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――約3年3ヶ月ぶりのアルバムですが、どんな方向性で制作に入ったんですか?
【玉木】 僕の場合、音楽活動だけに専念することはなかなかできないですけど、そんな環境のなかでも、僕の曲を聴いてくれる人との架け橋になるようなアルバムにしたいと思って制作しました。だから俳優業より等身大に近い僕を感じてもらえると思いますよ。
――メッセージ性の強い曲が多いのもそのため?
【玉木】 ラブソングは照れくさくて苦手なんです(笑)。それよりは今、自分が考えていることを伝えたいってことでメッセージ性のある曲が多くなっていますよね。
――特に印象に残ってる曲は?
【玉木】 「With」と「Beautiful Day」。どっちもライブをしたときに歌った曲で、ライブのためだけの曲だったんですけど、やっぱり思い出のある曲なのでアレンジを変えて、レコーディングもし直したんです。
――「With」は玉木さん作詞で、すごく場面が浮かぶ内容ですよね。作詞はどんな風に?
【玉木】 これは“人はひとりでは生きていけない、誰かの手が必要だ”って想いを込めて書いたんですけど、場面が浮かぶようなリアルなものが映像でも音楽でも好きなのでそこは意識しました。でもそれ以外は曲を聴いたときのファーストインプレッション。聴いた瞬間、テーマが湧いてきて、あとはそこに向って言葉を埋めた感じです。
――玉木さんは歌声も余計な装飾をせず、地声を生かしたナチュラルな歌い方だと思ったんですが、作詞法も歌唱法も先ほど言っていた“等身大”ってところからきてるのかな?
【玉木】 そうですね、ヘタならヘタでいいかなって(笑)。それより生身の言葉が伝わる世界観を大事にしたい。歌詞に込めた気持ちをちゃんと伝えたいんですよね。だからレコーディングもできる限り集中して曲に入りこんで、詞の世界をイメージしながら歌うようにしています。そこらへんの作業は、俳優業での訓練が生かされてるんじゃないかな。

――ちなみにアーティストと俳優業の切り替えってどうやってしているんですか?
【玉木】 環境がまったく違うので、それぞれその場所にいけばスロースターターだけど自然とエンジンはかかります。レコーディング中に頭のどっかで“セリフを覚えなきゃ”とか考えてしまうときもありますけどね。
――その逆もあったり。
【玉木】 逆は全然いいんですよ。それぐらい気が抜けて演技をしているほうが(笑)。
――玉木さんにとって音楽と俳優業ってどっちがホームでどっちがアウェイなんだろ?
【玉木】 芝居は作った自分なのでそこでどんなイメージを持たれようがかまわないけれど、音楽は素でありたい。今の自分をわかって欲しいって部分があるからそういう意味では、芝居がアウェイで音楽はホームなのかな。でも、両方あるからバランスが取れてるんですよね。
――両方あって“玉木 宏”ができあがっていると。
【玉木】 まだ28才で音楽も俳優も含め、いろんなことに触れていく時期ですからね。しっかり足固めをして30代に入るためにも今は役の幅を広げたいし、音楽もジャンルやスタイルは決めたくない。イメージを作っては壊し、また作るっていうことを繰り返しながら、まだまだチャレンジしていきたいです。
(写真:鈴木健太) (文:若松正子)
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