ホテルにもやはり地域格差あり
まずは同じく上場企業を見てみよう。ワシントンホテルやフォーシーズンズホテル椿山荘東京などを擁する藤田観光は、平均年収617万円。社内取締役の平均年収は2,737万円で、社外取締役平均年収は500万円である。
ちなみに、フォーシーズンズホテル椿山荘東京の婚礼1人当たり単価は3万56円、宿泊2万1,667円だ。ホテルを所有せず運営に特化し、上場を目指すJALホテルズの場合は、従業員平均年収は751万円、取締役平均年収1,500万円である。
この2社はどちらも、藤田観光は非鉄金属のDOWAホールディングス、JALホテルズは日本航空と、親会社の傘下に属している。DOWAホールディングスの従業員平均年収は743万円であり、日本航空は828万円。“親が高く、子は低い”という構図になっているようだ。
帝国ホテルとともにわが国を代表するホテルとされるのが、ホテルオークラやニューオータニである。そのニューオータニの従業員平均年収は466万円、取締役平均年収は1,035万円、ホテルオークラは従業員570万円、取締役1,542万円である。その他のホテルはどうだろう。
横浜のホテル、ニューグランドの従業員平均年収が520万円。ほかには、パレスホテルと琵琶湖ホテルの400万円台が上位グループに属する。熊本キャッスルホテル、リーガロイヤルホテルを展開するロイヤルホテル、それに鴨川グランドホテルが390万円台。以下、神戸ポートピアホテル、丸ノ内ホテル、ホテルニューオータニ高岡、名古屋観光ホテル、京都ホテルなどと続く。
ホテル再生を手がけ、これまで宮城県の秋保グランドホテルやホテル瑞鳳などを再建している、北海道のカラカミ観光。その従業員の平均年収は275万円だ!
一般的なホテルの取締役の収入はどうか
このあたりの取締役は、平均年収も同程度だから驚きである。ホテルの場合は、取締役も現場を兼ねていることが多く、取締役としての収入以外に従業員としての給与が加算されるが、それでもメーカーなどより低いといっていいだろう。
なお、パレスホテルの大株主はサントリー。琵琶湖ホテルは京阪電気鉄道、熊本キャッスルホテルは三井観光開発の子会社である。ダイエーの創業者一族が関係するのが神戸ポートピアホテル。丸ノ内ホテルは三菱地所の関連会社で、ホテルニューオータニ高岡は、ニューオータニとは運営契約を締結している関係にある。名古屋観光ホテルは「コルゲンコーワ」で知られる興和の子会社だ。
こうしてみると、一部の例外を除いてはホテル従業員の年収は決して高いとはいえないだろう。最近経営破綻した英会話のNOVAですら、従業員の平均年収は360万円だった。インターネット上にも「ホテル従業員の給与は低い」と、その低収入を嘆く情報があふれている…。運悪く、サービスの悪いホテルマンに出会ってしまったら、この給与の低さを思い出して、少しだけ腹の虫をおさめてはいかがだろう。