文化は心を開く
こんなブログでも続けていれば良いことも起こります。
マスコミから取材依頼が来たり、事業の提案をいただいたりと、これはまた時期が来ればお知らせしますが、有益な情報をいただくこともあります。
先日は興味深い音楽レーベルの紹介メールをいただきました。
プテュマヨワールドミュージックという、その名の通り、世界のいろんな音楽をリリースしているレーベルであります。
ここのウェブサイトを見ると、世界のいろんな団体に寄付をするなど、広範な社会貢献活動をやっています。
http://www.putumayo-jp.com/nonprofit.html
ワールドミュージックを売ることと、このような活動は相性がいいので、これはこれで立派な戦略的CSRだと言えますが、僕が注目しているのは、このレーベルの音楽が世界100カ国以上で販売されていて、しかも通常のCDショップだけでなく、書店、生活雑貨ショップ、コーヒーショップなど様々な流通チャネルを独自に開発していることです。
これは、このレーベルが単に音楽を売ろうとしているのではなく、文化を広めようとしていることの表れであります。
僕は、このような姿勢で事業を行うこと自体が、立派な社会貢献活動になっていると考えています。何故なら、文化は人の心を開く力を持っているからです。
世界を理解したり、コミットしたり、偏見を無くしていくには心を開くことが必要です。文化にはその力があります。
たとえば、アメリカという国は、1960年代まで黒人の激しい公民権運動が展開されていた国で、それだけ人種差別が激しかった。
公共交通であるバスでも、白人シートに黒人が座ったというだけで逮捕されたり、人種差別に抗議する白人と黒人の大学生が同乗していたバスにダイナマイトが投げ込まれたりとか、そんなことが50年代に実際に起こったりしていたわけです。
1968年のメキシコ・オリンピックでも、陸上200メートル走で金メダル、銅メダルを取った黒人選手が、表彰台で頭を垂れて黒い手袋をはめた拳を高く突き上げ、黒人差別に抗議しました。当時、小学生だった僕もこの時の映像は鮮明に覚えています。
ちなみに、南アフリカで終身刑により牢獄にぶち込まれていたマンデラの釈放が決定されたのが1990年です。
さて、世界初のトーキー映画が公開されたのは1927年。タイトルは「ジャズ・シンガー」です。言うまでもなくジャズは黒人の音楽で、この時代に黒人音楽をテーマにした映画が作られた。初めて映画と音楽が完全に融合し、スクリーンから歌声が聞こえてきた。その音楽がジャズだった。そのことの意味はとても大きいと言えるでしょう。
その後、黒人音楽はR&Bやブラック・コンテンポラリーの興隆を経て、ヒップホップ全盛の時代を迎え、その影響から世界の若者は黒人のストリート・ファッションを真似たり、日サロで真っ黒に焼いたりするようになりました。(日本人だけか?)
