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・共産主義という名の亡霊は除霊されたっぽいけど、何か最近オタク界隈で似たような亡霊がさまよっているように思える。霊感少年ではない俺だけどもちょっと言及したいと思います。
それは「オタクはメジャーを目指すべきである」というような言説であり、たとえば先月のスタジオボイス(ジャンプ特集)とか読めば何となく俺が言いたいことは分かるかもしれない。
その手の言説についてはまず言いたいこと自体は分かる。今は80年代じゃないということだ。確かにその時代からずっとメジャーに注目せずにオタク物件のようなマイナーなものだけ注目していてもOKである時代は続いているけど、それはメジャーが金を稼いで、マイナーまでトリクルダウンしていたから可能なだけであって、今ではオタク界隈の中で例えばジャンプとかガンダムとかのようなもの以外で金を稼いでくれるメジャーってどれだけあるのよ?、という話になってしまいがちである。
惑星開発委員会系の人々*1は大塚英志*2や小林よしのり*3の影響下の人たちだからこの手の事が言いたくなることはよく分かるんだけど、どうもなあという気持ちになる。
追記:誤解を招く表現になっています。詳しくは次の日の日記をご覧下さい。
確かに「業界全体を潤すようなビッグになりたい」という目標は確かに業界人になりたいと思うなら片隅にでも考えるべきなんだろうけど、正直今どき売れるのは最終的には運みたいなもんだし、メジャーと呼んでいるものもまたデカいマイナーにすぎないんじゃないかという状況であることも分かっていないといけない。
たとえば文芸の世界では本屋大賞やダ・ヴィンチ的なものが業界全体を潤しているのだから、ジャンル小説だけではなくそっちの「一般文芸扱い」のものを目指すべきではないかという意見がある*4。それはそれとして正しいけど、俺はそういう「売れ線狙ったけど大失敗した例」の方が知っているからそういう方向もちょっと色々と思うところがある。
しかしもっと思うところがあって、そもそもコンテンツが売れない時代になっていることであり、その理由は色々言われているけど、そりゃ不況だからという事実である。いくら無料のものが多いとかP2Pで落としているとか言われても金があったら買いますよ、そりゃ。
金があれば人は消費をするのです*5。消費をすればその業界は潤うのです。
その手を含めた消費者の観点から考えたのですが、正しいオタクを目指しているなら金を稼ぐべきだという結論も一つとして出していかないといけない。
そもそも業界の衰退の話のときに「売れるものを作らねばならない」という話ばかりが中心になっているのが、逆に「何でも買ってしまう金持ちの消費者を増やせ」という話にならないのが変なのである*6。
そして実作家や実践を好む第一世代、知識や評論が好きな第二世代、消費しかしない動物的な第三世代という分類がんされている。消費しかしないという言説に色々と思うところはあれども、そうだとするなら一番ありがたい層になる可能性がある。なにしろ金をいっぱい出す奴こそ業界にとって一番偉いのだから(だから投資ファンドも作ったりしている)。
そしてオタクの社会化の問題も解決するというか、オタクとしてディープになることは駄目人間になるのと一緒と言われるけど、金を稼げるようになるということは(今の日本)社会にとっては重要なことなので問題がなくなってくる*7。
――――というアイディアは結構前から(形になっていなかったにせよ)浮かんでいたわけですがすこぶる評判が悪いです。まあ簡単にいうと禁じ手だからね。
何故禁じ手かというと、
1.文化というのは政治経済の下請けにすぎないという事を事実上言ってしまっているから。
2.文化が好きなら文化をやるな、という話だから(それこそ「書(という文化)を捨て、街(という文化)へ出よう」という優しいレベルの批判じゃない)。
3.お金の話は正直ヒく。
という話だから。とはいうものの単純に書いてみたかったんで書いちゃえ★ミという感じです。
とりあえず自分的な教訓としては、
1.「メジャーを目指す」宣言な転向*8は無意味なのでやめました。
2.小説を書くことよりも自分の収入を増やすことを考えた方がヲタとして皆ハッピーになれるんじゃないか。
3.やっぱり人間、金というよりもメシのタネに関することのマジさ加減は凄い。
おしまい。
*1:書いてもうたw。
*2:「文学の不良債権」という話は、漫画や大衆紙の収入で文芸誌を支えられているのが情けないという話というよりも、「もし漫画や大衆紙が売れなくなって出版社が切羽つまったら、高コストということで切り捨てられやすいのは文芸誌だけどその手の対策ってしてんのか?」という話である。
*3:旧ゴー宣6で「メジャーが支えているからこそマイナーが生きられる。だから絶対強者になりたい」というようなコメントをしている。
*4:この手の話はhttp://www.geocities.jp/wakusei2nd/p4.htmlで書いています。よろしくね(CM)。
*6:実はこの手の話は昔から盛んに(*ここ重要)言われていたのならゴメンナサイ。
*7:コミュニケーション能力の上昇とか恋愛偏差値とかよりも具体的じゃないか。
消費者に「ただ乗りするな。金払え」と説教することも、生産者に「欲しくなるものを作れ」と批判するのもそろそろ無意味だと思っているし、エリート論(という名の精神論)ぶっこいて「オタクなら給料の半分はつぎ込まなければならない」みたいなことを言っても「じゃあ俺はヌルオタでいいです★ミ」と返されてオシマイだし、そもそも批評なんかがジャンルの衰退を救ったことがないんだからもう根本的に「収入増やせ」と煽るしかないでしょうという話です。
で、誤解が解けたとこで、あらためてレスすると、単純な話、ジャンルって衰退してないですよ。「コンテンツが売れない時代」といっても、それは若者向けのものだったり新しいものだったりが売れていない、という話であって、団塊向けやファミリー向けのものはバカ売れしてたりする(ゲームが売れなくなった、とよく言われているけど、脳トレやら何やらといった任天堂のゲームはアホみたいに売れている、とか)わけで。売れていないのは若者向けコンテンツ、つまり衰退しているのはジャンルではなくて若者向け作品。極論を言えば、若者のパイなんか世代別人口比からみて現状では小さいんだから(宇野さんがよく「『萌え』市場なんて大したことない」というように)、そこがぶっつぶれても、もっと大きな観点での「ジャンル(アニメ、ゲーム、映画etc)」には影響がない。
なので、kimagureさんの話は、「ジャンルの衰退」がどうしたこうしたなんて大げさな話ではなくて、「自分のマニアックな趣味を生き延びさせようと思ったら金を稼いでタニマチになんな」って話だと思いますわ。
あと、なんで「第三世代オタク=ニートないしワープア=社会化されてねえ」みたいな前提をまっとうな検討もなく採用するひとって絶えないんでしょうね。kimagureさんはどの程度根拠があってそう考えているのか、お手数でなければ教えてもらえるとありがたいです。
あと第三世代云々のところは俺も前提にしていないので知らないです。それでも何かコメントをするとしたら、そういうアングルにしておいたらキャラが立つとかそういうのじゃないんですか? もしくは俺らの世代でニートやワープアへの行くことはそう遠い話じゃないから、セーフティネットとして「若者はそういうのばかり→だから救うべし」という筋書きを引き受けているとか。