世界五大陸を巡る北京五輪の聖火リレーが長野市で行われる4月26日、反政府暴動が起きた中国チベット自治区などの人権状況の改善を求め、在日チベット人やその支持者らが、市内でアピールする。五輪が近づくにつれてお祭り一色になり、チベット問題が忘れられかねないとの危機感からだ。
アピールするのは、チベットに関心を寄せる県内外の支援者と、インド生まれのチベット難民2世ツェリン・ドルジェさん(34)=名古屋市。ツェリンさんは、チベットの人権問題の平和解決を目指すNGO「SFT」(本部ニューヨーク)の日本代表でもある。
計画は、聖火リレーを行う世界各国でSFTが展開する活動の一環。リレー前日の25日午後7時から、同市新田町のもんぜんぷら座でチベット文化交流会を開き、ツェリンさんがチベット問題の歴史と現状を難民体験を通じて話す。
リレー当日の26日は、「チベット問題を忘れないで」などと呼び掛ける横断幕を沿道に掲げる方向で調整中だ。
1999年に日本人女性と結婚して来日したツェリンさんは、「このままではチベット文化はあと15年で消滅する」というダライラマ14世の言葉に共鳴。自らも昨年、亡命政府があるインド・ダラムサラで、最近越境してきた難民の子どもが中国語ばかり話しているのを見てショックを受けたという。
折しもチベット自治区などで反政府暴動が拡大し、欧米諸国では中国政府の対応に批判が高まっている。北京五輪が政治問題化しつつあるが、「私たちは五輪を妨害するつもりなどない」とツェリンさん。ただ、「五輪招致の時に中国政府が公約した人権状況の改善を日本のみなさんにも忘れてほしくない」と、呼び掛けている。