教育の管理強化を進める国に対して、去年5月老朽化した学校を公開して、「大切なのは教育にかける予算だ」と、真っ向から対抗した校長先生がいました。
朽ちたトイレなどの驚くべき実態は、全国で大きな反響を呼びましたが、あれから10か月、学校はどうなったのでしょうか。
福岡県の太宰府市の中学校のトイレ。
これは去年5月の映像です。
隣のトイレが透けて見えていました。
あれから10か月、再び学校を訪ねました。
老朽化で朽ち果てたトイレのしきりの壁は、きれいに補修されていました。
あの影響。
去年5月、野中校長は、国会議員と向かい合っていました。
当時、国会では、教育基本法改正案の審議の真っただ中。
国は、学校現場に対する関与を強化しようとしていました。
全国に先駆けて開かれた公聴会で、野中校長は、「今の学校現場に必要なのは、管理強化のための法改正ではなく、十分な教育予算だ」と訴えたのです。
国に必死で訴える校長の姿と、老朽化したまま放置されている校舎の様子は、全国に報道されました。
反響は大きく、国に物申した校長に対して、賛否両論がありましたが、校長を後押ししたのは、地域の人たちでした。
そして、文部科学省の担当者も校舎を視察、トイレの改修費として、150万円あまりの予算がついたのです。
新たに、バリアフリー対応の洋式トイレも500万円かけて整備されました。
しかし、校舎にはまだ手付かずの場所もあります。
野中校長の思いに反して、国の管理強化を盛り込んだ改正教育基本法は可決されました。
予算規模の小さな自治体ほど教育予算の確保が、難しいという現実は変わっていません。
しかし、野中校長は、現状を訴えた意味はあったと思っています。
実は、この白い壁は、生徒たちが塗ったものです。
戦う校長の姿を見て大きく変わったのは、生徒たちでした。
築30年の汚れた壁は美しくなり、今では落書きもなくなったといいます。
今月、野中校長は、定年を迎えます。
教員になって、最後の卒業式。
無事役目を終えた野中校長に、生徒が呼びかけました。
「先生!ステージにあがってください」
「ありがとうございました」卒業生から・・・・・。
法律の改正で、今年度から4年間は、学校現場が大きく変わります。
「授業数の増加に、教員の免許更新。予算の増加が見込めない中、教員はますます忙しくなり、生徒と向き合う時間が減るのではないか、非常に危惧しています。」
教員生活は残りわずかですが、退職した後も学校の変化を見続けたいと思っています。