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【主張】チベット騒乱 国際監視下で真相究明を
中国のチベット自治区ラサで起きた僧侶らによる大規模な騒乱が周辺の青海、甘粛、四川の3省にも広がった。流血の拡大が懸念される。騒乱が起きた現地からの報道は中国当局の強い統制下にある。犠牲者数もチベット自治区主席が17日、北京での記者会見で「(14日に)罪のない市民13人が殺害された」と公表したのに対し、在インドのチベット亡命政府は「少なくとも80人の死亡を確認」(16日)と食い違っている。
中国政府は「暴動で民家や商店が焼き打ちや略奪に遭った」(チベット自治区主席)とし、暴徒を取り締まるのは当然との立場をとる。しかし、半世紀にわたるチベット独立運動が常に弾圧の対象とされてきた経緯を考えると、今回も中国当局の発表をうのみにはできない。
そもそも、騒乱の直接のきっかけは何だったのか。ラサやその他のチベット族自治区域で何が起き、どのような措置がとられたのか。
これだけ世界中に報じられた事件である。中国当局は従来の紋切り型ではなく、国際社会も納得しうる率直な説明をすべきではないか。
チベット仏教の法王が聖俗両界を治める独立政権だったチベットに1951年、中国人民解放軍が進駐した。8年後の「チベット動乱」で独立運動は武力弾圧され、現法王のダライ・ラマ14世はインドに亡命し現在に至る。
この間、中国は文化大革命の嵐を経て改革・開放に舵(かじ)を切り、今や中国抜きに世界経済は語れない。その投資によってチベット経済が発展をとげたのも事実だ。
しかし、北京五輪を開催するような「大国」が、ノーベル平和賞受賞者であるダライ・ラマ14世を念頭に、「(騒乱は)組織的破壊活動だ」とみることには違和感をおぼえる。
当のダライ・ラマ14世はインドでの会見で、今回の中国当局の対応を「恐怖による統治」と非難しつつ、北京五輪について聞かれると、「中国には、開催の資格はある」と冷静に述べた。こちらの方が国際社会にアピールするのは明白である。
ダライ・ラマ14世が提示した、騒乱についての「国際的な組織による調査」を受け入れる度量を示してこそ、五輪ホスト国にかなう。