90年代くらいまでのエロゲには、確かに「ゲーム性」があったんです。
昔のエロゲは『脱衣麻雀』が主流だった時期もあるし、アスキーから出た『カオスエンジェルス』や、エルフの『ドラゴンナイト』、アリスソフトの『ランス』とか『Only You -世紀末のジュリエット達-』とかはRPGでしたし、エルフの『同級生』は恋愛SLGで、その自由度の高さは現在の「MMORPG」を彷彿させるほどです。(それはちょっと言い過ぎかw)
姫屋ソフトの『七英雄物語』というシミュレーションRPGもあったし、PILからは『SEEK』というSMシミュレーションゲームも発売されました。
また、剣乃ゆきひろさん(現・菅野ひろゆき)が作った『EVE burst error』の「マルチサイトシステム」だとか『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の「A.D.M.S.(Auto Diverge Mapping System)」とか、それまでに無かったゲームシステムがこの頃、生み出されています。
とにかく、この頃までのエロゲは日々進化を続けていて、新しいエロゲが発表される度に「新鮮な驚き」があったように思います。(まぁ、あの頃はオレも若かったしw)
ちょっとエロゲ以外の時代背景を言うと、当時のコンシューマ機は『スーファミ』が主流で、『ドラクエ』や『FF』が出て以来、RPGがもの凄い人気で、バカ売れな時代だったんですね。(エロゲで『ドラゴンナイト』とかのRPGが売れたのは、これが原因だと思われる)
スーファミのソフトの値段も「定価9800円」で、エロゲよりも高く、「エロゲって高くね?」とか言い出すヤツはあまり居なかったと思われる時代。
しかも、PCはNECの『PC9801』が主流で「4096色中16色」しか表示できない、しょぼいグラフィック性能で、グラフィッカーは「ドット絵」を描いて「ドット塗り」をしていました。
ペイントツールなんて『マリオペイント』レベルで、「レイヤー? 何それ? 美味しいの?」な世界でした。(今それで描けと言われたらストレスで胃炎になる絵師も多いだろうなぁ…)
更に、「HDD」はまだまだ高嶺の花であまり普及してなくて、「CD-ROM」が出る前の記憶媒体は「フロッピーディスク(FD)」でした。
PC98の場合1枚辺り1.2MBしか入れられません。
ゲームの容量を増やすと「FD」の枚数も増えることとなり、「8枚組み」だとか「10枚組み」なんていうエロゲもありました。
ゲーム中に何度も「ディスクの入れ替え」が発生し、ロード時間も結構長かった。
ゲームに使う素材の中で1番容量を食うのは『絵』なので、出来るだけ色数を減らしたりして容量を減らし、枚数も少なく済むように工夫して作られていました。
それと共に「シナリオ」もあまり長くなり過ぎないように「制限」されていました。(シナリオが長くなるとイベント絵等が増えるので)
つまり、当時のエロゲは「絵やシナリオ」で他のメディアと勝負することは出来なかったんです。
じゃあ、何で勝負していたかと言うと、そう。
「ゲーム性」です。
RPGでは敵の女の子に勝つと「服が破けたりして」エロCGが見れたし、脱衣麻雀とかでは女の子に麻雀で勝つと「ご褒美」として服を脱いでくれて、エロCGを見ることができました。
このゲーム構成ならば「シナリオ」や「CG」が少なくても「プレイ時間」はある程度は(価格分ぐらいは)確保できるんですね。
RPGなどでは何度も何度も「バトルパート」が挿入されて、「レベル上げ」とかもするので、クリアーするのに数十時間は要します。
それだけ苦労してクリアーしたのですから、エンディングを見た時の喜びもひとしおです。
しかし、現在の記憶媒体は「DVD」に進化し、「HDD」も「GB単位」の大容量でPCに標準装備されるようになりました。
つまりは、作る側があまり「ディスク容量」を気にしなくても良い時代になったんですね。
だから、最近のエロゲは「CG」も増えましたし、「音声」も「フルボイス」になりましたし、「シナリオ」も全部読み切るのに「約40時間」かかるような大長編なエロゲも登場するようになりました。(同時に「シナリオ・インフレーション」という問題も生み出しました)
このPCの進化が無ければ、『Kanon』や『AIR』とかの「泣きゲーブーム」や「シナリオ重視ゲーブーム」は起きなかったと思われます。
で、この事実から何が言いたいのかと言うと、PCの進化で「長いシナリオのエロゲ」の制作が可能となり、「電脳紙芝居ゲーム(ADV)」でも十分な「プレイ時間」を確保できるようになった為、「ゲーム性」の「必然性」が消滅しちゃったんですね。
