2チャンネルでの質問に回答する  2008.03.18


2チャンネルでいろいろな議論がなされている。

大学関係者や研究関係者と思われる人々の書き込みが多く、席主が勝手に削除したりしないので、人におもねることのない、比較的公平な議論がなされている。

その中で以下のような質問(というか主張)があったので、私からコメントしておこう。

質問者の考え方は、かねてから天羽優子氏が主張している考えと、ほぼ同じである。
天羽氏の場合は、言っても言ってもまったく理解できずに、いつまでも同じ主張を繰り返しているのだが、この質問者なら、もしかしたら、ちゃんと理解するかも知れない。


995 :あるケミストさん:2008/03/18(火) 00:29:45
このスレをご覧の皆様に質問があります。

<1>水分子は反磁性体であることは確かであるが、通常の磁石程度の磁場では水は殆ど影響を受けない。
<2>よほど強力な電磁石でも用いれば話は別だが、それとて磁場の外に出てしまえば水は元の状態に戻ってしまう。
<3>まして、磁石で処理した水が人体に有益な作用を及ぼすということを証明するデータは存在しない。

これが私の知る磁気と水の関係なのですが、私の知らぬ間にこれをひっくり返すような新事実が発見されたのでしょうか?
もしそうであるならば、当然それを証明する学術論文が出ているはずなので、その論文のタイトルと雑誌名を教えていただけますか?



<1>は間違いである

「ほとんど」という形容があってアバウトな話ではあるが、もしこれが「まったく影響を受けない」という表現だったら、はっきりと「理学的に間違い」である。

なぜ間違いかと言うと、まず第一に「そのような事実は確認されていない」からである。

質問者が主張するような、「通常の磁石程度の磁場では水はほとんど影響を受けない」という事実は、アバウトな話としては経験的に明らかであるが、しかし「まったく影響を受けない」かどうかは確認されていない。
質問者は「論文があるかどうか」をさかんに気にしている。論文があるかどうか、それがこの質問者にとっては、科学的事実であるかどうかの分かれ目となる重要なポイントらしいのだが、その考え方に沿って言うならば、「通常の磁石程度の磁場では水はまったく影響を受けない」などと報告した論文はないのである。

なぜ、ないか、と言うと、原理的にそういう実験はできないからである。「これこれの現象は起こらない」ということを実験的に証明することは、ほとんど不可能である。「不存在の証明」は、まずできない。たとえ誰かが「通常の磁石でやてみて、水は変わっていませんでした」と報告しても、それが世の中のすべてではないからである。

天羽氏は、「論文となって出ていないことは自然界で起こっていない」という考えの持ち主であり、そのことを繰り返し主張してきている。
しかし、学会に報告があるかどうか、ということと、そのことが科学的事実であるかどうか、ということとは別のことである。報告がないうちは科学的事実ではなく、報告が出たあとは科学的事実になる、などというのは役所の窓口の考え方だ。科学的事実は、報告の有無とは無関係に存在しているのであって、そのことを直観で見抜けるかどうか、それが理学者の才能であり素養である。

質問者がもし、天羽氏と同じような考え方なら、そして、もしこの質問者が理学者なら、この質問者は理学の才能や素養に欠けると言わざるをえない。

さて、<1>が間違いであることには、もっと直接的な証拠がある。

我々が最近実験したところでは、フェライト磁石程度の磁場でも、水に影響を与えるのである。
我々はそのことをしかるべき学会に報告する。



<2>も間違いである

質問者は、よほど強力な電磁石でも用いれば話は別だが と言うが、これも相当にアバウトな話であり、この質問者が理学者であるなら、こんな表現では理学の素養がないと言うしかない。

ニュートンのキュウリの実験を、我々もデモンストレーションでときどきやっているが、ネオジム磁石でキュウリは簡単に動く。キュウリの中の水分子が磁力に反発するのである。



ネオジム磁石でキュウリが動く

超電導磁石でなくても、このくらいのことは簡単に起きる。
ネオジム磁石程度の磁力でも、水分子に影響を与えるのだ。
しかしフェライト磁石ではキュウリは動かない。
つまり、磁力が強いほど顕著な現象が起きる。

そして、磁場の外に出てしまえば水は元の状態に戻ってしまう という質問者の理解は完全に間違いである。

これが間違いである理由も <1> とほとんど同じである。

キュウリの中の水分子はどうなっているのか。そういう研究はまだない。
磁場を外したあと、キュウリはどう変化しているのか、していないのか、そういう研究もない。
磁場を外したあと、どうなっているかは分かっていないのである。

この質問者は、磁場の外に出てしまえば水は元の状態に戻ってしまう という論文をどこかで読んだのだろうか?


