ベンは迷子になりました
冬の寒い夕方でした
散歩の途中で自転車に驚いて
急に走り出しちゃいました
そのまま多摩川を走ってどっかに行っちゃいました
リードを付けたまま走って行っちゃいました
僕はすぐ追いかけました
ドンドン・ドンドン追いかけました
追えば追うほどベンは走っていきます
そして、とうとう見えなくなりました
僕は一生懸命探しました
いつもの散歩コースより上流まで探しました
でも見つかりません
あたりはだんだん暗くなります
臆病なベンは、人になつきません
人を見ると逃げ出しちゃいます
風で木が揺れても逃げ出します
僕以外の人には近づきません
決して人を噛む事はありません
でも心配です
僕はあきらめて一旦家へ帰りました
その夜、雨が降り出しました
ベンは今頃どこで何してるだろう
暗くて雨の中寂しいだろう
夜の餌も食べていません
お腹もだいぶ減ってることだろう
いつ帰っても餌を食べられるように
僕は餌と水を玄関に用意しました
僕は心配で眠れませんでした
次の日の朝早くベンは帰ってきました
玄関で餌を食べる気配で
お母さんがベンを迎えに出ました
僕も迎えに出ました
ずぶ濡れで帰ってきました
お腹を減らして帰ってきました
首輪は外れていました
どこかでリードが引っかかって
動けなくなってしまったのでしょう
運よく首輪が外れたから帰ってこれたのです
ベンも僕もとてもうれしかった
ベンは迷子になりました
3歳の真冬の寒い朝でした
雨がしとしと降っていました
上手にウンチが出来ないので強く叱ったら
すねてどっかへ行っちゃいました
多摩川を上流へ歩いて行っちゃいました
僕は一生懸命追いかけました
ベンはどんどん行っちゃいます
僕はベンに追いつけません
ベンは呼んでも振り向きません
そのままどっかへ行っちゃいました
朝のご飯も食べずに行っちゃいました
僕はあきらめて一旦家へ帰りました
あらためて自転車で多摩川を探しました
歩いて川原を探しに行きました
ベンのいなくなった上流へ探しに行きました
竹やぶの中も探しました
林の中も探しました
ベーン・ベーンと呼びました
でも返事はありません
いったいどこまで行ったのだろう
散歩コースしか知らないのにどこまで行ったのだろう
いつ帰ってきても食べられるように
玄関に朝ごはんの餌と水を用意しました
何度も多摩川の川原へ様子を見に行きました
僕は何度も泣きそうになりました
でもベンも寂しいから我慢しました
夕方お巡りさんにベンが迷子になったと届けました
夜ベンは帰ってきました
僕が夕飯を食べてたら
玄関でベンの気配がしました
ずぶ濡れになって帰ってきました
ベンの体はひどく冷えていました
毛がかなり汚れていました
すぐ暖めてあげるね
僕はベンと一緒にお風呂に入りました
毛の汚れを取ってあげました
ベンは気持ち良さそうに僕に体を預けました
ベンは一杯暖まりました
ベンも僕もとてもうれしかった
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