NTTドコモと富士通は3月17日、らくらくホンシリーズ新モデル発表会の席上で、東芝が開発し、ソフトバンクモバイルが販売している“かんたん携帯”「821T」の製造、販売等の差し止めを求める仮処分命令の申し立てを東京地方裁判所に行ったことを明らかにした。
【「FOMAらくらくホンIII」と「かんたん携帯 821T」の比較画像】
●「両方ともらくらくホンだと思わないだろうか」が発端
今回の申し立ては「“両方ともらくらくホンだと思わないだろうか”というのが発端」だと永田氏は説明する。
同氏によれば、ソフトバンクモバイルの発表会で披露されたかんたん携帯 821Tを見たところ、ディスプレイ下部に設けられた3つのショートカットキーや十字キーの形などが「らくらくホンが顔として特徴づけているハードウェアに酷似している」(同)ことに加え、メニュー構成も似ているなど「複数箇所に渡って酷似している」(同)ことから、富士通とドコモとで検討の上、ソフトバンクモバイルと東芝に事前に警告を出したという。しかし、両社からは、(ドコモと富士通が)満足できる回答が得られず、3月8日には821Tが発売されたため、製造、販売等の差し止めを求める仮処分命令の申し立てに踏み切った。
らくらくホンシリーズの開発を手がける富士通 モバイルフォン事業本部副部長の大谷信雄氏は、同シリーズがヒットした背景には、2001年9月の最初のモデルの投入以来、ユーザーの声に耳を傾けたり、市場調査を行ったり、ケータイ教室を開催したりという、さまざまな積み重ねで培われた“らくらくホンらしさ”があるという。そして「かんたん携帯 821Tは、こうした積み重ねの部分が酷似していることが遺憾」だと話す。
「携帯市場には当初、高齢者や初心者、体の不自由な人を対象とした携帯はなく、(らくらくホンシリーズの開発は)新たなチャレンジとしてスタートした。これまで数千回にわたって使い方教室を展開したり、多くのユーザーの声を反映させ、市場調査を行い、さまざまなノウハウを積み重ねてきた。せっかく使い方を覚えた人が、買い替えるときに一から覚えるのは大変なので、メニューを変えずにきたという歴史もある。また、2004年からは市場のブランド力の浸透を目指して、プロモーションキャラクターに女優の大竹しのぶさんを起用し、ユニバーサルな雰囲気と連携して広告宣伝を展開してきた。こうした積み重ねでらくらくホンシリーズは、累計で1200万台を達成するヒット商品となった」(大谷氏)
永田氏は、シニアにとって使いやすい端末を開発するという目的は同じでも、それを実現する手段は「千差万別あると思っている」とも話す。「本当に“あの組み合わせ”しかないのか、というところ」(永田氏)。また、“酷似”が意味するところについては「“どういう印象をお客さんに与えているか”だと思っている。意匠なら“少し変えれば違う”という判断がなされると思うが、今回の不正競争防止法でやっているのは、“与えるイメージ”の話。(かんたん携帯 821Tとらくらくホンは)ボタンや色がまったく同じというわけではないが、予備知識を持たない人に端末を見せたときに、“何と判断するか”ということ」だと説明した。
なお、申し立ての根拠については、特許権や意匠権など、登録された権利に基づく請求ではなく、「ボタンの並びや十字キーの形など、既存のもの(らくらくホンシリーズ)に類似している製品を出すことに対する申し立て」(永田氏)としている。
ソフトバンクモバイルは、この申し立てに対し「申立書の内容を見たうえで、メーカーである東芝と協議し反論していきます」とコメントした。
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