2007年12月08日

民主党・小沢一郎の中国詣を分析する。政権少数派「共青団閥」の歓迎を受けただけか?

民主党・小沢一郎率いる民主党国会議員40数名を含む約450人が中国を訪問した。当初の予定では「1000人規模」を想定していたから、盛り上がりに欠けた訪中となった面は否めない。

12月8日付け日本経済新聞は「小沢氏、胡・中国主席と会談。政党交流強化で一致。懸案は触れず友好演出」と題する以下の記事(抜粋)を掲載した。

1.民主党の小沢一郎代表は7日、北京の人民大会堂で中国の胡錦濤国家主席」と約30分会談し、環境・エネルギー問題や北朝鮮の核問題などでの日中連携の重要性で一致した。さらに、民主党と中国共産党による政党間交流の強化でも一致した。

(民主党の説明によると、胡主席は日中関係について以下の発言を行った。)

(1)ここ数年は改善し、発展する勢いだ。互恵関係の強化は環境とエネルギーなど地球規模の問題に共に立ち向かうのに役立つ。

(2)防衛面での対話も進み、北朝鮮の核問題についても連携が進んでいる。

(小沢氏は以下の発言を行った。)

(3)両国の友情を深めることは人類史的意義がある。私も力及ぶ限り努力したい。

2.双方が友好ムードを演出した格好で、胡主席が約450人の訪中団全員と写真撮影。同行国会議員40数名全員との握手に応じた。


以上を概観するに、宗主国中国王朝皇帝陛下(胡錦濤)を表敬訪問し、皇帝陛下から「お言葉」を頂戴して写真撮影の機会を与えていただいたから、民主党の同行者400人も、さぞ感激で身が震えたのではないか。写真は生涯の記念品として神棚に飾るのではあるまいか。さらに臨時国会をサボって同行した民主党国会議員40数名は、皇帝陛下から直接握手をしていただいたから、一層「親中国色」を強めたのではないか。

この姿を見るとき、1400年ほど前、聖徳太子が「遣隋使」を派遣したときの「日出づる処の天子、日没する処の皇帝・・・」なる誇り高い態度を想起する。我が国は1400年前から中国歴代王朝とは対等な関係を保持すべく、さまざまな圧力を排除してきた。(足利3代将軍義満による朝貢外交の一時期を除いて。)

(前置きはこの位にして、論点を整理する。)

第1の疑問(民主党・小沢一郎に対する応接は胡錦濤閥(共青団系)だけだった?)

中国共産党中央指導部(政治局常務委員会)の勢力図は、江沢民・上海閥と曾慶紅・太子党閥が9人中6人、胡錦濤閥(共青団系)が、胡錦濤と李克強の2人、中立が温家宝という構図だ。つまり、胡錦濤閥(共青団系)は最高指導部で少数勢力に過ぎない。

第17回中国共産党大会で、3階級特進して政治局常務委員になった李克強は、若かりし頃、小沢一郎宅にホームスティした経験があるという。小沢一郎が前回の訪中時、わざわざ足を伸ばし「遼寧省党委書記であった李克強を訪ねた」ことがあった。当時、李克強は胡錦濤の後継者と喧伝されていたから、小沢一郎としても「旧交を温めることにした」のであろう。

「現実は小説よりも奇なり」としたもので、胡錦濤の後釜には、太子党の習近平が座わることになった。胡錦濤が派閥闘争に敗れたため、習近平を後継者に「押し付けられた」のである。今回の民主党訪中は、中国共産党指導部における派閥闘争の決着がついた段階でなされた。だから、胡錦濤閥(共青団系)の李源潮政治局委員兼党中央組織部長だけが応接したという訳だ。

本日(12月8日)訪中した二階俊博自民党総務会長は、上海閥のカ慶林政協主席と会談するという。カ慶林は江沢民・上海閥の重鎮で、あわや「汚職の嫌疑」で失脚する寸前であったところ、第17回党大会で「江沢民・上海閥と曾慶紅・太子党閥」が勝利したから生き残ることができた。現在は以前にも増して元気はつらつ。人民日報の紙面に登場する機会も多くなった。地獄から蘇生したという心境であろう。

我が国の親中国派筆頭、野中務、同人の子分古賀誠、二階俊博は、江沢民・上海閥人脈とつるんでいる。「親亀が浮かぶと小亀も浮かぶ」ということで、最近、古賀誠や二階俊博の顔色に生気が戻ってきた。つまり、「中国とのウラ折衝は俺に任せておけ」という雰囲気なのだ。今回、二階俊博が訪中して根回しする課題として「東シナ海における日中共同の石油・ガスの採掘事業を初め、福田総理訪中の地ならしをする」という。本来、外務省所管である事前折衝を、個人的人脈で行うというのだ。人治国家中国であるから、公式ルートよりも「非公式ルート」が効き目があるとはいえる。

以上、民主党・小沢グループが少数派である「胡錦濤閥(共青団系)」と、自民党親中国派が、多数派である「江沢民・上海閥」とつるむことになった。中国共産党指導部と我が国の「親中派の面々」が、それぞれ徒党を組んで利権に群がり始めた。おぞましい限りだ。


第2の疑問(なぜ、胡錦濤は「安倍晋三による日中氷解の功績」を示唆したのか?)

