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『児童ポルノ』の新定義が生まれる!?

出版関係者の逮捕は、親の相談がきっかけ

渋井 哲也(2007-10-26 22:00)
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 女子高生が過激な水着姿で出演するDVDが「児童ポルノ」にあたるとして警視庁が出版関係者を逮捕した事件があり、「今後、ほかのローティーンアイドルの写真集もターゲットにされるのではないか」「見せしめに行われた逮捕なのではないか」などと憶測を呼んでいる。

 報道によると、10月16日、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで警視庁少年育成課に逮捕されたのは、心交社のチーフプロデューサーとビデオ制作会社の監督ら計4人。今年2月1日から3日にかけ、インドネシア・バリ島で、当時17歳だった東京都板橋区内の女子高校生の過激な水着姿を撮影し、DVDを製造した疑いがもたれている。

全裸ではない過激な水着姿には初認定

 今回の容疑になったDVDは、少女の尻の割れ目や、Tバック下着を着用しているシーンなどがあるものの、全裸にはなっていない。このため4人は、「児童ポルノには該当しない」と容疑を否認しているという。

 逮捕された4人のうち1人は、記者(=渋井)が仕事をする雑誌の編集者の仕事仲間だった(私とは面識がないのだが)。同編集者によると、容疑を否認しているためか、面会ができない状態だという。

 「児童買春・児童ポルノ処罰法」によると、取締りの対象になる「児童ポルノ」は、18歳未満を「児童」といい、「写真、ビデオテープその他の物」で、

(1) 児童を相手にするか、児童による性交、性交類似行為であると見てわかるように描写しているもの
(2) 人が児童の性器などを触ったり、児童が他人の性器などを触っているもので、性欲を感じさせたするもの
(3) 全裸、もしくは衣服などの一部を身につけている児童の姿で、性欲を感じさせたりするもの

をいう。今回のケースでは、警視庁同課は撮影角度やポーズなどから「過激な水着姿もわいせつな映像にあたる」と判断した(『日刊スポーツ』07年10月17日)。全裸シーンのない映像を「児童ポルノ」と認定したのは初めて、と見られる。

親からの相談で、名前や年齢を特定

 この逮捕によって、同じようなDVDを発行する雑誌関係者は、自分たちも逮捕されないかどうか、戦々恐々としている。しかし、心交社のサイトでは、同様のDVDがまだ発売されており、ほかのDVDには波及していないことが伺える。

 「出版社と何からの手打ちがあって、そのDVD、1タイトルだけに捜査が入ったのでないか」

 「今回の逮捕は、新たな『児童ポルノ』の定義を、判例に書き加えたいという捜査側の意図があるのではないか」

 こういった見方をする雑誌関係者もいる。

 しかし、捜査関係者の話を聞くと、別の見方が浮上してくる。

 「今回は、親の相談がきっかけで、捜査が始まったケース。過激な水着姿のDVDへの出演だったと親は知らなかったのです。だから、ほかの同様なDVDなどを視野にいれているわけではない。なぜ、ほかの出版物に捜査に及ばないのかといえば、被写体になっている人物の名前や年齢を確認する手段がないからです」

 この捜査関係者の話を元にすれば、親からの申告など、何らかの方法で名前や年齢を確認できるのなら、警察は捜査するということなのだろう。

雑誌関係者が過敏になる理由

 今回の捜査に関して、雑誌関係者が過敏に反応しているのひとつの理由は、「児童買春・児童ポルノ処罰法」の改正議論の中で、「実在しない児童」の漫画や絵についても、規制対象に含めるかどうかが議論がされていることがある。

 現行法では、「実在の児童の権利侵害のみ」を対象にする立法趣旨から、対象外となっている。

 「子どもの売買、子ども売買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書」(平野裕二氏仮訳)では、「児童ポルノ」について、

 「実際のまたはそのように装ったあからさまな性的活動に従事する子どもをいかなる手段によるかは問わず描いたあらゆる表現、または子どもの性的部位を描いたあらゆる表現であって、その主たる特徴が性的な目的による描写であるもの」

と定義している。ただし、実在しない児童ポルノ(たとえばマンガやCG、アイドル・コラージュ)、または児童年齢に見えるポルノ(たとえば高校生の格好をした成人)についての言及はない。

 日弁連は、「実在の子どもがモデルとなっていると推定されそうなコミックが存在した場合は、この法律を適用するのではなく、別の名誉毀損罪など他の犯罪として処断されるべき」との立場で、安易なポルノコミック規制には慎重姿勢だ。

 もともと、「過激な水着姿」のジュニアアイドル写真集の出版は、どこまでが「セーフ」で、どこからが「児童ポルノ」に該当するのか、線引きを試すようなところがあった。そのため、今回の逮捕が、ひとつの基準作りのきっかけになるのではないか、不安に感じているコミック作家や雑誌関係者は多い。もし、「児童ポルノ」の新定義が作られれば、打撃を受ける関係者は少なくないだろう。



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