清楚(そ)に、あるいは愛らしく。明るい陽光の中で、花々が存在感をぐんと増してきた。ものみな動きだす春は、新たなスタートへ心弾む季節だ。
山陽新聞社はけさの紙面を、そんな気持ちで送り出した。「目に優しく読みやすく」と拡大文字を導入したからだ。つぼみが花開くように大きくなった活字の印象はどうだろう。この欄も装いを一新した。
拡大文字の愛称は「Q字」。質や内容を表す英語のQualityから名付けた。新聞は読むことで想像を膨らませ、じっくり考えられる。さまざまな情報も詰まっている。読みやすさが増せば、持ち味を一層感じてもらえよう。
「Q」といえば、映画監督の大林宣彦さんが著書「なぜ若者は老人に席を譲らなくなったのか」の中で、クエスチョンマークの大切さに触れている。生涯学習や子どもの教育の根本は「なぜ」「どうして」という気持ちを磨き、大きく育てていくことだと。
複雑で価値観が多様化した現在、答えが容易に見つかることばかりではない。喜びや悲しみを読者のみなさんと共有しながら、ともに「なぜ」を大切にしていきたい。
人気漫画に「オバケのQ太郎」があり、女子マラソンの高橋尚子選手は「Qちゃん」と親しまれる。Q字の新しい新聞が、より多くの人々から愛されればうれしい。