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「ギョーザでけんか、やめて」 中国・台湾小学生が手紙

2008年03月17日15時22分

 「中国と日本がけんかをしないで、未来のため、将来のため早く事件を解決してください」――中国製冷凍ギョーザの薬物中毒事件で、東京都新宿区立大久保小学校の6年生3人が15日、そんな手紙を日中両政府に出した。中国と台湾から来た子どもたちで、先月から日本語国際学級の授業で新聞記事を読み合ってきた。いま、薬物がどこで混入したかをめぐり両国の見解は対立している。彼らは書いた。「俺(おれ)たち日本にいる中国人が一番苦しいです」

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ギョーザ事件を報じる週刊誌記事の見出しを読む善元幸夫先生と子どもたち=東京都新宿区立大久保小学校で

 授業を担当したのは善元幸夫先生(57)。両国を知る子どもたちにこそ、事件を考えてほしいと思った。西宮東駿(にしのみや・とうしゅん)さん(12)、尤文頡(ゆう・ぶんきつ)さん(11)、安城男(あん・じょうなん)さん(13)が取り組んだ。

 授業は事件の発表2日後の2月1日から始まった。記事を模造紙に張って「ギョーザ事件、だれが?なぜ?」の絵巻物をつくり、授業のたびに読み合い感想を書く。

 初め、3人は日本人犯人説だった。「中国は輸出するのに検査が厳しいから」「日本は自分の悪いことを報道しない」

 密閉された袋の内側から農薬成分が見つかったと報道されると、揺れ始める。「自分の国の悪口は言いたくないけど、中国人かも」と安さん。西宮さんは「中国人がやったのは1〜39%、日本人は40〜99%」と考えた。

 尤さんは書いた。「(犯人は)2つの可能性がある。1つは中国人。中国人は日本人が嫌いだから。2つは日本人で、中国人が嫌いだから」

 それを受けて、3人はそれぞれ自分の体験を語った。日本で生まれたことから中国で「日本鬼子」と言われた子がいれば、日本に来て「中国人」といじめられた子がいる。母から戦争体験を聞かされ、日本が嫌になった子もいた。

 「俺たちって、どっちの味方なの?」。声をあげる西宮さんに、安さんは言った。「僕は、今は日本も中国も好きだ。日本にもいい人がいっぱいいるから」

 事件はやがて実験結果をめぐり、日中で見解が対立した。「ギョーザ幕引き?」「捜査暗礁」。記事を読んで「もうダメじゃん」という子どもたちに、善元先生は前任校での話をした。授業で有機農法を学んだ子どもたちが地元の荒川区長に「給食で有機野菜が食べたいので大型冷蔵庫を買ってほしい」と手紙を出したというのだ。

 3人は話し合った。「日本も中国も好きな僕らだからこそ、手紙を書けるかもしれない」。そして書いたのが、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席、福田首相や関係省庁にあてた手紙だ。

 国を超え、事件に影響を受けた人々に思いを寄せてつづった。「(ギョーザを食べて入院した)5歳のこどもはかわいそうなかんじがしました」(安さん)、「中華街は人気を失い、多くのひとはこまったような気がするのです」(尤さん)。

 そして西宮さんの言葉で結んだ。

 「僕たちは、この事件を早く解決したいと思います。解決と言うのは、ただ犯人を捕まえるだけではダメです。その犯人がなぜギョーザに毒を入れたのかを、みんなで考えなくてはいけません。日本と中国の国をよくしたい」

 大久保小学校の卒業式は25日。子どもたちは返事を待っている。

 ■3人が一緒に書いた手紙■(要約)

 この事件は、もうすぐオリンピックがあるから幕引きをすると思います。中国と日本の国にとってはいいかもしれません。でも、俺(おれ)たち日本にいる中国人が一番苦しいです。最後まで検査の方がいいと思います。最後まで検査したら僕たちも安心して中国の冷凍食品を食べる事ができます。

 僕たちは、学校でいろいろな袋を使って食塩の浸透圧の実験をしてみました。中国の餃子(ギョーザ)の袋にメタミドホスが浸透するかはわかりませんでした。だから日本人と中国人が一緒に実験をしてみてください。お願いします。

 今は、中国と日本がけんかをしないで、情報を交換しあってください。未来のため、将来のため早くこの事件を解決してください。僕たちはなかよくしたらいいです。

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