あのAロッドがイチローの弟子入り!?米球宴に仰天の舞台裏
試合前の練習中、イチローの“まね”をしながら後ろを走るロドリゲス。スーパースターがスーパースターに“弟子入り”した(ロイター)
【ピッツバーグ(米ペンシルベニア州)11日(日本時間12日)】あのAロッドが天才に頭を下げた!! 日本選手でただ1人出場したイチロー外野手(32)=マリナーズ=は、ア・リーグの『1番・右翼』で先発出場、3打数無安打に終わった。しかし、試合前には仰天の舞台裏が…。米大リーグ“最高年俸男(約29億円)”のアレックス・ロドリゲス内野手(30)=ヤンキース=から「一緒に練習させてほしい」と合同調整を持ちかけられた。イチローが夢の舞台で、猛打賞以上の存在感を見せつけた。
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流れる汗をぬぐおうともしなかった。イチローが笑っていた。その瞳はキラキラと輝いていた。
「まっさらの打席に立てたので気持ちいい。このメンバーで1番を打つのは格別ですよ」
うっすらと霧に包まれたPNCパーク。天才のバットは湿った。3打数無安打。一回は6度目の球宴で初の三振。三回の第2打席はいい当たりの右直。六回の第3打席も遊ゴロに終わった。
3年連続安打はならず。“レーザービーム”を披露したわけでもない。足でも魅せられなかった。それでもイチローにとっては最高の球宴だった。
会心の笑みにはワケがある。
「(今年の)球宴の印象ですか? …うん、試合前に」
それは仰天の舞台裏だった。試合前、ロッカールームであのロドリゲスがイチローに歩み寄った。
「試合に臨むための調整法を教えてくれないか」
午後5時過ぎ。ナ・リーグの練習中にもかかわらず、2人は右翼の守備位置付近に登場した。イチローがまた割りなど独自のストレッチを始めると、Aロッドがまねをする。ダッシュなどを含め、2人は約30分間、ともに汗を流した。昨季のア・リーグMVP、メジャー最高年俸(約29億3000万円)を誇るスーパースターが、イチローに“弟子入り”だ。
六回の第3打席も遊ゴロに倒れたイチロー。安打こそ出なかったが、それ以上の“収穫”があった(ロイター)
夢のコラボレーション−。一緒にプレーしたことはないが、2人には“歴史”がある。99年2月下旬、当時オリックスのイチローがマリナーズの春季キャンプ(アリゾナ州ピオリア)に参加。マ軍のスーパースター、ロドリゲスを目の当たりにした。
翌年の00年オフ、ロドリゲスは10年2億5200万ドル(約287億2800万円)の史上最高額で、レンジャーズにFA移籍。入れ替わるように入団したイチローは、Aロッドからマ軍の“看板”を引き継いだ。イチローが初出場した01年の球宴では、クラブハウスで長時間、話し込む姿もあった。
「(Aロッドは)僕の試合前の準備について聞いてきた。あんなにすごい選手が、まだそういう(向上心のある)姿勢でいられるのはすごい。驚いたし、見習うべき姿勢だと思った」
安打の数ではない。イチローは最高の選手が集う舞台で最高の刺激を受けた。マ軍の後半戦開幕は14日(日本時間15日)のブルージェイズ戦(トロント)。逆転地区優勝と年間最多安打記録(262)更新に向けて、天才が再び走り出す。
MLB球宴で共演!!イチロー&A・ロッドを徹底比較 | ||
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イチロー(32) | 氏名 | A・ロドリゲス(30) |
1973年10月22日 | 生年月日 | 1975年7月27日 |
愛知県西春日井郡 | 出身 | 米ニューヨーク州 |
愛工大名電高→92年D4位オリックス →01年マリナーズ |
