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2008年03月10日

男児にわいせつ、被告人の奥さんが被害者に見えたよ

 最近は無罪判決が多い。無罪ブーム到来ですね。3月3日(月)は東京高裁で器物損壊の裁判で無罪。同4日(火)は東京高裁で事後強盗の裁判で無罪。同7日(金)は、東京地裁で電磁的公正証書原本不実記録の裁判で無罪。東京だけで1週間に3つも無罪判決ですよ。他の裁判所では、福岡地裁小倉支部で(一部)無罪の判決があって、高知地裁でも無罪判決。

 99・8%が有罪という日本の刑事裁判の現状で、これらが1週間のニュースってのが信じられないですね。先々週だって、東京地裁で1つ、大阪地裁で1つの無罪判決。いったい、どうなってんだ? 検察の強引な起訴が増えてるのか、裁判官がちゃんと審理するようになったのか。今までは起訴されれば、ほとんど有罪だったんだけどね。これって国民1人1人に警察、検察に対する疑いの目を持たせる作戦じゃないかと深読みしてるんだけど。要するに、裁判員になりたがる人を増やそうとしてるのでは、と。考えすぎですかね。

 今週は3月4日(火)に行われた志岐善啓 被告人(32)の裁判傍聴記。罪名は強制わいせつ。

 小学5年の男児(10)にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつと児童福祉法違反の疑いで、コンピュータグラフィック制作会社経営志岐善啓が逮捕された事件です。報道された内容をまとめると以下のような感じ。

 07年9月29日昼ごろ、「ゲームをやりにおいで」と経営する会社事務所に男児を誘い「プロレスごっこをしよう」などと言って裸にし、わいせつな行為をした疑い。
 男児の裸を携帯電話で撮影し、「両親には言わないように」と口止めしていたという。事務所を訪れた知人がわいせつ行為を目撃し、警視庁に通報していた。調べに対して「男の子がかわいくてしょうがなかった」と供述したとか。

 逮捕容疑は2つだったけど、起訴は強制わいせつだけでした。幼い女児に対してわいせつな行為をしていたという事件はあるけど、男児にってのは少ないです。変わった事件ってことですね。同性愛者が少数派なのに、それに加えて小児性愛者となると、かなり少ないだろうから当然か。

  検察官の冒頭陳述によると、被告人には妻子がいて、被害男児は被告人の息子の友人とのこと。どうやら、被告人の会社事務所にはテレビゲームが置いてあって、息子の友人が多数遊びに来ていて、被害男児はその中の1人だったようです。
 07年9月29日。被告人は自ら主催した同性愛者が集うオフ会に参加。しかし、10分程度で退席し、被害男児がテレビゲームをしている会社事務所へ。エアベッドの上で、被害男児を裸にしてわいせつな行為に及ぶ。そして、オフ会に集まった人たちが会社事務所へ行って、わいせつ行為を目撃した、というのが事件の詳細のようです。

 取調べでは被告人は「インターネットの掲示板で知り合って、気が合えば男性と会っていた」と、同性愛者であることを認めたうえで「私にとって男性は性的対象ですが、女性に抱くような恋愛感情はありません」とも述べているようです。そして、わいせつ行為に関しては、「今まで(被害男児に)3回は行っていた」と容疑を認めているとのこと。
 まずは、被告人の妻への証人尋問です。

 弁護人 「旦那さんが、男性、男の子に性的興味があることは以前から知ってました?」
 証人  「知ってました」
 弁護人 「心配しませんでした?」
 証人  「していました。児童の性的虐待のニュースを見るたび“あなたは大丈夫なの?”と聞いていました。事務所に子供を入れるのも止めた方がいいって言ってました」
 弁護人 「大丈夫だから、と?」
 証人  「そうですね」
 弁護人 「夫の言葉を信じた、と?」
 証人  「信じるしか、なかったです」

 いろんな夫婦がいるもんなんですね。夫が外で女性と浮気をしてるんじゃないかという疑念を持つのはあるだろうけど、男児にいたずらするんじゃないかと心配しなきゃいけない夫婦関係って。

 弁護人 「事件のこと、2人のお子さんは知ってるんですか?」
 証人 「事件を起こしたのは知っていますが、内容までは」
 被害男児と同世代の子供だからね。知ったら相当ショックを受けるだろうなぁ。

 次は検察官からの質問。

 検察官 「3回はわいせつ行為をしてたようなんですが、気づきませんでした?」
 証人 「ゲームをしに来てる子がいたのは知ってたんですが」
 検察官 「被告人と離婚しようとは?」
 証人 「…悩みましたが、支えようと思っています」

 今後は被告人の実家で農作業を手伝い、しっかりと監督することを誓っていました。夫婦って大変なんですね。証人が被害者のようにも見えてくる悲壮感ったら、もう。
 そして、被告人質問です。まずは、弁護人から。

