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   突然の激痛!
「隠れ胆石」1000万人の真実

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2008年3月12日放送

今回の番組について

胆石の推計患者数は1000万人。誰もが一度は聞いたことがある病気の名前ですが、その実態は謎だらけです。

小さな胆のうに大きな石がはち切れそうに詰まっていても何の症状もない人がいる一方、一度胆石が暴れ出すと、なぜか肝臓やすい臓、時には全身にまでダメージが及ぶことがあります。しかも、病気発見の切り札、健康診断でも、必ずしも見つけられないのです。

患者の多くが、持っていることにさえ気づかずに放置している「胆石」の実態を徹底解明します!

オープニングクイズ

  • 問題:胆石が漢方薬になっている動物は?
    答え:牛
  • 問題:「役に立つ石」は体のどこにある?
    答え:耳
  • 問題:アメリカで行われた45000人以上を対象にした大規模調査の結果で判明した、胆石の意外な原因は?
    答え:テレビの見過ぎ
    ※この調査では、「週に40時間以上」テレビを見る人は「週に6時間以下」の人に比べて、胆石になる危険性が3倍近くになることが分かりました。運動不足が肥満などにつながり、胆汁が胆石のできやすい状態になってしまうことが原因と考えられています。

「突然の激痛!胆石が眠りを覚ます時」

都内のある病院では、毎年400人以上の患者が胆のう摘出手術を受けています。その多くは、普段は何の症状もなく、ある時突然の激痛に襲われたのだといいます。

手術を受けたばかりのAさんもその1人です。酒屋を営むAさんは病気とは無縁の生活を送ってきましたが、ある時突然みぞおちの激痛に襲われ、救急外来で検査を受けたところ、胆石による「急性すい炎」と判明しました。

しかも発症のわずか2ヶ月前に健康診断を受けており、何の異常も指摘されなかったというのです。

「X線はバツ?透視ましょう?」

実際の健康診断の様子を見てみると、X線検査で撮影するのは「胸部」のみで、胆のうがある部分は撮影していませんでした。

そこで、胆石に直接X線を照射するとどう見えるか実験したところ、腎臓結石の場合はバッチリ見えたのに、胆石の場合は影も形も映らなかったのです。

健康診断のX線検査では、胸部しか撮影してもらえないの?

健康診断の検査内容は、健康診断を主催する企業や自治体などによって異なります。

企業が主催する健康診断の場合、その必須項目は法律に定められていますが、そこでは「胸部X線」のみが必須とされ、胆のうの撮影は義務づけられていません。

一方、市町村などの自治体が行う健康診断の場合は、どの検査を行うかは自治体が独自に定めています。なかには、胆のう部分のX線撮影や、後述する「エコー検査」を項目に入れている自治体もありますが、こうした自治体は全体の中では少数派のようです。

腎臓結石はX線に映ったのに、胆石が移らないのはなぜ?

腎臓結石にはさまざまな種類がありますが、代表的なタイプの結石の主成分は「カルシウム」です。骨がX線に映ることからも分かるように、カルシウムはX線に鮮明に映し出されます。

一方、胆石の中で「純コレステロール胆石」と呼ばれるものは、脂質であるコレステロールが主成分のため、X線には映りません。

「見えた!これが胆石の正体だ」

胆石患者の胆汁を、体温と同じ37度の状態に置いておくと、コレステロールの結晶が発生しました。しかも、日を追うごとに結晶が成長し、巨大化していきました。

胆石には種類がある

胆石には多くの種類があります。代表的なものをご紹介します。

  • コレステロール胆石: 現在日本人に最も多い
  • ビルビリン胆石: 血液の成分が固まったもの
  • そのほかの胆石: 上記以外の成分でできている、あるいは、さまざまな成分が混在しているもの

「ビルビリン胆石」や「そのほかの胆石」の中には、X線に映るものがあります。また「コレステロール胆石」も、石灰化といって成分の一部がカルシウムに変成したものはX線に映ります。

胆石を発見する方法

お腹に超音波を当てて、内部の様子を探る「エコー検査」が活用されています。エコー検査では、胆石のタイプや大きさにかかわらず、かなりの高確率で胆石を見つけることができます。最近、胆石患者が増えている背景には、エコー検査の普及が挙げられているほどです。

エコー検査は、多くの人間ドックに含まれています。また健康診断でも、希望すれば多くの医療機関で受診することができます。

胆石の最大の原因は、コレステロールの摂りすぎ

コレステロールを含む脂質中心の食生活は、胆石の最大の原因と考えられています。コレステロールが体に多く取り込まれることで、胆汁内のコレステロール量が増えたり、胆のうの働きが低下することなどが、その要因として考えられています。

胆石が引き起こす症状には、どんなものがある?