音楽が黒人文化への理解を促し、普及させたわけです。
日本でも最近まで、朝鮮人に対する差別意識がありました。
数年前、韓国の音楽=k-popに魅せられた僕は、韓国の音楽やドラマを何とか日本で紹介したいと思い、いろんなところにプレゼンして回ったのですが、誰もまともに聞いてくれませんでした。多くの音楽業界人、メディア関係者は口を揃えて言ってました。k-popや韓国ドラマが日本で流行ることは絶対に無い。何故ならば、
朝鮮人だから。
ホンの5、6年前のことです。それからどうなったかは、皆さんご存じの通りです。
冬ソナ以降、熱病に冒されたように韓国ドラマや韓流スターにハマるオバサマたちに対して、今まで朝鮮人に対して一番差別意識を持っていたのはあんたたちではないか!?と言いたくなる一方で、韓流イベントに来てとても幸せそうな顔をしている彼女たちを見ると、これはこれで良かったのだとも思います。
韓流ブームのおかげで、韓国人と結婚したいという若い日本人女性が出現し、韓国料理屋も街中に増え、「アニョハセヨ〜」「サランヘヨ〜」くらいの韓国語ならたいていの人は知っている、くらいの感じになりました。今まで、出自を隠していた在日韓国人、在日朝鮮人の芸能人が堂々とカミングアウトするようになりました。
やはり、文化は人の心を開くのです。
その韓国に、イン・スニという女性歌手がいます。もう50歳くらいのベテラン歌手で、実力派揃いの韓国歌手の中でも群を抜いた歌唱力の持ち主です。誰か一人だけ、最高の韓国歌手を選べと言われたら、僕なら彼女を選びます。それほどの歌手なのですが、実は黒人とのハーフです。ですから、色は黒いです。
日本でもそうですが、今の40代、50代の人間で、黒人とのハーフとして生まれた人間が、もの凄い差別を受けてきたことは想像に難くありません。
事実、イン・スニもデビュー当時、色が黒いというだけの理由でテレビに出演できませんでした。
しかし、黒人音楽が世界中の若者に影響を与えるようになり、韓国の若いアーティストもイン・スニをリスペクトするようになります。チョPDという人気ラッパーが彼女をゲストに招いて曲を作り大ヒットしたりして、イン・スニの存在と実力は再評価されます。若いファンも増えました。
そして、2006年から放送され視聴率50%を超えたドラマ「朱蒙」のテーマ曲を歌います。これは、高句麗の始祖・朱蒙を主人公にした国創りの物語ですが、高句麗というのは韓国人(朝鮮人)にとっては自分たちのプライドの源泉とでもいうか、とても誇りにしています。イギリス人にとってのエリザベス朝とか、日本人にとってのバルチック艦隊を打ち破った日本海海戦みたいなものでしょうか? ちなみに、ペ・ヨンジュン主演でNHKハイビジョンで放送中のドラマ「太王四神記」は高句麗の中興の祖の物語です。ホントに韓国人は高句麗が好きですね。
それで、そんな高句麗を創った人物のドラマのテーマ曲を、黒人とのハーフで、色が黒いから歌番組に出演できなかったイン・スニが歌う。ここにもまた、僕は文化の力を感じます。黒人音楽が韓国人の心を開いたのです。
そんな黒人音楽ですが、アメリカの黒人アーティストはアフリカの音楽をリスペクトしています。
インド・テクノは、アメリカの黒人映画監督スパイク・リーをインスパイアして、彼の映画のテーマ曲に影響を与えています。
日本のクラブ系アーティストは、ブラジルの音楽をリスペクトしていて、タニア・マリアなどのブラジル歌手をフィーチャリングしたりします。
僕も個人的には、ラテン音楽が大好きで、特にアルゼンチンのサックス奏者ガトー・バルビエリが好きで、それで昔からず〜とブエノスアイレスに行きたいと思ってます。
世界中には、欧米や日本とは違う、素晴らしい音楽があります。素晴らしいアーティストがたくさんいます。文化は魂の食べ物ですから、そんなアーティストの出会えることはとてもハッピーなことです。
社会貢献は理屈だけじゃダメで、どこかの国に関わりたいなら、その国の文化を愛することが大事だと思います。だから、アフリカやアジアや南アメリカの貧困国の人たちのことを、「恵まれない人たち」という言い方をする人がいますが、僕はそういう言い方がダイッ嫌いです。
彼らは豊かな文化には恵まれてるんですよ。ただ、お金とか学校とかの社会資本が足りなくて困っているだけです。
世界中の、素晴らしいアーティスト、文化に出会えれば、そのことがよく分かります。
プテュマヨワールドミュージックも、世界の音楽と出会えるチャンスを与えてくれているだけで社会貢献だというのは、そんな理由です。
視聴も出来ますので、よろしければウェブサイトに行ってみて、良い音楽との出会いを探してみて下さい。(竹井)
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/224259/40051331
この記事へのトラックバック一覧です: 文化は心を開く:
コメント