中国チベット自治区ラサなどで起きた大規模な暴動を受け、県内でチベットとの交流や支援にかかわってきた人たちにも17日、情報不足へのいら立ちやさらなる「弾圧」への懸念、チベット民族の尊厳を守るべきだといった声が広がった。
「おととしの夏、ラサを訪ねた時は道路がどんどん延びていて発展の勢いを感じた」。県山岳協会長の柳沢昭夫さん(68)=北安曇郡池田町=はそれだけに、「事実がどうなのか、分からないことが多い」と、情報の少なさに気をもむ。
今年秋、チベット登山協会との友好兄弟協定締結20周年の記念事業を計画したが、中止せざるを得なかった。中国が国家の威信をかけた北京五輪の影響を指摘する声もある。「難しい国内事情は察することができる。早く落ち着きを取り戻してほしい」と話す。
長野市の小説家仁木英之さん(34)は、取材の準備で6月にもチベットを訪れるつもりだったが、見合わせるという。チベットには北京留学中の14年前に1週間ほど滞在した。街は平穏で「知り合った人や僧が本当に良くしてくれた」。その印象から、市内で開いた学習塾を「ラサ学堂」と名付けたこともある。「民族意識が高いあの人たちがどうなっているのか」と心配する。
「今回の動きは民族独立運動そのもの」。東京外語大などで長年チベット文化を教え、昨秋、チベット出身の女性を招いた仏画の絵解きも催した長野市の西方寺住職金子英一さん(64)は、中国政府の使う「テロ」という表現だけでなく、日本での「暴動」というとらえ方を残念がる。
1951年のチベット制圧以降、チベット語教育の禁止などの政策があったとし、「中国が行ってきたのは、例えば日韓併合やアイヌ同化政策と同じ民族と文化の抹殺」と説明。一刻も早い「チベット人の尊厳回復」を願う。
人権団体「アムネスティ信州伊那谷」の遠野ミドリさん(53)=下伊那郡大鹿村=は「死亡者数を中国は10人と言い、亡命政府は80人と言う。この差自体がチベットの置かれた状況を物語る」と指摘。2001年、非暴力で独立運動を進めるチベットの記録映画を飯田市などで上映した。「日本のチベット人たちは居ても立ってもいられない状態。何か支援できないか」と考えている。