別に「ゲーム性」が無くても「数十時間」プレイできれば、ユーザーから「不満の声」が噴出しなかったんです。
それにユーザーによっては「ゲーム性はむしろ邪魔」と思っている方もいます。
「そんなモンに金と時間を使うぐらいなら、もっと「絵」と「シナリオ」を良くしてくれ」と言うワケです。
この20年間でエロゲユーザーの「求めているモノ」も大分変わってきていて「ゲーム性がありそうだから、このエロゲを買う」って言う人よりも、「ヒロインが可愛くて気に入ったから」とか「お話が面白そうだから」という理由で買う人の方が圧倒的に多い。
エロゲ会社も「企業」ですから1本でも多くゲームを売らなきゃいけない。
そうなると「マジョリティ(多数派)」の意見をゲームに反映させるんですね。
これはエロゲ業界だけではなく、どの業界でも一緒ですので、仕方の無いことだと思います。
大多数のユーザーが「欲しがっているモノ」を作らないと、「1万本」とか「10万本」とかの売上げは不可能なんです。(汗)
エロゲ会社はエロゲを売ることでしか収入のない「中小企業」が多い為、1本でも失敗すると「即倒産」なんてこともありえるのです。
だからどの会社も「手堅い企画」ばかり通るのでしょう。(汗)
あと、メーカー側としても「ゲーム性を入れたくない理由」を、ネットで調べたことや、自分が聞いた話を織り交ぜて、箇条書きにしてみました。
●エロゲにゲーム性を入れるデメリット
・制作スタッフに「プログラマー」が増えてコストアップ。
・ゲームの仕様が複雑になり、「バグ」が増える。
・それにともない「デバッグ」期間が延びる。
・制作期間も延びるので、長期的なスケジュールとなり、またコストアップ。
・キャラクター性を表現しずらい。または表現しきれない。
・難易度が高過ぎたりすると叩かれる。逆に難易度が低過ぎても叩かれる。(調節が難しい)
・どんなにゲーム性を出しても「コンシューマ」のゲームと比べると、見劣りする。
●「ゲーム性」が忌避される理由
・ゲーム性のあるゲームをしたい人は「コンシューマ」のゲームをやる。またはすでにやっていて、わざわざエロゲーでまでやりたいとは思わない。
・「そりゃ、ゲーム性が無いよりあった方が良いのだろうけど、ヘボいのだったら最初からいらない」
・文章がつまらなければ「スキップ」で飛ばせるけど、「ゲームパート」は飛ばせない。それが「拷問」に感じる。(早く話の結末が知りたい人に多い症状)
・「ゲーム性」を強く出すと、また「エロゲにエロいらない論」になる。
・ここ数年、売れているエロゲを見ても、「10万本越え」しているのはやっぱり「ADV」。
・エロゲーは「ヒロイン(キャラクター)」や「シナリオ」「CG」が重要で、それが見たくてエロゲを買っている。そしてそれを1番表現しやすい「ゲームジャンル」は「ADV」だった。
・企画者やディレクターが「プログラマー」出身ではなく、「シナリオ」や「絵描き」出身の企画者が増えてきた。
・商業の場合、「売れること」が命題なので、「プログラマー」よりも即効性のある「有名原画家」や「有名声優」に予算を多く分配する。結果、「プログラマー」を雇う予算がなくなり、少人数で作れる「ADV」に。
・「プログラマーなんて少数じゃ大したモノ作れないんだし、経費の無駄」と思っている経営者やディレクターが多い。
平たく言うとメーカーにとっても、当たるか当たらないかは出してみるまでわからない「ゲーム性特化型エロゲ」を作るのは「割に合わない」のです。(汗)
「必然性もない」「ユーザーも求めてない」「作る側も割に合わない」という、「ないない尽くし」では、そりゃ、誰もやりたがらないでしょう。
だったら「コスト」も安く、「リスク」も少なく、「短期間」で作れる「ADV」で行こうじゃないかっていう選択になるのだと思います。
あと、資金力の無いエロゲ会社が、どんなに頑張っても「ゲーム性」では「本業」の「コンシューマ」には勝ち目が無いと考え『To Heart』などで成功した「ADV(ビジュアルノベル)」に注力して行った結果、いつの間にか「住み分けが出来ていた」とも考えられます。
オレの知る限りではこんな感じかと。
でも、オレ個人の気持ちとしては、昔あったみたいな「ゲーム性のあるエロゲ」をもう一度やってみたいし、作ってもみたいなぁ、とは思ってます。
(今すぐには無理だけど、いつかは…)
【関連】
●美少女ゲームは「ゲーム」なのか
●【ファンキー通信】「美少女ゲーム」はゲームじゃない!?