超電導磁石による磁場で、水が空中に浮遊する実験がある。しかし報告は、そこまでである。

磁場を外せば、水は落下する。

元の場所に落下したら、水は元通りになっている、というのが、この質問者の自然界の理解だが、それはこの質問者が勝手にそう思いこんでいるだけで、まったく証拠のない話である。
この質問者は、そういうところで立ち止まって深く思考する習慣がないようで、考察なしに、うろ覚えの知識で、すっと思考が上滑りしている。
もし、この質問者が理学者であるなら、理学の素養はないと言うしかない。

また、論文があるかどうか、という、この質問者が執着する視点に立てば、元に戻りましたなどという論文などない。だから、この質問者の考え方に沿えば、「論文がない以上、そんなことは起こっていない」わけで、「元に戻る」などという現象は起こっていないことになる。
実はそれどころか、空中に浮遊しているとき、水のひとつひとつの分子に何が起こっているかなどという研究さえないのが実情である。だから、比較のしようがない。元に戻るもヘッタクレもないのだ。

そしてここでも、<2>が間違いである直接的な証拠がある。

我々の実験の結果、水分子が磁場によって受けた影響は、磁場から外れたあと、数週間は持続することが分かったのだ。我々はこのことも、しかるべき学会に報告する。


<3>は正しい・・・が

磁石で処理した水が人体に有益な作用を及ぼすということを証明するデータは存在しない

という主張は、ある程度は正しい。
「データ」という言葉が科学論文として、という意味なら、そういうものは存在しないようである。

それに、原理的に言って、「磁石で処理した水が人体に有益な作用を及ぼす」という理屈は、いきなりは成立しないだろう。水を磁場に通すということと、人体の機能とか健康とかは、直接は関係のない独立の事象と考えるべきだろう。

ただし、結果としてどうか、ということは、また別の話である。

たとえば、我々の体験では、我々の装置を通した水を常飲していると、高血圧の人の血圧が正常値になることが、しばしば起きる。その人たちは、医者から 「一生飲み続けなさい」と言われた血圧降下剤の服用をやめることができるのである。
血糖値が下がる。皮膚がきれいになる。歯がつるつるしてくる。結石が溶けて割れて外に出る。
そういうことが多く起きていて、一方で、悪いことは起きていない。
人間だけではなく、犬でも猫でも牛でも、最近の実験ではネズミでも起きている。
動物だけではなく、イチゴやトマトやお米にも起きている。

生命は水で出来ており、水が変わったことで何事かが起きているわけだから、いまはまだ説明できてはいないが、将来的には、その因果関係が科学的に説明できる可能性は大いにある。その説明の端緒として、磁場を通った水は、

1.界面活性が高い
2.噴霧すると空気中に負電荷が大量に発生する

という、測定されている2つの物理的特性をあげることができるだろう。

健康に関しては、我々は、医者を巻き込んだ実証試験を計画している。その計画の基礎的情報として、上述したような「民間伝承」が考慮されねばならない。因果関係が科学的に説明できていないから、民間伝承はすべて業者のウソである、などということでは、「科学」は社会的責任を果たすことはできない。

天羽氏は、磁気活水器業者の一部が、磁石を通った水と人体の健康との間に、因果関係があるかのように言っていることに対して、まだ、データがないじゃないか、それはニセ科学だ、と言って非難するのだが、そのとき注意しなければならないのは、相手を十把一絡げにしてはいけない、ということである。
そういう業者もいるだろうが、そうではなく、因果関係には慎重な言い回し、あるいは因果関係は分からない、と明言している業者もいる。

しかし、因果関係には慎重であっても、起きた結果、起きている事実を言うことには問題はない。
むろん、薬事法とか表示法などがあって、言っていいことと悪いことはあるが、それが虚偽ではなく事実として起こっているなら、それを適法なやり方で人々に伝えることに何の問題もない。

天羽氏は、新しい事実があると言うなら、それを言う者に、それを科学的に証明する義務がある、と言っているが、それは科学者ギルドの内部規範ではあろうが、実業界にはそんなルールはない。天羽氏が「水商売ウォッチング」の巻頭で言うように、「理屈は分からなくても結果が出ているなら、ビジネスはそれでよい」というのが実業界のルールだ。
たとえば、燃費の良いエンジンを開発したら、それをどんどん売っていいのである。実際に燃費がよくて顧客が満足すれば、それでよい。いちいち科学論文を出さなきゃ売ってはいけない、などということはないのである。


最後に、

これが私の知る磁気と水の関係なのですが、私の知らぬ間にこれをひっくり返すような新事実が発見されたのでしょうか?

と、この質問者は問うているが、ひっくりかえすような新事実があったわけではない。
この質問者の理解が、初めから、ひっくり返っているだけである。

まさか、自然界とか理学とかに対するこの程度の理解力で、「私は理学者だ」とは、この質問者は言わないだろうが、もし、この質問者程度にしか自然界や理学を理解できない者が、たとえば就職先も見つからないポスドクの若輩の身で、自分は理学者だと錯覚して、大学の権威をふりかざして、「司直に代わって悪徳業者を裁く」などとやり出したら、周囲は大いに迷惑するだろう。

目に見えるようだ。


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