 弁護人 「本件は、性的欲求を満たすための犯行ですね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「男の子に興味があるんですか?」
 被告人 「いや、男性、全般に…」

 男児に限らずってことでしょう。

 弁護人 「事務所は8年間借りてたようですが、他の男の子が来たことはあるんですか?」
 被告人 「あります」
 弁護人 「本件と同様の行為は?」
 被告人 「ありません」
 弁護人 「じゃ、なぜ今回こんなことを?」
 被告人 「被害者は、人懐こくて、自分の体をベタベタ触ってきていたので」
 それは被告人の思い込みのような気もするんだけどなぁ。本当のことだとしても、被害男児が性的な意味合いで触ってきていたわけじゃないのは言うまでもないでしょう。
 弁護人 「取調べで“男の子に対して悪い”と述べていたようだけど、それは法律的に?」
 被告人 「道徳的に悪いな、と」
 弁護人 「逮捕されるまで、法律的に悪いとは思っていなかった?」
 被告人 「はい」

 そんな認識あるのかねぇ。32歳のいい大人ですよ。しかも、この手のニュースは他の人より注目していたと思うんだけど。

 弁護人 「両親とは示談が成立してますけど、精神的苦痛を与えてますよね」
 被告人 「申し訳なく思ってます」
 弁護人 「同い年のお子さんがいますから、両親のショックはわかりますね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「悪いことだと分かりましたか?」
 被告人 「犯罪だという認識をちゃんと持ちました」

 同じ過ちは二度としない等約束して質問終了。
 次は、検察官からの質問です。

 検察官 「オフ会は数日前にわかっていましたよね。被害者との時間をずらそうとは?」
 被告人 「オフ会の直前に電話がありまして」
 検察官 「あなたが皆を集めてオフ会を開いたんですよね。それが、仲間を残して10分で退席したんですよね。その時から、わいせつ行為をしようと思ってたんじゃないですか?」
 被告人 「…いや…」

 と、声が小さくて否定しているのか認めているのか全くわかりません。ここから、バツが悪いのか小声で歯切れが悪くなるのです。

 検察官 「さっき、法律的に悪いと思ってなかったと答えてましたけどね、こういうニュース見て、犯罪とは思わなかった?」
 被告人 「まぁ…あの…、深く考えていませんでした」
 検察官 「被害者の将来と影響とか考えなかった?」
 被告人 「…その時は…」
 検察官 「あなたが被害者の親の立場なら、許せますか?」
 被告人 「…」

 小声どころか、ついに口ごもる被告人。

 検察官 「どうなんですか!」
 被告人 「…」
 検察官 「ん?」
 被告人 「…許せないと思います」

 脅されるようにやっと答える被告人。

 検察官 「今後男の子に性的欲求を感じたら同じことやりませんか?」
 被告人 「やりません」
 検察官 「なぜ、そう言えますか?」
 被告人 「犯罪という認識がキチンとできました」

 と述べて質問終了。この後で、検察官は、ゲーム機で被害者をおびきよせ、人権を害する悪質な犯行として懲役3年6月を求刑。弁護人は、示談がすんでいること、前科がないことを理由に執行猶予を求めて閉廷でした。
 飲酒が原因なら酒をやめればいいし、金に困っての犯行なら生活基盤を立て直せばいいんだけど、性癖が原因だとどうしようもないんだよね。性癖は治すってもんじゃないし。一生かかえて生きてくもんでしょ。
 で、被告人は「犯罪と認識したから」同じことはしないって言ってるけど、道徳的に悪いって思ってても歯止めが利かなかったんだよね。不安だ。法律的と道徳的ってそんなに違いがあるのかねぇ。本来、みんながマナーを守れば、ルールなんていらないはずなんですよ。きれいごとかもしれないけど。

注目の裁判

3月17日(月)被告人・南雲安里:傷害致死(判決)
<3歳女児を虐待で死亡させた事件> 05年12月、大孝玲奈が東京都練馬区で3歳の娘を知人の南雲安里(当時30)と共謀して虐待、死亡させた。

3月17日(月)被告人・又吉剛:詐欺、有価証券偽造・同行使など(初公判)
<偽造パスモによる詐欺事件> 08年1月、元東京都交通局職員、又吉剛(当時28)は、偽造したICカード定期券「パスモ」を払い戻し、約23万円をだまし取ったとして逮捕された。07年9月10月にかけ、当時勤務していた都営新宿線馬喰横山駅で、偽名で購入した磁気定期券のデータを3枚のパスモに不正にコピーして、別駅で払い戻していた。

3月17日(月)被告人・植草一秀:東京都迷惑防止条例違反(控訴審初公判)
<有名な経済学者による痴漢事件> 06年9月、経済学者の植草一秀(当時46)は京急線の品川駅~京急蒲田駅間の電車内で女子高生に痴漢行為をしたとして、東京都迷惑防止条例違反の現行犯で、警視庁に逮捕された。被告人は容疑を否認している。

