトンカツ屋などという風景も他の大使館にはない。
日韓の歴史的関係から昔は「目立たないように」という配慮はあったようだが、もうそんな時代ではない。あれでは韓国への影響力や“経済大国”にそぐわない。まず大使館を訪れる韓国人がそのみすぼらしさに驚く。在韓日本人の間では「あんな姿だからバカにされてデモが押しかけるのだ」といった声さえある。それに比べると中国はしっかりしている。ソウルの銀座ともいうべき繁華街の明洞(ミョンドン)に24階建ての新大使館を建てることになったのだ。
この場所は19世紀末、日本と日清戦争を戦い負けた清(中国)の公館があったところで、韓国に対する“監視役”の袁世凱は長くここに陣取った。日本の韓国支配が終わった1945年以降、中華民国(台湾)大使館として復活したが現在は中国の所有になっている。3年後にはロッテ百貨店の前、明洞の入り口に威容がお目見えする。(黒田勝弘)