聖路加国際病院院長で京都大名誉教授の福井次矢さん(56)が、医師を目指す中高生向けの「医者のしごと」(丸善、1365円)を出版した。医師の考え方や生き方、医療現場の様子などの問題にも幅広く触れている。
高知県出身。カツオの一本釣りの網元の家に生まれたが、村唯一の診療所にいた医師の頼りがいある姿にあこがれた。佐賀医大(現・佐賀大医学部)や京都大の教授を歴任。朝は5時から働き始め、夜中の呼び出しも当たり前というハードな暮らしが続いた。だが、「患者さんが目の前に来ると緊張感と知的興奮が起こる。医師という仕事を嫌だと思ったことは一度もない」と言う。
「体の一部だけを診るのではなく、全体を診ることが必要」との信念で総合的な診療をし、研究する講座を両大学に新設するなど、穏やかな語り口からは想像できない熱意の持ち主だ。「医師志望者はもちろん、一般の方にも読んでもらって、医師の仕事を理解してもらえたら」と話す。【大迫麻記子】
毎日新聞 2008年3月17日 東京夕刊