石があっても、胆のうの中にある限りは、ほとんど自覚症状はありません。しかし胆石が胆のうの外に転がり出て、運悪く管に詰まると、さまざまな症状が引き起こされます。

最も多いのは「胆のう炎」。胆汁の流れが悪くなるために起こるもので、慢性的な炎症や痛みが起こります。また肝臓も、同じ理由でダメージを受け、場合によっては肝炎や肝硬変が起こります。最悪の場合は、よどんだ胆汁の中で細菌が繁殖し、全身に回る「敗血症」という症状も起こりえます。また胆管の腸への出口でつまった場合は、すい臓から分泌されるすい液の流れが悪くなるため、急性のすい炎などが起こることもあります。

ただし、胆石が詰まっても、かならず症状が起こるとは限りません。たとえ石がひっかかっても、胆汁やすい液の流れをあまり阻害しない場合は、症状はあまり起こりません。また、一度ひっかかった石が、何かの拍子で胆のうに戻ったり、逆に腸へと排出された場合は、症状が起こっても一時的なものであることが多いと言われています。

石がひっかかる確率は約3割

胆石の中で、症状を起こさないものを「無症状胆石」と言います。

詳しい統計はありませんが、無症状胆石は全体のおよそ7割と言われています。番組ではこれをもとに、胆石がひっかかる(症状を引き起こす)確率を「3割」と紹介しています。

「あなたの食生活 たんのうしてます?」

かつてアメリカで行われた実験を紹介します。

参加者の食事を1日500キロカロリーに抑えたところ、6人中4人に胆石ができてしまいました。その要因を探るため、胆のうの動きをMRIで観察しました。すると、脂質を含んだ生卵を飲むと、胆のうは大きく収縮しましたが、脂質をほとんど含まない野菜ジュースを飲むと、胆のうがほとんど収縮しなかったのです。

胆のうの収縮度合いが、胆石のできやすさに関係する

胆のうは、肝臓から常に送られてくる胆汁を蓄え、10倍程度に濃縮してから、腸に排出しています。従って、胆のうの収縮が不十分だったり、長い時間収縮しない状態でいると、胆汁が濃縮されすぎてしまうため、胆石ができやすい状態が作られてしまうと考えられています。

朝食を食べないと胆石ができやすくなる

朝食を抜いてしまうと、前日の夕食以降から昼食をとるまで、非常に長い時間、胆のうが収縮することができません。また胆汁の濃縮は、寝ている間に特に進むことも分かっています。

夕食後12時間以上食事を摂らない生活は、胆石ができる危険性がおよそ1.3倍高まることが、大規模な調査によって分かっています。

結局、脂質の摂り過ぎは良いのか、悪いのか?

脂質の摂りすぎは、胆石の最大の原因と考えられています。一方、摂らなさすぎも確かに胆石の原因となりますが、これは極端に脂質を制限した場合にのみ問題となることです。決して「脂質を積極的に摂るほうがよい」というわけではありません。

「胆のうがんについて」

専門家によると、大きな胆石が胆のうに充満した状態を放置しておくと、さまざまな検査を使っても胆のうの様子が見えないため、結果として胆のうがんの発見が遅れることがあるといいます。

ただし、胆のうがんが見つけにくくなるのは、大きな胆石が胆のうに充満した「充満胆石」と呼ばれる場合のみです。また充満胆石の場合でも、検査によって胆のうがんが見つかることがないわけではなく、あくまでも「見つかりにくい傾向がある」ということです。

胆石のリスクファクターについて

胆石は1つの原因でできるものではありません。いくつかの要因が重なってはじめて胆石が作られます。

先生がスタジオでご紹介したリスクファクターは以下の通りです。

  • 肥満: さまざまな調査や研究によって、太った人はそうでない人よりも、胆石ができる確率が高いことが分かっています。その理由には、脂質摂りすぎの食習慣によって、胆石ができやすい胆汁であることや、胆のうの動きが悪いことが挙げられています。
  • 女性: これも多くの調査・研究によって指摘されてきたことです。女性ホルモンが関係するとも言われています。
  • 便秘: 便秘の方の中でも特に、腸の動きが衰えている場合は、胆のうの動きも衰えており、胆石ができやすくなると考えられています。
  • テレビの見過ぎ: 運動不足が肥満などにつながり、胆汁が胆石のできやすい状態になってしまうと考えられています。

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