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将棋を始めてから何度も壁にぶつかった。その度に「本当に将棋が好きだ」と感じた


4. 棋士/坂東 香奈子


坂東香菜子(ばんどう・かなこ)
女流棋士。飯野健二・七段門下。現在日本女子大学2年生。
1986年広島県生まれ。3歳の頃に父から将棋のルールを習う。幼稚園、小学校、中学校、高校と日本女子大学付属に通う一方、幼稚園の頃には将棋連盟道場に通い出し、小学校6年、女流育成会入会。高校1年で女流プロ棋士2級に。卒業後、日本女子大学入学。現在将棋界で最も注目を集める若手女流棋士の一人として、対局に限らず幅広い活動を行っている。将棋と並び幼少の頃から習ってきたピアノの実力も折り紙付き。
Kanako’s Room(坂東香菜子サイト)

“好き”を仕事にする――今日、この考え方が職業選択の上で重要なポイントとされている。だが、それ以前に、“好き”な事とは何か?好きになると言う事は、どういうことなのか?案外、その事はなおざりにされていたりする。
  彼女は、物心付いたときには “好き”であることに身を置き、その中で何年もの歳月を過ごし、それが自分の本当に“好き”であることだと気付いた。そして現在、大学生ながらその“好き”を仕事にしている。“好き”を仕事にすることが、本当の意味で達成されたとき、人はこうも強く、大きく、そしてしなやかでいられるのか――彼女と相対し話していると、そのことをまざまざと思い知らされる。これから社会に出ようという学生諸君にとって、彼女から教わるものは、極めて大きい。

1 . 私は、勝負師タイプではない


「将棋は、年齢、性別を超えて出来るところが素晴らしい。より多くの人に、将棋の素晴らしさを伝えていきたいですね」。坂東香菜子――通称“バンカナ”。高校1年次に早々と女流プロ棋士となった実力。そして未だ大学2年生と言う若さ。『男の世界』と言うイメージの将棋界とは対極にある、さわやかで端整な容貌――将棋界はもちろん、それ以外のシーンでも彼女が注目を集める要因は、いくらでも挙げられる。だが、実際に会うと、そういう要素は彼女を語る極めて表面的な部分でしかないことに、否応なく気付かされる。年齢、容姿では測れない、彼女ならではの優しく、それでいてピンと一本安定した筋の入ったような空気――それをしっかりと噛み締めた上で、彼女の話を聞いていくと、なるほど、やはり彼女が紛れもなく将棋の世界に生きる、一人のプロフェッショナルであることを、改めて納得させられる。

「プロはアマチュアと違い、ただ将棋を指していればいいというわけではないんです。対局のほかに、将棋の普及と言う大切な仕事があります。もちろん棋士ですから、対局をして勝利したいという気持ちはありますが、私の場合、あまり結果にこだわると良い方向に転ばないようですから(笑)、対局と将棋の普及、その両方をバランスよくこなすようにしています」。
彼女は、「自分は勝負師タイプではない」と言い切る。勝負師という以前に、将棋そのものに惹かれ、その将棋と接して居続けたい――それが将棋と言う性質上、勝負師的な能力も求められるのだが――という想いが、彼女は強い。一般的にイメージする、勝負師の世界にいるプロ棋士の人とは、少し違う。「でもどちらかというと、今は将棋の普及が私の中で大きな位置を占めていると思います。より多くの人に、将棋の面白さ、楽しさを伝えて行きたい。将棋って、本当に面白いですから」。

彼女は本当の意味で、将棋が“好き”なのだ。決して彼女はそのことを具体的な言葉で置き換えたりはしない。ただ、彼女が将棋について語るときの口調、表情を見ていると、そう思わずにはいられなってくる。そしてこういう人と接していれば、将棋の面白さ、楽しさは、自ずと理解できてしまうのであろう。