2008年3月16日
児童ポルノ/法改正し「所持」も禁止を
幼い子供を性欲の対象として描いた写真や動画が摘発される事件が後を絶たないことから、日本ユニセフ協会は「なくそう!子どもポルノ」と銘打った署名キャンペーンを開始した。「児童買春・ポルノ禁止法」を改正して、「単純所持」と「アニメ・漫画」を規制しよう、というのが柱で、このキャンペーンを支持したい。
子供の被害数が急増
わが国で同法が成立して九年になる。二〇〇四年に一度改正し、罰則の強化と規制範囲の拡大を図ったが、児童ポルノは根絶に近づくどころか、逆に急増している。
警察庁によると、昨年一年間に立件された児童ポルノ事件は五百六十七件で、五年前の三倍になった。被害に遭った子供の数は三百四人で、こちらは五倍の急増ぶりだ。当然、この数字は氷山の一角にすぎない。わいせつな行為や被写体になることを強いられて泣いている子供がどれほどいるか、分からない。この現状を見れば、現行法に重大な欠陥があるとしか言いようがない。
その一つが、処罰の対象に「所持」が入っていないことだ。現行法は児童ポルノの制作、販売、それに提供などは禁じているが、“趣味”として持つことは規制の対象外である。
幼い子供をレイプするなど重大な犯罪と密接にかかわって制作されることの多いのが児童ポルノだ。しかも厄介なのは、この写真や動画がいったんネット上に流出すると、回収不可能で、被害者は一生苦しみ続けることになる。このため多くの先進諸国は、児童ポルノにかかわることは重罪として、所持さえも許さないのである。
所持を禁じていないのは、主要先進八カ国(G8)の中では、日本とロシアだけだ。また、わが国の現行法は、違反者への罰則は最高で懲役三〓五年と軽く、供給も需要も絶つことができずにいる。
この結果、国内で忌まわしい市場の拡大を招いているだけでなく、ネットを通じた画像の海外流出も多く、わが国への国際的な批判が高まっている。恥ずべきこの状況を放置しておくことは政治の怠慢である。自民党は現行法を改正して、「所持」を禁止する方針を固めたが、ぜひとも今国会での法改正を実現してほしい。
所持の禁止は前回の改正時にも検討された。しかし「表現の自由の侵害」や「捜査権の乱用」につながるなどの理由で、見送られた経緯がある。今回も改正案が提出されれば、同じような反対意見が出ることが予想される。
もちろん、国民の権利侵害を招いてはならない。しかし、既に所持を禁じている国で、国民生活を脅かすような表現の自由の侵害や捜査権の乱用などの混乱が起きているとは聞かない。わが国でも国民の権利を守りつつ、所持を禁止することは可能だろう。
このほか、欧米では禁じる国の多い、わいせつなアニメ・漫画などの疑似児童ポルノが表現の自由の名の下で野放しにされている現状も、法改正によって改善する必要がある。幼い子供がレイプされる場面などを描いた漫画が書店に並ぶのは国家としての恥である。
対策の後進国となるな
十一月には、第三回子供の商業的性的搾取に反対する世界会議がブラジルで開かれる。一九九六年に開かれた第一回の同会議で、日本は児童ポルノの発信地として非難を浴び、それが法制定につながった。わが国の法改正には、国際的な関心が集まっている。現行法の不備を放置しておけば、児童ポルノ対策の後進国として、再び汚名を着せられることになろう。