第
21 回市民ふくし大学
- 場所 尼崎市女性センター「トレピエ」
- 開講日 平成17年10月12日〜11月9日
俳優/
小山 明子氏
小山 明子氏
二人三脚で乗り越えた介護の日々
今日は誰もが降りかかるかもしれないという話をします。平成8 年2 月イギリスで映画を撮る直前に夫の大島が倒れました。脳出血で、命に別状はなかったものの右半身が麻痺、舌もまわらない状態で、今でも完全には治っていま せん。私は、妻として何ができるだろう、と自分に問い、家中をバリアフリーにしたり、リハビリを手伝いましたが現実は大変でした。それにリハビリには本人 の気力も必要。大島は辛くても映画をまた撮りたいという思いが強く、リハビリを頑張って続けることができました。辛いはずなのに苦しいと弱音は言わず、私 に「ありがとう」と一言感謝の言葉を。
介護は「してあげる」のではなく、「させてもらう」「明日は無いかもしれない」と思えば、今日一日を精一杯生きられる。名声や肩書きではなく、一人の人 間として生きなければいけない時が必ず来る。「過去を手放して、一からのスタートに立つ」と思うのは大切なこと。自分が楽しくなくては介護はできない。皆 さんにも「どうしたら楽しく生きられるか?」という事をこの機会に考えてほしい。
私は、楽しく生きることとは「手放すこと」「感謝すること」「ユーモア」この三つが大切なことだと思います。
厚生労働省
障害福祉専門官/
大塚 晃氏
障害福祉専門官/
大塚 晃氏
障害者福祉を地域で
社会生活に支援が必要な方を障害者と言います。身体障害者が約350 万人、知的障害者が約46 万人、精神障害者は約200 万人、全体で障害者は約600 万人ぐらいと言われています。我が国の人口は約1 億3 千万人ぐらいなので、約5 %ぐらいが障害者です。今では、障害者福祉の考え方が変わってきています。障害のある方も普通の生活をしようという「ノーマライゼーション」の考え方が広 がってきたからです。平成15 年4 月に支援費制度が始まり、ホームヘルプサービスの利用者が増えてきました。この制度によって、地域で生活しようとする人が増えたからです。障害のある方が 働けるようにしようとも考えています。そのためには訓練が必要だと思います。障害者も働く機会さえあれば、自分のもつ力を発揮して働くことができると思い ます。社会に参加するということは苦痛もありますが、喜びもあります。自分で働いて生活していくのはとても重要です。重度の方で働けない人もいますが環境 を整えれば働ける方はもっと増えます。
福祉とは、障害者の方たちと一緒に地域で生活し、まちを作っていくものだと思います。事業をする方も含めて、みなさんにも障害者福祉にもっと関心をもっ ていただければと思います。
ウィメンズネット・こうべ代表/
正井 礼子氏
正井 礼子氏
ドメスティック・バイオレンスとは〜もしあなたが相談を受けたら〜
あなたが相手を怖いと感じたらそれはDV(ドメスティック・バイオレンス)なのです。各都道府県に配偶者暴力相談支援センターがあり、一時保護してくれます。DV を受けた女性の75 %の方がPTSD (心的外傷後ストレス障害)で、心理的な虐待を受けてきたり、性的な虐待を受けてきた人ほどPTSDが深刻である状況です。DV の対応は個人の問題ではなく、社会の問題です。DV は無くなることはないでしょう。逆に何も対応しなければエスカレートしていきます。
DV について正しい知識を持った人を育て、地域でのDV 被害者のよき相談相手になってくれたらと思い、平成13 年から「DV 被害者サポーター養成講座」を開催しています。カウンセリングや法律の基礎、社会資源といったことについて学んでいます。何より相談を受けるうえにおいて は、自分のもっている価値観で聞くのではなく、例えば被害者が今までずっと信じてもらえなかった事を私は信じますよ、というように傾聴すれば被害者は自分 の力を取り戻すことができ、そこから被害者は変わっていくものなのです。
弁護士/
谷村 慎介
谷村 慎介
わかりやすい成年後見制度
平成12 年4 月に民法が改正され、従来の準禁治産・禁治産宣告に代わって、成年後見制度が施行されました。介護保険制度の実施を皮切りに、福祉サービスの利用が、行政の決定する「措置」から「契約」に変わってきました。「契約」は、自己責任のもとに自己選 択・自己決定を行うものですが、高齢者・知的障害者などで、判断能力の不十分な方は、適切な福祉サービスを選択し、利用契約を結ぶことは困難です。
いずれ判断能力が鈍くなるかもしれない、その時に判断能力が十分な時と同じ判断ができればいいのですが、できない場合もあるかもしれません。誤った判断 でなされたことについて自己責任だというのは無理があり、誤った判断で本人がしてしまった事については、誰か援助する人をつけて取り消したりしないと、生 活に問題が生じます。判断能力が不十分だといっても、色々な程度があります。自分で判断できる部分と判断できない部分があります。判断できない部分を援助 するのが、成年後見制度になります。
尼崎市社会教育委員・富松神社宮司/
善見 壽男
善見 壽男
地域でともに生きる〜幻の豆「富松一寸豆」の復活〜
私の少年時代、富松地区は遥か一面に水田、畑が広がり、近くの東富松川にはフナ、ドジョウ、タニシだけではなく、シジミまでいました。ホタルも飛んでいま した。かつて、富松地区はソラマメ「富松一寸豆」の名産地で特産品としても各地に出荷されていましたが、田畑の減少などで、約二十軒の農家が自家消費用に作る 「幻の豆」になっていました。
そこで、宅地化が進んだ富松地区の新旧住民の間に地域の歴史、文化を共有する試みとして「富松一寸豆」を復活させたところ大反響でした。作り手の旧住民 と消費者の新住民が、この活動で結ばれたのです。こうした活動は、尼崎北小の児童と地域住民が交流する「農業体験学習」をはじめ、以後、毎年続けていま す。
まちづくりは、そこに住む人、働く人の地域を愛する心をどう結びつけるか、どう個性を引き出すか、その考え方がなくてはよいまちづくりはできません。地 域を誇れるまちづくりの取組の輪を多くの人と力を合わせ広めていくことが大切と考えます。