2007年08月31日掲載記事より
西鉄貝塚線 西鉄香椎駅 (福岡市東区)
街の変化見守る桜の老木
香椎商店街(福岡市東区)の目抜き通りの中ほど。真新しい鉄道高架が覆いかぶさるように交わる。にぎやかな通りを折れ、高架の橋げた沿いに歩くこと約100メートル。青々と葉を茂らせた桜の木のそばに、西鉄香椎駅の駅舎があった。 福岡市の進める香椎地区の区画整理事業のど真ん中に位置する同駅。渋滞解消などのために周辺の線路が高架となり、昨年5月、2階建ての駅舎として新たなスタートを切った。
最大3両編成までしか運行しない路線とあって駅舎はこぢんまりしている。淡いクリーム色の外壁に囲われたホームには、ワンマン電車だけが停車する。
一見すると何の変哲もない小規模駅だが、50年前、作家松本清張の代表作「点と線」で全国的に有名になった。近くのJR香椎駅と合わせて作品のトリック構成に重要な役割を果たしたのだ。
旧駅舎は取り壊され、桜の老木だけが当時の面影を残している。
だが、駅前広場も整備の対象となり、すでに老木の両側には大きな空き地が広がる。
「香椎の歴史を語る『シンボル』。何とか残してほしい」。地元住民らの要請を受け、市は今秋にも移植するよう準備を進めているという。
西鉄貝塚電車営業所の山崎秀幸助役は「今は街が生まれ変わる過渡期。周辺の商店街や住民と一緒に、香椎にふさわしい駅づくりを考えていきたい」と、今後の開発に期待する。
一帯の整備が進んで、駅に向かう新たな人の流れが生まれる-。老木の木陰で、そんな風景を思い浮かべた。 (福岡東支局・向井大豪)