【ワシントン=山本秀也】今月22日に行われる台湾の総統選挙を前に、米太平洋艦隊は19日、産経新聞に対し、キティホーク、ニミッツの空母2隻を定期訓練などの名目で西太平洋に派遣したことを確認した。派遣水域は台湾東沖とみられ、中台間で緊張が高まることを警戒した措置だ。一方、米政府は総統選と同時に実施される国連加盟問題での住民投票に重ねて「反対」の方針を示し、「台湾海峡の緊張を高める可能性がある」(ケーシー国務省副報道官)と、台湾当局にも警告した。
真珠湾の太平洋艦隊司令部は、空母に随伴する艦艇の数や、具体的な派遣水域を公表していない。ロイター通信は、米軍関係筋の話として、台湾海峡での有事に対応できる「有効な位置」としており、同海峡を艦載機の行動半径内に収める台湾東沖とみられる。
米海軍は、中国のミサイル演習で台湾海峡の軍事的緊張が高まった1996年3月の台湾総統選でも、空母ニミッツ、インディペンデンスを台湾近海に派遣していた。
現在の台湾海峡情勢について、米情報機関を統括するマコーネル国家情報長官は先月5日、上院公聴会で「最大のリスクは(中台いずれかの)判断ミスであり、制御不能の事態が起きることだ」と懸念を表明していた。台湾独立を強く警戒する中国政府は、陳水扁政権が進める「台湾」名義での国連加盟を問う住民投票に激しく反発しており、突発事態の発生を抑えることが、米による空母派遣の目的のようだ。
この住民投票について、ケーシー副報道官は19日の定例記者会見で、「不必要であり、なんの助けにもならない」と批判。さらに「国連など国家により構成される組織への台湾加盟には無益だ」と言明した。
総統選については、「だれが選出されても既存関係の枠内で協力する」と述べた。米政府の選挙不介入の姿勢を示したかたちだが、台湾の安全保障の鍵を握る米国が、投票直前に民進党政権による住民投票を重ねて非難したことは、住民投票成立の可否や総統選の行方にも影響を与えそうだ。
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