3月17日(月)被告人・佐々木ミツ子:商標法違反(初公判)
<マンチェスターUの偽ユニホーム事件> 08年1月、ヨルダン国籍の露天商・ディアブ・ガッサン・ハッサン・サイ(当時53)と妻の無職・佐々木ミツ子(当時63)は、高校サッカーの決勝会場だった国立競技場近くに露天を出しマンチェスターUの偽のユニホームを販売目的で所持していたところを逮捕された。

3月17日(月)被告人・小島重網:婦女暴行未遂(初公判)
<偽の警察手帳を使った婦女暴行未遂事件> 08年1月、無職小嶋重綱(当時71)は、友人と話をしていた都内の女子短大生(18)に「たばこを吸っていただろ」などと脅して河川敷に連れ出し「騒いだら殺す」と短大生を乱暴しようとした疑い。

3月18日(火)被告人・吉井誠:殺人(判決)
<フィリピンでの不動産会社社員殺害事件> 05年7月、不動産会社社長の吉井誠(当時49)山本俊孝(当時53)らは保険金目的で、フィリピンで男性社員(当時41)を射殺した。共犯の元社員は1審で懲役23年、22年を言い渡されている。

3月18日(火)被告人・上鈴木広行:昏睡強盗
<昏睡強盗事件> 07年7月、無職上鈴木広行容疑者(当時41)らは、東京・歌舞伎町のスナックで男性を酔わせて現金を奪ったとして、逮捕された。上鈴木が女装して客を呼び込み、ほかの者が酒をつくったり、客を装って酒を勧めたりして昏睡状態にさせていた。

3月18日(火)被告人・町田巧:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反など(初公判)
<振り込め詐欺グループによる詐欺事件> 07年5月、融資保証金名目で金をだまし取ったとして、都内を拠点とする振り込め詐欺の2グループの仕切り役の町田巧(当時25)ら15人が逮捕された。

3月18日(火)被告人・倉岡宏行:殺人未遂
<俳優による殺人未遂事件> 07年9月、俳優倉岡宏行(当時28)は、東京都港区の芸能事務所で、プロデューサーの男性(52)の足などを登山ナイフで数回刺し、2週間のけがを負わせた。倉岡は「岡崎礼」の芸名で、Vシネマを中心に出演。約半年前に事務所を解雇され、謝罪して復帰を求めていたという。

3月18日(火)被告人・村田騎士郎:強制わいせつ、住居侵入など
<連続婦女暴行事件> 07年12月、無職、村田騎士郎(当時28)は、女性のあとをつけてマンションに入り住居侵入の現行犯で逮捕、起訴された。その後、コンビニエンスストア前で目をつけた女性のあとをつけ、胸を触った事件で再逮捕されるなど、一連の連続わいせつ事件への関与などが明らかになった。

3月18日(水)被告人・中島恒雄:強制わいせつ(初公判)
<東京福祉大総長によるわいせつ事件> 08年1月、東京福祉大総長、中島恒雄(当時60)は強制わいせつ容疑で逮捕された。07年2月に教員の女性(当時41)を総長室に呼び出し無理やりキスをしたり、胸を触ったりした。

3月18、19、21日(月、火、金)被告人・犬飼宗一郎:強盗傷害(初公判)
<女性を車ではねて金を奪おうとした事件> 08年1月、無職犬飼宗一郎(当時49)は、東京都墨田区の路上で通行人の女性を車ではね、金を奪おうとして逮捕された。

3月19日(水)被告人・佐藤栄佐久 佐藤祐二:収賄
<福島談合事件> 福島県知事の佐藤栄佐久は、福島県発注の大型ダム工事をめぐり、実弟の佐藤祐二経営の縫製会社の土地を時価より高値で買い取らせる形でゼネコンからわいろを受け取った。

3月19日(水)被告人・伊能勢祐輔:傷害(判決)
<横断歩道でけんかして相手が自動車にひかれた事件> 07年8月、工員伊能勢祐輔(当時22)と運転手大砂勇樹(当時23)はJR亀戸駅前の歩道で、理容師徳丸和幸さん(当時28)と、友人の男性(当時33)の2人を殴るなどして負傷させた。さらに横断歩道上で追いかけてきた2人に暴行。その場に座り込んで動けなくなった徳丸さんが、青信号で進んできた乗用車にはねられ、死亡した。

3月19日(水)被告人・市川和久:詐欺未遂、有印私文書偽造・同行使
<ジャーナリストらによる詐欺事件> 07年9月、フリージャーナリスト二瓶絵夢容疑者(当時31)元衆院議員秘書で広告会社社長市川和久容疑者(当時45)らは東京・表参道の不動産に関して、架空の売却話を持ち掛け内金名目で11億円をだまし取ろうとしたとして、東京地検特捜部に逮捕された。二瓶は自民党の有力議員のインタビュー記事などを雑誌に執筆するなど活躍し、北朝鮮との交渉に同行するなどしていた。

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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