●エロゲに「エロ」と「ゲーム」は必要か
超エロゲー
エロゲーの歴史を知りたい方向け。
まぁ、好感度もお飾りだったり
ザッピングも老舗?くらいしか使ってないかも知れませんが。
やっぱりゲームの良し悪しは容量じゃないですよね。
でもアリスソフトのランスシリーズは未だに非常に売れ行きがいいですし、
(10万超えてますし)ゲーム性を求めている人もそれなりにいるとは思います
ボクはコストアップという製作側の都合の方が大きいように思いますね
アリスソフトくらいの大メーカーじゃないと作れないのかも
エロに必要なものだけを徹底していったらゲーム性が必要になった、だから入れたという感じです。
戦国ランスでいうと相手の国を落としてその領主を力づくで屈服させるというところにカタルシスを感じさせますし。あれは国盗りものでないと味わえないエロです。
ゲーム部分までしっかり作りこんであって楽しかったですね
あと、今だとドット絵やエフェクトアニメが作れる人が少ないかも
鬼畜王と戦国はおもしろいよね。
コンシューマとは違うおもしろさな感じがする。
あとは個人的にはエウシュリーもがんばってるんじゃないかと思う。
昔は、東のエルフ、西のアリスって言われていました。
もう何年もエロゲ買っていないけれど、
最近は、ゲームとしての作りは無くなっちゃったの?
今じゃ、方眼紙使って「マッピング」なんて無いんだろうなぁ・・・
昔は、PCと紙使ってゲームしていたんだけれどね。
便利になったけれど、攻略の楽しみは減ってしまったのかな?
他のゲームでもあった方がいいのにというタイトルもありますねぇ・・・。
SLGで有名なところだけど巣作りドラゴンがヒットしなかったら同人メーカーになるかとか言う話があったとかで幸いヒットしたから何とかなったとか。
なんか本末転倒になった話しだよなぁ
ドラナイIVみたいにSLG部分キツイーけど、トータルプレイ時間はそれほどでもない、という方がいいかなぁなんて思ったりします。
巣ドラはタマに取り出してはプレイしたりしますね。チップキャラがわらわら動くのが面白いし、勇者を皆殺しじゃーという倒錯プレイがやっぱり好きw
気軽に数時間でワンセッションプレイ出来る昔のゲームって時間のない今では却って好きです。
連投失礼しました。
労力に比例しない。
逆に、ゲーム性が低くてもそこそこ売れる。
多分その所為で分母が増えたので、ゲーム性があるゲームの比率そのものが下がったんだと思います。
数自体は、まだそこそこありますよ。
ゲーム性重視しすぎて発売後にパッチ出しまくるのも困る話ですが・・・
と言うか、エロゲって発売後のパッチ多過ぎじゃない?
ネットが普及する前に買ったゲームでパッチを当てる必要が有った事自体稀だった気がする。
プログラムが簡単なADVになった癖にバグが増えると言うのは怠慢と言えるのではないだろうか?
