第1章 日本人がかかえた借金の額と泉井事件の黒幕


霞ヶ関の天下り人事を動かす二人の男


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 両角良彦は、事務次官を退任して直ちに、電源開発の総裁となり、その後も ロスチャイルド財閥の石油探査部門である日本シュルンベルジュの会長、日銀政策委員、 総合エネルギー調査会会長、電源開発調整審議会の委員、電気事業審議会の委員などを 歴任しながら、"電力会社の手先"と言われるこれらの役職で、原発建設の強引な政策を進めてきた。
 その一方で両角は、次官だった時代に、佐藤内閣の通産大臣だった田中角栄の 手足となって、怪物と呼ばれた政商・田中清玄(通称せいげん)と組んでインドネシアの石油利権の 獲得に努力し、角栄人脈と深い関係を取り結んだ。

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 続く山下英明は、両角とほとんど同じ行動をとった部下であり、オイルショックに 直面した事務次官である。
 退任後は、当然のように天下って、三井物産の常務から副社長まで成り上がり、その間に イラン化学開発の社長もつとめて、実業界を直接動かしてきた。
 山下英明の兄は、福岡銀行頭取の山下敏明であった。敏明は同時に、九州電力会長として 君臨してきた安川第五郎の娘ムコであった。わが国がオイルショックを契機として、大々的に 原子力政策にのめり込んでいったのは、実はここに巨大な利権が存在したからである。 安川第五郎が日本原子力発電の社長・会長、日本原子力研究所(原研)の理事長、 日本原子力産業会議の会長という役職を歴任しながら、その背後では、近親者を 通産事務次官にして自由に霞ヶ関の官僚をあやつるという、さらに大きな原子力財閥のちからが 作用してきた。

 泉井純一から絵画をもらった大蔵官房長の涌井洋治は、次期事務次官の最有力候補と 言われてきたが、涌井は95年に再婚して、この山下英明につらなる一族となった。

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橋本内閣の厚生大臣・小泉純一郎の義兄が、資源エネルギー庁長官の豊島格で、彼は 長官から天下りしてアジア石油社長、コスモ石油副社長になった人物である。石油業界幹部を 歴任したのだから、豊島がその疑惑の高官である可能性がある。しかも泉井から政治献金を受けたのが、小泉純一郎であった。

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安川第五郎の兄・松本健次郎の孫の義父は、ほかならぬ出光興産の創業者・出光佐三で あった。原子力財閥と石油財閥が、がっちりと姻戚関係を結んでいる。しかもそれが、 オイルショック時の通産事務次官・山下英明の一族であり、現在の大蔵省を動かす涌井洋治の 一族であった。

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官僚の次の高級職場を世話する"天下り人事"を支配してきたのが、前述の 石油公団総裁・和田敏信であった。

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「霞ヶ関の天下り支配者は、日銀総裁の澄田智だ」と言われてきた。澄田は、 - -  父親の代からフランス財閥と不思議な関係を深めてきた。満州事変の黒幕だったその父の 後継者として、自らは大蔵事務次官から84年の日銀総裁を経て、金融解放とバブル経済へと、 わが国を疾走させて最大の黒幕であった。 - - 右翼の政商・児玉誉士夫らと組んで 第一銀行と勧業銀行を合併させた立役者が澄田智であり、彼が後任に選んだ事務次官が、 鳩山威一郎であった。

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 この澄田智が、金融界での天下り人事の支配者であり、和田敏信が産業界での 天下り人事の支配者であった。
 そして驚くまいことか、大蔵省・澄田智の長女と、通産省・和田敏信の長男が、 -  結婚していたのであった。

 - 政治家と官僚と実業家のトップが、完全なまでに融合し、利権を中心に家族を 構成している。

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途方もないわれわれの金が使われ、彼らの天文学的な給与退職金や不正蓄財、さらに 総会屋と暴力団に払われる金から、 - 売春パーティー、料亭接待の花代に至るまで、国民が 負担させられてきた。そのため、至るところに欠損が生じて、消費税が導入され、今年、その率が 引き上げられたのである。

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