球歴 | ウエストミンスター高→94年D1巡目マリナーズ →01年レンジャーズ→04年ヤンキース |
MVP4度、首位打者9度 盗塁王2度、最多安打7度 |
タイトル | MVP2度、首位打者1度 本塁打王4度、打点王1度最多安打1度 |
89試合打率.343 6本塁打31打点 |
今季成績 | 84試合打率.282 19本塁打65打点 |
1866試合打率.343 176本塁打870打点 |
通算成績 | 1676試合打率.306 448本塁打1291打点 |
51 | 背番号 | 13 |
1253万ドル(約14億2840万円) | 今季年俸 | 2568万ドル(約29億2750万円) |
1メートル7573キロ | サイズ | 1メートル9095キロ |
右投げ左打ち | 投打 | 右投げ右打ち |
弓子夫人 | 家族 | シンシア夫人と1女 |
【注】丸数字は年齢。今季成績は現地12日現在。イチローのタイトル、通算成績は 日米通算でのもの |
■MLB球宴データBOX
マリナーズ・イチローは6年連続6度目の球宴出場。先発としては2年ぶり5度目。
一回の第1打席にナ・リーグ先発の右腕・ペニー(ドジャース)から米球宴では初となる三振を喫するなど、3打数無安打。通算成績は15打数3安打、打率・200。
オリックス時代は7度(17試合)の球宴出場で通算4三振。イチローから三振を奪った投手は広島・チェコ、ヤクルト・高津、中日・山本昌、横浜・川村で、このうち山本以外は右投手。
今季レギュラーシーズンでは39三振で、このうち右投手が309打席で33三振(三振率・107)、左投手が103打席で6三振(同・058)と、対右投手のほうが三振率は高い。
■そういえばこんな“因縁”も
3月12日(日本時間13日)、エンゼルスタジアム(アナハイム)で行われたWBC2次リーグ初戦。米国と対戦した日本は一回、イチローが先頭打者本塁打を放った。同点の八回一死満塁では、岩村の左飛で三走・西岡が生還したと思われたが、離塁が早いとの抗議で球審の“ボブさん”がアウトの判定。九回、藤川がロドリゲスにサヨナラ打を浴びた。つまり、世紀の“誤審”があった日米決戦は、イチローで始まりAロッドで終わっていたってわけで…。
★ベイ、地元で初安打…ナ・リーグ
地元パイレーツの2選手が本拠地を沸かせた。『4番・右翼』で先発したジェーソン・ベイ外野手(27)は試合前のメンバー紹介で最も大きな声援を受け、四回には中前に球宴初安打。「ファンの期待に応えたかった」と感激の表情だった。一方、前半戦をナ・リーグ首位打者で終えたフレディ・サンチェス内野手(28)は五回から出場。打撃は2打数無安打だったが、ジャンピングキャッチなど守備で大きな拍手を浴びた。
★ペニー、イチロー斬った…3者連続K
150キロ台後半の速球連発で観衆の度肝を抜いた。先発したナ・リーグのブラッド・ペニー投手(28)=ドジャース=が一回、イチロー、デレク・ジーター内野手(32)=ヤンキース、デービッド・オルティス内野手(30)=レッドソックス=から3者連続奪三振。一回先頭からの3連続奪三振は1999年のペドロ・マルティネス投手(34)=メッツ、当時レッドソックス=以来の離れ業。ペニーは「すごく気持ちよかったよ」とさらに自信をつけた様子だった。
★08年はヤンキースタジアムで
【ピッツバーグ11日(日本時間12日)=共同】米大リーグのバド・セリグ・コミッショナー(71)が当地で記者会見し、2008年のオールスター戦開催球場に、ニューヨークのヤンキースタジアムが有力候補に挙がっていると示唆した。ヤンキースタジアムは新球場の建設により、同年が最後の使用になるとみられている。
また今季から罰則、検査が強化された薬物規定について「ステロイド(筋肉増強剤)の使用は極めて減ったと考えている。規定は機能している」と評価した。