◎「高落札率」の割合 改革意欲の指標になりうる
日弁連の全国調査で、四十三道府県(四都県は回答不備)が今年度上半期に発注した工
事の入札件数のうち、落札価格が予定価格の90%以上だった「高落札率」の割合は平均で58%に達し、石川は85%、富山は81%と高い水準にあることが分かった。この割合が高いからといって談合が疑われる状況とは言い切れないが、入札制度改革が進んでいる地域ほど低い傾向がみられるのも確かである。
官製談合事件で知事が逮捕された宮崎県では〇六年度の83%から25%まで下げてお
り、この数字は自治体の改革意欲を反映する一つの指標になりうるだろう。石川、富山県も一般競争入札の拡大などで他県に遅れないようにしてもらいたい。
日弁連の調査は、全国知事会が〇六年十二月に出した入札改革指針の成果を検証する目
的で行われた。高落札率の割合が最も小さいのは長野の10%で、次は宮城17%、大阪、宮崎25%。最も高いのは鹿児島の87%で、千葉、山梨、石川と続く。富山も高い方から八番目だった。道府県でこれだけ差が生じたのは入札改革の進捗状況と無関係ではない。
全国知事会の指針に合わせ、予定価格一千万円以上の工事で一般競争入札を導入してい
るのは、二百五十万円以上の山形、岩手、神奈川などを含め十二府県にとどまっている。一般競争入札を拡大したところは総じて高落札率の割合が低く、競争性が高まったとみていいだろう。一般競争入札の対象は石川県が予定価格三千万円以上、富山県は二千万円以上だが、知事会が指針で示した目標を早くクリアしてほしい。
落札率の高止まりについては、積算基準が公表され、企業が高い精度で見積もりができ
るようになったとの声が建設業界から聞かれ、自治体からも予定価格を厳密に算定して市場価格を反映させた結果との指摘がある。これに対し、日弁連は高落札率の割合を、談合が疑われる状況証拠の一つとして重視し、20%以下が望ましいとしている。
福島県では、昨年十月に全廃した指名競争入札を四月から一年間、試行的に復活させる
ことを決めた。この方針転換については改革に逆行するとの指摘も挙がっている。全国知事会としても改革の温度差や問題点を自ら検証する必要があろう。
◎チベット騒乱 聞く耳持たぬ中国政府
中国チベット自治区ラサで起きた大規模な暴動は、民族の自治の確立や自決権に対する
チベット族の抑えがたい要求の強さと同時に、共産党一党支配の中国でチベットの「独立」を実現することの難しさをあらためて思わされる。
チベット亡命政府の指導者であるダライ・ラマ十四世は、チベットの「高度の自治」を
求めている。チベット族の文化や信教の自由を抑圧して「中国化」を図る中国政府に、国際的な人権批判がなされており、自治区の僧侶や住民のデモを「ダライ・ラマ一派の陰謀」と非難する中国側の主張より、真相究明を求めるダライ・ラマを支持する声の方が国際社会で広がるとみられる。
しかし、そうした国際社会の声を聞き入れる耳を、今の中国政府が持っているとは思わ
れない。天安門事件以降も、中国政府の性格は基本的に変わりはないのであり、ダライ・ラマを「独立を目指す分裂主義者」と批判している。北京五輪を前に、「分裂」を図る動きに対しては、力による抑え込みが、むしろ強まるとみた方がよいだろう。
それにしても、今回のラサの暴動はタイミングを計って引き起こされたようである。中
国の国会である全人代で、二期目の「胡錦濤―温家宝体制」がスタートする時であり、総統選挙が迫っている台湾では、制定三周年を迎えた「反国家分裂法」に抗議する独立志向派の動きが強まっている時である。チベット族の抵抗は台湾総統選にも少なからぬ影響を及ぼし、劣勢が伝えられる独立志向派の民主進歩党候補の追い風になるとの見方もなされている。
胡体制の新たな船出に合わせた今回のラサ暴動は、歴史的な因縁も感じさせる。一九八
九年のラサ暴動の時、自治区トップの共産党委員会書記として、武力鎮圧の先頭に立ったのが胡氏である。その時の功績が、以後の昇進につながったのであり、過去の栄誉を自己否定するような温和なチベット政策は、胡主席に望むべくもない。
それでも、チベット族の間には、大量の漢民族移住と市場経済政策で独自のチベット文
化が消滅することへの危機感が強く、民族的な要求は絶えることがなかろう。