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素晴らしい！ アニメと内容が全然違うという話だったが、それでも内容がとても良かった。
塗りが「BM0」っぽいなと思ったら、フライングシャインが関わっていた。なるへそ。あと小学生時代の主人公の声が渋すぎ。
オフィシャルサイトで見た感じでの話は、根暗な主人公がいじめにあって、何か知らんが記憶が飛んでいるときにいじめっ子を殺してしまい、警察に追われるが何故か親切な幼馴染に助けられて、内なる暴力性に目覚めてやりたい放題って感じ。
「本当に主人公が人を殺したのか？」という謎を追いながら、「児童虐待」というテーマに挑むゲームに見える。
まあその通りなんですけど。
けどこのゲームは凄い。
まず最初は先ほどの説明通りの展開。ぶっちゃけこの時点ではかなりヤバめ。
主人公の舞城キャラを薄味にしたような一人語り（どんな危機的状況でもひねくれた冗談と邪悪な視野を忘れない）はかなりイカれていて面白いが、そういうイカれた人間にヒロインの理紗がそこまで尽くすのかが分からないし、サブヒロインの泉が何故主人公に惚れ込んでいるのかも謎。そして主人公の行う陵辱が上手く成功しすぎなのだ。とりあえずそこはエロゲーだからという事で流す。
そしてそういう納得して次の章に進むと、今度は視点が主人公のもう一人の人格（殺人者側）に変わる。第一章では最初から主人公の二重人格はバレバレなのだが、多分バレバレにするつもりで作っていると思う*1。前章の終わり方が、「別人格視点を見てみたい」と思わせる引きだったので、これだけで十分楽しい。前章の空白部分を埋められる。
で、第三章ですが、これがメインヒロイン理紗を視点とした、十年以上続く彼女の児童虐待についての話で、そして主人公の学に出会う事で救われるのを念入りに書いた話。
攻略パートが前フリ。メインヒロインが真の主役で主人公は脇役。つまりCarnivalはAirと同じ構成の話なのだ。
ここで理紗と泉が学に何故あそこまで尽くすのかが理解できる。しかも第一章の時点では絶対に理解できない方法で。第一章で「エロゲーだからここまで尽くすヒロインくらい出てくるわい」と思わせたが、実はその裏でヒロインは長い年月をかけて覚悟をしている事が分かる。
とりあえず話の筋だけ書いた。
で、俺が素晴らしいと思うところは二点。
��ストーリーとは主人公の主体が作り上げる。
主人公の学は基地外。それは最初から分かるが、特に理紗が「自分を警察に通報したのではないか」と思い込み始めたら真骨頂。プレイヤー側の俺は、ゲームの主役である学より多くの情報があるから当然その思い込みが間違いである事を知っている。
そこにズレが発生するが、普通ならそのズレは感情移入を妨げるものにしかならないが、主人公はその間違えた方向から妄想で自分のストーリーを練り上げてゲーム側の現実を捻じ曲げようとする。
当然完全に捻じ曲げてしまえばゲームとして成り立たなくなるのでそこまでいかないが、それでもかなりいいところまでいっている。
それで思い出したのが、阿部和重「インディヴィジュアル・プロジェクション」。あれは主人公の日記形式の作品で始めは「主人公の見ている世界」と「（読者が考える）小説内世界」は一致したものであるが、徐々に主人公の妄想が注入されて「主人公の見ている世界（妄想）」と「小説内世界（真実）」にズレが発生する。しかし終盤で「今までの俺が間違えていた」というセリフから、「小説内世界」が結局は最初に「主人公の見ている世界」を読者が「小説内世界（真実）」と思い込んだだけであって、真実の姿だと考えていた「小説内世界」自体が読者の中で崩壊していき、読者は小説に書いてある事が何一つ信用できないようになる。
そういうのに近いかも。
�⊆膺邑�の主体が真実とは限らない。
Carnivalは主人公・学と別人格・武とヒロイン・理紗の三視点が順番にストーリーを進めるという構成になっている。
当然の話として、それぞれで対象を見る眼が違い、評価が正反対に見える。
主人公の母親が学の視点では虐待するが本当は優しい母・武の視点ではただの偽善者の鬼母・理紗の視点では優しいお母さんに見えるというのは序の口である。
主人公・学は本人視点ではただの基地外だし、武視点では弱虫、そして理紗（泉）視点では無口だが頭が良くてカッコイイ幼馴染に完全に分離する（描写も違う/しかしセリフは同じ）。
それをギャップとして捕らえて愉しむのもいいが、すごく気になる部分が。
それは序盤の祭りのシーンで、主人公は虐待したが死んでしまった母親の事を今はどうとも思っていないが、「母がいなくて寂しい」と声に出してみたら本当に寂しいと思えるかもしれないと思い声に出してみる。しかし何も変わらずにそのままである。
しかし理紗視点では理紗は偶然にもその言葉を聞いており「ああ、学は本当は・・・」と思うようになる。
普通に考えるとこれは理紗の勘違いで、真実の学はそんな事を思っていないと解釈できるが、本当にそうだろうか？実は話の進み具合で、学は母の事を愛していたという描写が何個も出てくる。それでは他人から見た勘違いのほうが本人よりも真実（学は母を愛している）に近いという事になる。
そしてそもそも学・武は人格統合に近づいていて、この二人の人格を明確に分けることはできなくなっているのだ（学は凶暴になったのもただやけくそではない）。
そう考えると、主人公の視点自体が主人公の本心ありのままというのが怪しくなっているのだ。そして逆に他人の思い込みの像こそ本当の姿だとも言える。
・・・と長々と書いた。凄い分かりにくい。俺自身の文章力の問題もありが、この問題自体（主体の正当性）がややこしいので、とりあえずメモ（暫定版）として書き残しておく。
あとところどころのネタも知的なマニアネタを使っていて楽しい。
*1：記憶の改竄が可能という設定なら、主人公にしか見えない別人格の人物像が捏造されてもいいはずだが、あえてそれをしていない