暗中模索で商用化に入る中国のIPTV |
2006/12/28(木) 18:43:09更新 |
【中国ITの潮流】不透明な政策に事業者から非難の声も−サーチナ総合研究所 中国のIPTV事業が迷走を続けている。 12月1日に吉林省・長春市において、IPTV(インターネット・プロトコルテレビ)の商用化が開始された。中国で3番目の商用化地域が登場し、中国のIPTVが本格的な事業化段階に移行したとのニュースが飛び交った。しかし、現在に至るまで具体的な事業モデルも明らかにされず、事業者たちも手探りのまま事業を開始しようとしている様子だ。
現在のところ、既に商用化が開始されたのは上海市と黒龍江省・ハルピン市の2都市のみで、UTスターコム社のデータによると、上海市における加入件数は7.1万件、ハルピン市の加入件数は9.2万件に達した。しかし、上海市とハルピン市のケースは特殊な成功事例とみられており、事業者側は、地域特有の事業モデルではなく、統一された基本的ビジネススキームが確立されることを望んでいる。
中国のIPTV事業は、この基本スキームの確立という点において、長い間迷走を続けてきた。政府が明確な政策路線を発表しないために、各地方に不統一な事業モデルを出現させてしまい、確固とした事業モデルを見つけ出せていない。そのため商用化の段階になっても事業の見通しが不透明になっている。
このような迷走の原因の一つとして、行政所轄部門間の対立が挙げられる。IPTVは技術的、法制度的に横断部分が多いため、中国に限らず、アメリカでも韓国でも、IPTVをめぐるこの行政部門間の権益争いが生じているのは事実である。中国において特徴的なのは、放送部門をつかさどる「国家広播電視総局」と通信部門を司る「情報産業部」の立ち位置の違いであろう。「広電総局」は、国の言論統制部門との繋がりが比較的強いために、相対的に地位が高く、今回のIPTV事業においても、事業免許の交付面で優位な立場を維持してきた。これまで、IPTV事業免許を交付したのは、上海文広新聞伝媒集団(SMG)、央視国際、南方広電伝媒、中国国際広播電台(CRI)の放送事業者4社のみで、通信事業者には未だ門戸が開かれていない。
その結果、これまで商用化が実現しているのは、「広電総局」と繋がりの強いSMGが積極的に展開した2地域(上海市とハルピン市)のみである。今回の長春市での商用化も、「広電総局」と密接な関係にある中央電視台の傘下にある央視網絡と瀋陽網通による商用化という点において、放送事業者中心のものとみなされる。
11月17日に開催された「第2回IPTV中国サミット」でも、このような現状に対して、通信事業者を中心に非難の声が相次いだ。「広電総局」を中心に展開されたこれまでのIPTV事業は、産業全体に悪影響を及ぼす可能性があるという懸念が強まっているのである。
その一例が、11月下旬に発表された独・シーメンス(SIEMENS)の撤退である。シーメンスは、IPTV設備の最大手であるが、UTスターコム、華為科技(Huawei Technologies)、中興通訊(ZTE)、マイクロソフト(Microsoft)などの競合がひしめく中でも技術的優位性を確保していたが、今回上海市場をはじめとした中国市場から撤退することを明らかにした。市場の拡大が予測される中での撤退は様々な憶測を呼んでいるが、政府のIPTV事業政策の不明瞭さが、撤退の一因となっていることは否定できない。
「広電総局」は未だIPTV産業の未来像を明らかにしていない。市場のプレイヤーたちは一刻も早くIPTV事業展開に向けた道筋が示されることを望んでいる。(サーチナ総合研究所研究員 行武良子)
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