オウムの現状と進まぬ被害者への賠償
オウム真理教による地下鉄サリン事件から今年で13年・・・。今月26日には教団の破産手続きが事実上終了しますが、いまだ多くの被害者が事件の苦しみを抱えたまま生活しています。今も年間5億円の資金を集めるオウムの実態と、進まぬ被害者への賠償についてお伝えします。 壁に宗教画が飾られた二十畳あまりの部屋。ここは、「オウム真理教」が「アーレフ」と名を変え、拠点としてきた東京・世田谷の施設です。1年前からは、上祐史浩元代表らが分裂してつくった団体「ひかりの輪」の拠点となっています。 地下鉄サリン事件が起きる前から教団にいるという出家信者のAさん(59)。パートタイムで清掃の仕事をし、収入は全額、お布施として教団に納めているといいます。ただ、このようにアルバイトをして収入を得ているのはごくわずかです。ほとんどの出家信者は、働くこともなく御布施にたよって生活しているだけで、被害者に対して賠償する姿勢は見せていません。 5500人が死傷した地下鉄サリン事件。そして、松本智津夫死刑囚の逮捕から13年。教団には毎年、新たな信者が入信しています。 現在も年に数回のセミナーを開き、上祐元代表率いる「ひかりの輪」は神社仏閣参りと称して在家信者を率いての旅行も敢行。教団は、これらの参加費などとして資金集めを行っていて、収入は年間5億円にのぼるとみられています。 しかし、その使い道は事件の被害者への賠償に最大限充てられている訳ではありません。教団内に今も飾られている松本死刑囚の妻が描いた絵画。この著作権名目で月に40万円が松本家へ渡されているほか、多額のお布施が松本家へ渡っているといいます。 そして、教団の施設拡大の動きも顕著です。去年だけでも教団が購入した施設は全国で3カ所。オウム側は「安い物件を購入した方が、賃貸を続けるより安上がりで多くを賠償にあてることができる」としていますが、公安当局はこうした動きは立ち退き防止や拠点づくりの強化のためとみて警戒しています。 「『アーレフ』『ひかりの輪』とも、現在も麻原の影響下にあると私共は考えておりまして。本質的に危険性は何ら変わっていない。また彼らの閉鎖的な体質といったものもあるので、今後とも十分、注意をしていかなければならないと考えています」(公安調査庁・片岡義篤調査第一部長) いまなお1500人もの信者からなるオウム側が、被害者への賠償として支払ってきたのは、課せられた38億円のうちわずか3割あまり。教団では、今後もできる限りの賠償をしていきたいとしていますが、その道筋は不透明なままです。 事件からすでに13年。賠償が遅々として進まない中、被害者は今も苦しみ続けています。(18日13:55)
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