小泉内閣の5年で、ガチガチに凍結していた日中関係は、民族派又は真正保守勢力の希望の星、安倍晋三が「君子豹変して訪中した」から、中国側は「氷を割ってくれた」と安倍前首相に感謝した。その後、温家宝首相が来日し「氷を溶かす旅」と称したことは記憶に新しい。

安倍内閣の1年は、中国にとっては「中国との互恵関係を発展させ、防衛面での対話交流を促進してくれた」というプラスイメージであろう。おそらく、胡錦濤・温家宝指導部は「安倍内閣がさらに数年続いてくれる」ことを念じ、安倍内閣と連携して「強固な日中関係を築く」と構想していたはずだ。

だが、安倍晋三の突然の病状悪化による政権投げ出しで、当初の予定が狂った。だが胡錦濤は「(中日関係は)ここ数年は改善し、発展する勢いだ」と述べて、安倍晋三の功績を暗示した。現在でも田中角栄を敬い、娘真紀子を特別扱いにするのも「井戸を掘ってくれた恩人は忘れない」という中国文化の伝統であろう。

12月7日、安倍前首相は山口県庁で記者会見し「胃腸の機能も回復し、体重も首相就任前の水準に戻った」と回復ぶりをアッピールして、政治活動再開を表明した。

安倍晋三本人は「民族派又は真正保守」の看板を掲げて再出発したいとの存念であろうが、胡錦濤・温家宝指導部が「安倍取り込み」に動くかもしれず油断はできない。


日本列島の地政学的重要性や我が国の経済力・技術力など、米国、中国、ロシア、インドほか外国にとって「垂涎の的」なのだ。だから各国は「日本取り込み」に動く。我が国が「多角的自主外交」を貫くのも大変だ。三角関係どころか、4角・5角関係を円滑にこなす必要がある。

政治家各位が、それぞれ「親米」、「親中」、「親露」、「親印」など、いろいろ専門分野を持つことは日本の国益にとって、必ずしも「不都合」とはいえない。だが、専門分野を持つと、当該国との人脈ができて、「我が国の国益よりも当該国の利益を優先する」可能性が出てくる。外務省チャイナスクールの面々が、我が国の国益よりも「中国の国益第1で動く」といわれる如く、知らず知らず「相手国に取り込まれる」危険がある。

この危険を回避するため、政治家各位が自戒するのはもちろん、マスコミや国民大衆が、政治家の行動に目を光らせ、「逸脱しないよう」監視すべきだ。

人間は「カネ」や「女」や「名誉」に弱い動物である。抗体のない真面目な人物であればあるほど誘惑に弱い。自衛隊の諸君が「中国の女スパイに篭絡され、機密情報を売り渡す」のも、「女遊びをしたことがない」純情な資質に起因するものだろう。

「精神訓話」で、危機を乗り越えることは困難だ。「日頃、女にもてない自分」が急に女にもて出すことは、誰しも異常な事態と認知するであろうから、上司又は同僚に気軽に相談できる体制を整備しておくべきだ。そうすれば「深みにはまる前」に男女関係を清算できる。

「親米・親中・親露・親印ほか」専門分野の課題で、他分野の専門家と日頃から意見を交換する等して、「第三者の視点」で、自己の言動を点検すべきであろう。そうしないと、いつの間にか、焦点がずれ「日本の国益」という原点を喪失する危険が高い。

先般、中国で「日本に軍事機密を漏洩した」との罪で死刑に処せられた政府高官がいた。我が国だけでなく、中国においても「外国に取り込まれて国益を見失う」役人がいるという証だ。

マスコミが政党の代理人となっている現状(朝日が民主、読売が自民)は好ましいものではない。マスコミは、政治家各位が「敵の手に落ちないよう」監視すべきだ。

国民大衆も「鵜の目、鷹の目」で、問題の多い政治家を監視する必要がある。政治家が「売国行為」に走らないよう見張るべきであろう。








白髪爺 at 22:26 │Comments(0)clip!民主党  | 胡錦濤政権

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