こういう観点は初めて見たので、なるほどと思いました。
こういう話になると懐古的な「最近の若い者は」という論調になりがちなので、そういう感情を排して考えられる議論の方向性を歓迎します。
>「シナリオ重視ゲーブーム」は起きなかったと思われます。
貴様、瑠璃子さんを愚弄したな?ヽ(`Д´)ノ
楓ちんや、千鶴さんにも謝罪しる!
1.44MBが使える様になったのは3.5インチが主流になってHDDにインストールする形のゲームが殆どになってからかな。
しかし最近のエロゲーはどこかで見た様な設定やシーンばっかだね。絵やアングルが違うってだけで、シナリオも先読めちゃうのが多いし。
瑠璃色の雪を製作してたアイルは、同時期に出た下級生をアシスタントにプレイさせて似てるイベントは極力排除したらしいが、今現在そんな気概を持ってるメーカーは少ないし、逆に受け良かったイベントをパクる方が多い気がするね。
女の子のことを考えてあげないといけないけど、コンプするには
鬼畜にならねば。。
アリスソフトは文章が好き。おもしろい。
あと戯画のシューティングと格ゲー。エロがかかってると燃えるな。
ヴァリアブル・ジオとスチームハーツだっけ。
動きが固いけど、エロ関係なくプレイしたりする。
今ではエロ関係なくプレイする。
だぁ。。
アーツ系の会社が同じプログラムでシナリオとっかえ
ひっかえやってたあたりから今の状態が決定付けられたのかなぁ。
私としてはいわゆるビジュアルノベルがぐんと伸びたのはtoHeartの前の雫→痕のコンボだと思うんです。
その頃はDOSベースで、しかもフォントが自前だったのでデータ容量云々はあまり関係ないかなぁと。むしろビジュアルノベルのヒット直後に開発/プレイ環境がDOSからWinへ移行したことが効いている気がします。
培ってきたDOSべったりのプログラミングや絵の技術(正気の沙汰とは思えぬ素晴らしいタイルパターン等)が一度リセットされ、振り出しに戻ったときにビジュアルノベルはとっかかり易かったのかな、と。
WinだったらLeafみたいにフォント自前で作る労力はいらないですしね。
私はLeafフォントが好きだったのですが、あれは正に当時のスタッフの執念だと思います。素人がフォント作成に手を出すと死ねます。字体の整合取ったりとかちょっと考えただけでもウンザリ...
それをメインテーマとした作品が「8800円(税抜)」で販売できるかと言うと、ちょっとボリューム不足だったりするから、ではないでしょうか?
同人とかFLASHゲーでしたら、短編作品でもOKなので実現しているのはないかと。
>エロゲやり始めて早10年さん
「パッチ」はネットが普及したからこそ、盛んに配布されるようになった感じがしますね。
昔は深刻なバグがあったりすると回収したり、郵送で「修正ディスク」を配布したりしてましたから、そのコストもバカにならないので、バグを出さないように努力していたのではないかと。
最近の「未完成版販売」は会社の事情っぽいですが、ああいうのはやめて欲しいですよね(汗)
>黒田如風さん
ディスってないよ! 今でもリスペクトしまくりだってヴァ!ヽ(`Д´)ノ
今思うとあの一文は乱暴な書き方だったと反省している。_| ̄|○
確かに仰る通り『シナリオ重視ゲームブーム』の走りは『雫』と『痕』ですね。
そのことも書きたかったんだけど、文章がまとまらないので泣く泣く削りました_| ̄|○
>おっさんげーまーさん
>どうでもいいけどPC-98のFDは1.2MBが正解
その通り!<アタック25の児玉清風に
失念しておりました。_| ̄|○
>('A`) さん
あのゲームは「悪事」なんてパラメータもありましたねw
あの頃は主人公が「鬼畜」になってもOKな時代でした。
今やったら叩かれまくりな予感(汗)
PC-9801は波形データを演奏するハードウェアが標準搭載ではなかったから普通BGMは音階しか出せない。
音階データなんてドレミファソラシドとその長さなんだから容量なんてせいぜい数kBの世界だわな。
X68000とか要86ボードとかでサンプリング再生バリバリとかなら話は別だが…
あ、そうか。あの時代は音階データだけだったか。(汗)
すみません。消しときます_| ̄|○