クリムゾン・ルーム公式サイト CRIMSON ROOM

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特別企画 N島リポート"

特別企画 N島リポート

第20回 立ち読み、お預けに

date: 2008年03月21日 | text : N島 縦 |RSS

今日は、まず‘詫び’を入れなきゃならない。
前回のリポートで予告した‘立ち読みコーナー’だが、事情があって掲載が遅れているようだ。20日、俺にしては珍しく数度サイトを開いたが、それらしいものは無い。

俺は深夜の日付が変わった頃、I川今日子に電話した。
「あ、あたしもいまタテさんに電話しようかと……」
「声が聴きたくてか?」
……それは、俺のほうだ。
「あはは。それもあるけど、‘立ち読みコーナー’の件ね。サイト内にそのページを作るのに、データ加工の問題やなんかで各社で調整が間に合わなかったみたいなの」
「そうか。期待して待ってるぜ、みんなきっと」
「そうね。前回のレポートで予告しちゃったもんね」
「今晩も、ウチの店のキャバ嬢から『載ってなーい』ってクレームだよ。俺に言われても、困るんだけどナ」
「いえいえ、タテさんはもう、立派な高木敏光のスタッフということになってるの。責任もって説明とお詫びをお願いします」
「ちっ、しょうがねえなー」

……そういうことなんだ、諸君。
すまんが、もうしばし待ってくれい。
週明けくらいには何とかなる模様だから。
ここは、ひとつI川今日子に免じて許してやってくれ(意味不明だな)

「それからね、やっぱり‘予約がお得’よ」
「んー?」
「『クリムゾン・ルーム』を買うなら、予約がお得!ネットでも書店でも全国のリブロ65店舗及びオンラインショップ・ロゴスにて、とってもお得なキャンペーン中なんです。リブロ及びロゴスでご予約いただいた方には、もれなく予約特典『高木敏光・未発表オリジナル・コンテンツ』をプレゼント! リブロ及びロゴスで、いましか手に入らない、限定予約特典ですよ。ぜひご予約ください!」
「おまえの声で聞くと、まるで通販番組だな」
「えへへ、うまいでしょ。これ、公式サイトの予約ページを読んだだけなんだけど」
「その‘オリジナル特典’ってのは、なんなんだ? もったいつけずに教えてくれよ」
「ファンなら大喜びするものよ。あとはね、サプライズでタテさんにも協力してもらうかも」
「なにっ!?聞いてないゾ。そんなハナシ」
「……あれ?そうなの、高木さんが、タテさんにも頼もうかな? って」
「……なんだぁ?それ。俺の生写真とか、等身大フィギュアとか、か?」
「きゃはは、タテさんフィギュア、ウケるわ! 高木さんのならわかるけど……」

確かに、発売が間近になっていろいろと周囲が騒がしくなってきた。
先日から限定で配られている例の‘ゲラ本’を手に入れた人々が、続々とブログ等に感想をUPしているのだ。
I川がそれらのアドレスをまとめて送ってくれた。

寄せられた感想を読んでみると、概ね好意的なものが多い。
──というよりも、この「クリムゾン・ルーム」という小説に何か強烈な磁力を感じ、理由ははっきり説明できないが、とにかく惹きつけられている、という読者が多い。曰く
「こんな、小説は読んだことがない」
「こういう主人公ってあり?」
「でも読むのをやめられない」
「あっという間に読んでしまった」
「もういちど読み返そうと思う」
「現実と虚構、日常と非日常、欺瞞と慈悲、感情と理性、といった相反する概念の境界線を行き来するところに魅力を感じる」等々……。
そして創造する源泉となる「魔物」に対する同業者からの見解、意見など。
読んでいて楽しいし、驚くほど高木の意図を言い得ている人もいる。
おそらく高木敏光も、自分の書いたものがどのように読まれ、受け入れられているのか、ニヤニヤしながら読んでいることだろう。

これらの有難い書評、感想を読んでいて思うのは、これはそのまま高木敏光という男の魅力にもそのまま当て嵌まる、ということだ。
多面体のごとく様々な角度から光を発する、万華鏡。いろんな開け口のついた玉手箱。
なにが飛び出すかわからないけど、必ず退屈はさせないよ。皆さんを楽しませる為の抽斗や仕掛けはいっぱいあるから、安心してこちら(高木小説ワールド)へおいで。
といった、ところだ。
しかし、古くからの友人であるこのN島は、知っている。その抽斗には、毒薬の入った小瓶も紛れているし、開けたが最後閉じ込められて抜け出せない小部屋だってあるかもしれない。
そう、ゲーム版「CRIMSON ROOM」のように。
そうして同じ苦悩と同じ恍惚を味わい、創造の魔物を飼い慣らそうとするアイツの世界に行ってみるのも、悪い経験じゃない、と思う。

俺は受話器に呟いた。
「売れるかも、な。この本」
「そりゃ、売れますよー」
I川は屈託がない。
「いや、バカ売れするかもな、と」
「すごーい。ベストセラーになったら今度は、いっぱいサイン会やらないと」
「うむ。新しい作家の誕生だ」

ここで、俺はまたジャブを打ってみた。
「ところで、今晩‘前祝い’に軽く一杯やらないか、旨いメシでもいいし」
「わい! ゴハン嬉しい。でもね、いま3月でしょ? 期末に入って、ちょっとバタバタなの。4月に入ってからでも大丈夫かな?」
くくっ。予想外のリアクション。
「し、4月? ……遠い先だなぁ。軽く、1時間でもいいんだぜ」
「ううん。せっかくのタテさんのお誘いですから、そんな短い時間ではあたしがたぶん満足できない」
「そ、そういうもんか?」

これは、前進と言っていいのか?
それとも……。

つづく

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